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太極拳はなぜゆっくり動くのか

もうずいぶん前ですが、雑誌にあるプロゴルファーが紹介されていて
「一回のスウィングに5分間かける」
という練習法について語っていました。

さっそく木刀の素振りでマネをしてみましたが、意外なほどキツイ練習なんですよ。
その練習をいつもやっているのが、太極拳。

・遅いことのメリット

太極拳と言えば、ゆっくり、柔らかく動いて練習する。
「あんなにゆっくりで戦えるのか?」
と考えるかもしれませんが、あれは練習のときだけの方便。

もちろん、筋力を鍛えたり、健康に良い(スピードで筋肉や腱を傷めることがない)というのもあると思いますが、もともとは動きの質を上げるためのものだったと私は考えています。

人体を動かすのは筋肉、筋肉を動かすのは脳です。
運動による脳の仕事量は条件に左右されます。
  1.同時に動かす箇所が多いほど増える
  2.動きの精度(正確さ)が高いほど増える
  3.スピードが速いほど増える(ただし動きの質が同じ場合)

太極拳は、ゆっくり動くことで3の条件をナシにします。それによって、1と2の操作に神経を集中できるようになるのです。無駄のない動きを身につけ、実戦では素早く動いて戦います。

・スピードが練習の邪魔になるとき

どうせ実戦では速く動くなら、練習も早くすれば? と思われる方。
速さは練習のじゃまになることもあるのです。

最初に紹介したゴルフの話。
ゴルフクラブでも木刀でもラケットでもいいので、試しに一分間かけて振ってみてください。普通ならまっすぐに振れるものが、グラグラしたり、カクカクしたりすると思います。

実は我々の普段の動きはかなり雑なもので、無駄も多いし、身体のあちこちの動きも一致していません。
しかし速く振っていると、スピードの慣性で動きが均されて、キレイに動けているように騙されてしまいます。

ゆっくりの練習は、単に脳の負担を減らすだけではなく、慣性の影響を排除して、問題点を見えやすくしてくれるのです。
ゆっくり、しかし止まらずに動き続けることができるようになると、筋肉のコントロールは相当上達しています。

5分は難しいとしても、問題点が見えるくらいの丁度いい速さを見つけるのがコツです。


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