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世襲とか姻戚関係とか、横溝正史の小説のような血のつながった関係


   (なんだかあとから目次を作ったけど、適当だ。悪しからず)


最近、爺むさいことを考えている。「世襲」についてだ。だいたい、世襲はロクなものじゃないとか、世襲は世の中に害を及ぼすとか、私は否定的なイメージで世襲をとらえている。だから、この文章は、そういうトーンで書かれていく。

世襲とは、特定の地位や職業、財産などを、子や孫が代々受け継ぐことだ。親が教師でその背中を見て育った子供が教師になった、なんていうパターンは、世襲ではない。子供が教師になるためには、資格試験があり、門戸は誰にでも平等に開いてあるからだ。

世襲に相当するのは、そこに生まれたから、努力もせずに、得をするというパターンだ。でも財産なんかは、相続だから、得することも、損をすることもある。

やっぱり、無条件に特権的な地位や職業を受け継ぐという、要するに不公平なシステムとして機能している場合が世襲だと、ここでは定義する。

世襲した人はおのずから横柄だ


世襲で真っ先に思い浮かぶのは、駄目息子とか、後を継いだ駄目社長だ。テレビドラマなんかに出てくる彼らは、とんでもなく横柄で横暴だ。テレビだから意図的に極端にしているのだろうけど、最近はリアルな現場でそういう人を目撃する回数が増えてきたように感じる。

例えば、先日、記者会見をしていた細田博之衆議院元議長だ。旧統一教会との関係や、セクハラ疑惑について、ほぼ釈明をしないで1年以上を通していた。記者の追及に対する態度は、横柄の一言に尽きる。いい年の老人があんな態度で大丈夫なのか、人目を気にしないのかなと、こちらが心配になるほどだった。


そして、先日やっと会見を開いたかと思えば、旧統一教会に関しては、全部、死んでしまった安倍晋三のせいにして、セクハラに関しては、単に否定のコトバを述べただけで終わらせた。

今回は、病気のせいか、ヘロヘロで力なく見せていたが、基本的には、テレビドラマに出てくる横柄なキャラクターのような振舞、態度だった。この人は、父親の細田吉蔵も、祖父の升田憲元も衆議院議員だ。細田吉蔵の秘書をやった後に、地盤を継いで議員になっているまさしく世襲議員だ。


まだ世襲議員ではないが、岸田総理の息子のような例もある。首相秘書官の立場を利用して、公用車で観光したり、国会議事堂で宴会したり記念撮影をしたりして物議をかもしているホープだ。身内がリークしたとしか思えない脇の甘さなのだが、いずれ父親の後を継ぐのだろう。

総理の秘書官の給料は、税金から出ているから、税金の使い道としては、これはこれで、大した額ではないが、実害になっていると思う。一応、秘書官は更迭されたが、秘書はやっている。


政治家の場合、世襲は、現役の政治家が亡くなるか引退するかして、選挙区を息子や娘にそのまま引き継がせて、当選させることで成り立つ。まず、選挙で当選するための三要素と言われる「地盤、看板、カバン」が無条件に継承される。「地盤」は、後援会や支援団体で、「看板」が知名度で、「カバン」が資金だ。

小選挙区制になってから、特にこの「地盤、看板、カバン」がモノを言うようになっている。

これらを受け継いだ候補は、なんにもない候補よりも、ずっと有利に選挙を戦えることになり、その結果、当選しやすくなっている。世襲候補の当選率は八割で、世襲でない候補は三割だというから、相当に不公平だ。


最近の世襲議員は、大抵、親よりも能力が劣る場合が多いので、世襲の駄目さ加減が目立つ傾向かある。これが親よりも優秀だったら、それこそ、さすがサラブレッドなどと言われ、褒め称えられるような気がする。それでも歴然と不公平はあるから、問題だと思う。

世襲がいくら駄目だと言われても、違法ではないし、既得権に過度に執着する傾向のある我々日本人は、世間的にも世襲を容認している風潮がある。公平さや平等ということよりも、世襲もしょうがない、ありだね、という感じで大目に見ているのだ。そんなこともあって、世襲議員はどんどん増えてきて、それに比例して、無能な議員も増えてきた気がする。

なんで親より子は無能なんだろうか、という問題はあとで考える、たぶん。

世襲は、英才教育が出来る効率よいシステムなのか?



