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【俳句連作30句】かく・きく

梅一輪落ちて淀みを私す
ふらここのよぢれて戻らない鎖
作業着に血液型を書く四月
春はあけぼのボールペンシャープペン
満天星の花等しくは愛されぬ
絵本から羽ばたく音のする午睡
白繭のわづかな重さおそろしく
あぢさゐや曲線多き試し書き
野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ
北海道と書いて冷蔵庫に入れて
花石榴注射の前の脱脂綿
手の甲のつめたしさうめんと書けば
背泳ぎのはじめ人体畳まれて
日盛りやぽつりぽつりと豚の乳
遠雷や波に鱗の逆らはず
初秋の砂すべり来る滑り台
あふむけにこはれロボット秋の昼
順番にゐなくなる家蚯蚓鳴く
少しだけ小鳥の喋る真昼かな
夢殿をひとまはりして蛇穴に
口中でらくくわせいと音鳴れり
無花果や背中で留めるワンピース
秋深し泡吐きながら溶けるバブ
ゴールした人に林檎を渡す役
落葉満つ縦笛の子の双眸に
海鼠腸といふ動く水啜りをり
硬きグミやはらかきグミ冬の山
作業着を振りて寒靄落としけり
くちづけて山河の匂ふ雪女郎
かうかうと鶴の渇いてをりにけり

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