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正中線とは何か。どう使うか② ~負荷を時間的に分散させる

前回、武術やダンスなどで言われる正中線が、質量・加速・距離の要素を入れ替えながらバランスを保つ働きであると書きました。
今回はその説明の1つ目です。

・正中線というバランス

正中線は、人体の重心を通る垂直の線(重力の方向)なので、重心の周りの力が重力に対して釣り合っていることになります。状態としては、左右が釣り合った天秤秤やシーソーをイメージしてもらうといいでしょう。

ただし天秤ばかりやシーソーは、静止状態でのバランス。
人体では、手足を動かす時の加速や減速もバランスに影響しますね。

運動中に正中線を保つということは、拳打、剣の振り、歩法などの動きの反作用を含めて、バランスを取り続けることです。

・加速は重さとして働く

エレベーターで上に向かう時、動き出しに身体が重く感じます。これは、エレベーターが上向きに加速する力が身体にかかるからです。
加速・減速がもっと急であれば、重さが何倍にもなったのと同じ効果をだすこともできるのです。

月に行ったアポロ11号では、急加速によって最大で体重の9倍の重さがかかったそうです。
計算してみたら、静止状態から1秒で時速280キロになるほどの加速でした。止まっている新幹線が、一秒でトップスピード!

・加速によって質量に対抗する

下は、シーソーの図です。
左側に人間よりも重いものが乗っていれば、普通なら釣り合うことはありません。しかし一瞬だけなら、釣り合わせられます。
その方法は、右側に載っている人が飛び上がること。

ジャンプの反作用で、一瞬だけ釣り合わせることができる

ジャンプによる加速の反作用で、体重以上の力でシーソーの板を押すことができます。その瞬間だけは体重が増えたのと同じで(おそらくコンマ数秒)、釣り合わせることができるのです。

これを人体でいうと、
身体が左に倒れそうになった時、右腕を挙げると「腕の質量×加速」分の反作用で、体幹の重量に対抗する力が生まれ、バランスがとれます。

・身体の一部を加減速してバランスを取る

身体のバランスが崩れそうな時、手でも足でも、なんなら肩でも頭でも、動かすことでバランスをとることができます。極端に大きな加速さえ可能なら、重量のある体幹部に対して、腕一本でもバランスをとることができるのです(理論的には)。

逆に拳や剣など、比較的軽いものを急速に動かす場合でも、体幹部など大きな重量で釣り合わせれば、小さな動きで抑え込むことができます。

ただし、加速したものは減速しなくてはならないので、一瞬後には借りを返さなくてはなりません。
たとえば腕を上げたなら止めなくてはならないので、マイナスの加速が必要になります。ただし、その時間は調整できます。
つまり、加減速を使って、負荷を時間的に分散できるのです。

正中線の話はまだ途中。次回は、距離と質量が交換できるという話です。


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