一方で、歌舞伎などの世界では、昔から当たり前に世襲がなされてきて、今でも世襲が普通のこととしてある。こっちの世襲には、いい面と悪い面がある。

いい面は、英才教育だろう。歌舞伎の名門の家に生まれた子供は、物心つく前から、芸事をみっちりと仕込まれる。芸に対するプロ意識も育てられるだろうし、なんといっても一流の指導が受けられる。その意味では、効率よく成果が見込めるシステムのように見える。特権的だけど、英才教育にはそれなりの意義があるのだろう。

政治家も英才教育をすればいいのだろうけど、なぜか、甘やかすバカ親しかいないようなのだ。なんでだろう?

歌舞伎の世襲の悪い面は、主要な役柄を、名門が独占していることだろう。名門の家に生まれないと、いい役にありつけないようなのだ。持つ者と持たざる者の差が大きくて、これではまるで公平でない。一見実力主義のようだが、基本的にフェアではない業界なのだ。


他に世襲といえば、会社の世襲がある。創業者一族が代々社長を務める会社などは、大企業から商店街にある店、農家まで、フツーに、それこそたくさんある。

自動車のトヨタなんて、この間まで社長で今は会長になった人が、最近やたらとテレビCMに顔を出しているけれど、名前が豊田章男だったので、えらく古めかしく感じる。

創業者一族が、未だに社長を代々独占している会社は、ごまんとある。


街中の個人商店や農家のレベルでも、家業を継ぐことは当たり前にあるし、その方が多いのだと思う。こうなると世襲が、良いことなのか、悪いことなのか、よくわからなくなる。

でも私企業の場合、世襲した社長が無能だと、売り上げが落ちたりするので、どこかで軌道修正がかかるような気もする。個人商店や農家でも、跡取りが無能なら、及ぼす迷惑は家族や親戚の枠内にとどまって、社会へ影響は及ばないような気がする。

それを考えると、駄目な世襲は、不特定多数の他人に害を及ぼす世襲ということになる。その駄目な世襲に該当するのは、やっぱり政治家の世襲だ。

政治家が無能だと、社会の役に立たないし、有害だと、社会に直接害が及ぶ。政治家の世襲を容認すれば、って、現状は野放し状態だが、選挙の公平性も保たれなくなる。だから、世襲で一番厄介でタチが悪いのが、政治家の世襲なのだと思う。

無能どころか有害な世襲議員


どういうわけか、最近は、無能どころか、有害な政治家が目立つ。その典型的な例が、先日の埼玉県議会で起きた虐待禁止条例改正案をめぐる騒動だろう。これは埼玉の自民党県議団が、虐待防止条例改正案というものを作って、可決寸前に提出を取りやめたという騒動だ。


あまりのとんでも法案内容だったので、テレビやSNSなどでバズって、反対意見が殺到し、滅多にないことだが民意が反映して、提出が阻止されたのだ。埼玉県議では自民党が過半数をとっているので、提出されていれば、自動的に可決された可能性が高い。

提出を撤回した県議は、その時の会見で、改正案はそのものは間違っていなかった、説明が不十分だったと言ったという、まるで的を射ていない、とんでも発言で釈明をしている。


このとんでも改正案が、提出寸前になるまで歯止めがきかなかったことにも吃驚する。同時に埼玉県出身の自民党国会議員の面々なども、この改正案に関して意見を求められても、県議会のことだから発言は差し控えると、一人残らず内容に踏み込まなかったことも気になった。

自民党所属の国会議員たちは、この改正案の中身に対して、自分の頭で考えて判断を下して、それを自分の意見として表明したりなんかしないのだ。立場がどうのというより、自分の所属する団体のおおむねな方向に、おしなべて従う、という態度を示しただけのように見える。

これはつまり、提出したなら提出でOKだし、取りやめたのならやめたでOK、党の方針に従いましょうという、思考停止の態度だ。

結局、自民党に限らず、今の日本で、集団の中でやっていくということは、こういうことなのかもしれない、とも思った。

議員の世襲は、無能が純粋培養される?


