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図書館に行ってきた 24

絞首商會 夕木春央
重厚感があった。ホームズのような中禅寺秋彦のような明智小五郎のような、それよりかなり繊細で気怠げな蓮野。洋装と和装が入り混じる時代。思想、主義、理念などについて議論しまくる時代。
台詞や仕草、表情の微妙なニュアンスを絶妙な例えで説明する文章力に感動した。最初から最後まで過不足なく完璧な仕上がりの推理小説だった。

風を断つ 池永陽
「占い屋重四郎」と主人公も話の内容もよく似てる。相変わらず登場人物みんな死んでしまう時代小説だった。武士の矜持か何か知らないけど戦い過ぎ。死に急ぎ過ぎ。それが当たり前の時代なんだろうけど。三四郎のお内儀のおさとが癒し。
話に出てくる風砲は本当にあるものらしい。題名「風を断つ」の意味がわかった。

ゴースト・ポリス・ストーリー 横関大
幽霊になってしまい、視える人と協力して犯人を探す話は読んだことがある。この作品は主人公の幽霊が最後まで生きてる人と意思疎通ができない話だった。幽霊の兄と生きてる妹が順番に描かれていて、徐々に犯人に近づいていく。その必要あるかな?という設定や占い師の母のあっさり感に少し戸惑うけど、全体的にはとても面白かった。
ミステリ歴が長いと犯人は早くにわかってしまうかも。

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 ジェーン・スー
こんなに自分の性格を客観視して研究するなんて。エッセイではなくて論文だと思う。
私とは違う世界、目線で生きている。自分を取り巻く煩わしいものに抗い必死に生きてきた、その心境をここまで言葉にできるなんて。
アンチスピリチュアルと言ってたけど、ちゃんと自分を見つめて執着を解放しているのはめちゃくちゃスピってると思った。

カリブ海の秘密 アガサ・クリスティ
意識せず補ってしまう記憶、思い込みで判断してしまう他人の性格、見たこと聞いたことのあやふやさ、日常よくあることで事件は複雑になっていく。
今回は最初から最後までマープルの視点で描かれるので彼女ならではの謎解きがよくわかる。
推理小説には様々な鮮やかなトリックがあるけど、アガサ・クリスティのような日常的な人間らしいものは少ないと思う。

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