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数学の世界を覗く

「探偵が早すぎる」が好きだ。
あの3人の掛け合いのアドリブで見える素顔。
勧善懲悪、味方は絶対大丈夫なところ。
見終わった後必ずなんかニヤニヤしてしまう。
前回に引き続き、毎週待ちきれないくらい楽しみだ。

こんな面白いなら原作もきっと面白いはず、と原作者井上真偽さんの本を図書館で探した。案の定「探偵が早すぎる」は貸し出し中で無かった。なので、他の作品「その可能性はすでに考えた」と「聖女の毒杯」「恋と禁忌の述語論理」を借りた。

結論から言うと「その可能性はすでに考えた」はドラマのようなお気楽な雰囲気では一切なく、ひたすらトリックの検証をし続ける内容だった。強いて言えばキャラクターの濃さは滝藤賢一さんと同じくらい。

この中で「恋と禁忌の述語論理」は面白いのはもちろん、凄かった。
子供の頃、読書感想文でよく半分以上あらすじで埋めていた私だが、この本に関してはそんなのはそっちのけで語りたくなった。この本はまん丸の球体のようだ。付け入る隙がない。本当によくできている。

現代文にはいろんな解答があるけれど、数学には決まった解答しかない。人間の感情がもつれ合った事件を動機で探り当てるのが現代文なら、この本は登場人物の行動における矛盾を取り除いていく、数学的な解決法だ。
そして本当に数学の解説をしつつ事件を解決していく。

この本は図書館のヤングアダルトコーナーと呼ばれる場所に置いてあった。
まさに算数から数学へ移行する年代の子に、そして「私は文系だから理系は苦手」と思い込んでいる子に是非読んでほしい。
作者も同じ考えなのかわからないけれど、キャラクター設定やアニメチックな描写が、今の溢れかえるアニメの中にあっても引けを取らない世界観で、手に取りやすく読みやすい。
ドラマで福山雅治さん演じる物理学者が数式をやたらめったら書き殴る様子に少し親近感を覚えるほどに数学が面白く感じる。
全ての出来事は数式で表せるとか何とか聞いたことがあるけれど、その入り口に「もしかして?」というワクワク感を持って立てる。
今風なキャラクターと伏線回収、二重トリックがさらりと組み込まれて、それに負けず劣らずの割合で数学の面白さも味わえる。

文系、理系と分けがちだけど、文章題を解いたり論文を書いたりするならばもはや境目はないのかも。
ただ、この本を読んで数学が面白そうだと思った人が、そこに本格的に足を踏み入れるかどうか。興味が続いていくかどうか。
そのきっかけとしてこの本はとてもお薦めだと思う。


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