もう少し、埼玉県議会のことを書く。なんであんなアホなことを思いついて、条例化しようとしたのだろうか。

あの改正案から透けて見えるのは、埼玉の子育ての現場とは無関係に、欧米などの最先端の法律を教えてやろう、その最先端のもので指導してやろう、という、上から他人を支配し管理しようという意識ではないのか。

釈明をしていた県議は、以前、夫婦別姓を国会で審議せよという意見書を出したのと同じ人物だ。その時は、自民党にしては珍しいなと感じたが、これだって、今にして思えば、欧米の基準を単純に鵜呑みにして、日本の現場とは無関係に、教えてやろうとしただけのように見えてくる。


人の上に立って、人を支配したがる埼玉県議の意識は、ドラマなどに出てくる横柄な二代目キャラとイメージが重なるのではないか。埼玉県議会議員の質の低下は、相当なものだと思う。この低下の大きな原因の一つは、やはり世襲なのではないか。

調べてみたら、薄給で成り手がない町村議会と比べて、県議会は報酬が高額だった。埼玉県議の場合は、年収が1600万円越えになっている。そうなると、県議会議員になることが、政治的な思想信条と無関係に、家業になりやすい。

年収1600万円越えの商売は、出来れば子供に継がせたい、出来れば一族で独占したい、って思う人達が出てくるのは、簡単に想像がつく。県議会議員の家業化だ。

実際に埼玉県の議員の世襲率がどれくらいか調べてみたが、すぐに出てこなかった。しかし、県議会議員の世襲率は、全国平均で過半数を越えているという。

国会議員の世襲率が3割だというから、地方議会の方が、より深刻な事態になっている。埼玉県議も5割を越えていて不思議はない。それなら埼玉県議会議員の質の劣化は、世襲が原因だとこじつけることも出来るだろう。


そういう世襲議員は、代々勝ち続けているから、自民党などの保守党に集まる。だから自民党の埼玉県議もあんな有様になっているのだろう。

社会運動をして世の中を良くしようと思う人は、大抵、野党になる。困ったことだけど、そんな傾向だから、今時の優秀な人は、議員になんか、なりたがらないのだと思うし、人の上に立って支配したいと思う駄目なタイプが議員を世襲して、自民党に集まってくるのだろう。

そういう人達は、国民や市民のためになる法案を考えたりするのは苦手だけど、人の上に立って支配したり、管理したりするのは、大好きだ。というか、そういうことをやるのが政治だと思っているから、そういうことしかやらない。その結果、交渉や説得といった話し合いよりも、恫喝ばかりが横行する。既得権の中で親を見て育っていると、そういう風にしか育たないのだと思う。

その結果、三流、四流の人材しか、いなくなってしまったのが、現在の政治家ではないかと思うのだ。

しかし、世襲を失くするのは難しい。やることは簡単だ。選挙制度を改正して、親の選挙区を受け継ぐことを禁止すればいいだけだ。とはいえ世襲議員ばかりの国会で、世襲を否定する法案を通すには、どうしたらいいのだろうか……。


世襲も大問題だけど、戦国大名並みに繰り返される議員同士の姻戚関係もすごいことになっている日本政治業界の実体


世襲も問題だけど、政治家同士の姻戚関係も相当に気持ち悪いことになっている。知っている人は知っているし、色んなところで既に書かれていることだと思うが、今回、調べてみて、愕然としたのだった。

政治家が、政治家の娘と結婚したりすることで、血のつながりはないけれど親戚関係になっている場合が、今の政治家にはとても多い。

麻生太郎元総理元自民党副総裁



たとえば麻生太郎は、今年八三歳になるけれど、未だに現役で、自民党の副総裁をやっているが、妻の父親は鈴木善幸元総理だ。鈴木善幸から世襲した鈴木俊一は、だから義理の弟になる。鈴木俊一は今の財務大臣だ。

