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小説|砂丘

 園内マップを開いたら「展望の砂丘」という場所が目に止まった。今いる所からだとだいぶ歩く。
 いつでも来られる場所なら、絶対に行かない。せっかく足を伸ばしてここまで来たのだからと思い、行ってみることにした。
 周りを見ると家族連れや、カップル、老夫婦、友達同士で来ている人たちばかりである。それぞれが、これまで歩んできた人生の到達点を表している。僕は独りだ。
 方向音痴を自覚しているので、なんども立ち止まっては現在位置を確認し、それでもたまに道を外れたりもしながら、広い園内を歩きに歩いてたどり着いた。
 後日、そこで撮った写真を友人に見せるとこんな感想だった。
 「たいした景色じゃないね」
 本当に、その通りだった。オフシーズンのがらんとした浜辺と、手前には秋に茶色く染まった雑草が茂っているだけだった。
 そうやって僕は、僕自身の物語りをしたためる。書き続けた先に何があるのか、何もない砂丘かもしれない。それでも、僕は砂丘が好きなんだ。

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