麻生太郎も、以前は財務大臣をやっていたから、歴代内閣の経済関連は、だから、とても狭い一部の人が担っていることになる。


鈴木俊一財務大臣
髭の殿下こと故笠宮寛仁


細川護熙元総理



また、麻生太郎の末の妹の信子は、髭の殿下に嫁いで、今は寛仁親王妃信子になっているし、もう一人の妹は、細川護熙の兄弟に嫁いでいる。麻生太郎は、皇室とも、細川家ともつながりがあるのだ。

なんだか戦国大名みたいだ。政略結婚とか、そんな印象を受ける。

麻生太郎の先祖をさかのぼると、祖父は吉田茂だし、明治期の大久保利通もいる。こうなると、旧長州藩士(山口県)、旧薩摩藩士(鹿児島県)とかの世界だ。


故吉田茂元総理


故大久保利通

大久保利通の子孫には、日本医師会会長の武見太郎とかがいるから、息子の武見敬三も繋がってくる。今の厚生労働大臣だ。


武見敬三厚生労働大臣


この麻生太郎の繋がりに、安倍晋三の祖父である岸信介や佐藤栄作の婚姻関係を加えると、ますますいろんなところで繋がりが出てくる。岸家と佐藤家は、山口県だから、こっちは旧長州藩士だ。


故岸信介元総理


故佐藤栄作元総理

そもそも岸信介と佐藤栄作は、二人とも従姉妹と結婚している。妙に血が濃い。兄弟なのに苗字が違うのは、本家や分家があって、跡取りの男がいないと、次男や三男を養子に出す間柄だからだ。これは兄の安倍晋三と弟の岸信夫もそうだ。安倍家から、跡取りの男子がいなかった岸家へ、信夫が養子に出されたので、実の兄弟だけど名字が違っているのだ。

安倍晋三は総理大臣をやったし、岸信夫は防衛大臣をやったりしている。安部は死んじゃったが、岸信夫は病気で引退し、後釜は、長男の信千世に世襲させた。それにしても信千世ってすごい名前だ。


故安倍晋三元総理



岸信夫元防衛大臣


岸信千世衆議院議員


でもって、麻生太郎の叔母が、岸信介の従弟に嫁いでいる。血のつながりはないが、麻生家と岸家(安倍家)は遠いけど、親戚ではある。どうでもいいけど、この岸信千世と岸田首相の息子の岸田翔太郎が同じテイストの顔に見える……。


鳩山由紀夫元総理


麻生家は、ブリジストン創業家の石橋家を介して、鳩山由紀夫の鳩山家ともつながっているらしい。鳩山由紀夫は、世襲4代目だ。そうすると、麻生家(吉田)と安倍家(岸)と鳩山家という、3大名門?政治一族が親戚になるから、日本の内閣は、代々、本当に狭い人間関係の中で成立していることになる。


岸田文雄現総理大臣

今の首相である岸田文雄も、父方だと3代目の世襲議員だ。母方は経済界の経営者一族で、お菓子のコイケヤの創業者がいたりする。叔母は、宮澤喜一の息子に嫁いでいたりするので、血のつながりはないけれど、岸田家と宮沢家は親戚になる。


故宮澤喜一元総理


でもって、宮沢家は、宮澤喜一の従姉妹が鈴木善幸の息子の鈴木俊一(麻生太郎の義弟)に嫁いでいるから、ここも遠い親戚だ。鈴木家を介して、宮沢家と麻生家が繋がる。当然、岸田家も繋がる。


故鈴木善幸元総理


自民党の主流は、幕末から延々と結婚や養子縁組を繰り返して、みんな親戚同士で出来あがっている。女性議員が一人も出てこない野郎ばっかりの世界だ。生物多様性の見地からも、血が濃くなって、劣化のリスクが大きくなっているとこじつけたくなるような、姻戚関係だ。

ここに貼り付けた顔面写真を見ていると、水木しげるのマンガに出てくる妖怪に見えてくる。ますます気持ちが悪くなってきた。

主義主張とか政策とかではなく、結局、「家」とか「部族」とか、そういう前近代的な印象を受ける。ほとんど横溝正史の世界だ。なんて書いたら横溝正史に申し訳ないか。ともかく、これでは民主主義がまともに機能するはずはない、と思う。

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