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水滸噺 6月(上)[そうだ 妓楼、行こう]

あらすじ
豹子頭、梁山泊の中心で愛を叫び、
九紋竜、豹子頭の門前で藍と相対す
神医、妓楼にて寵愛され
喪門神、子午山にて楽曲に臨む

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、PCなどの電子機器や英語が飛び交い、 
 あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・日々日々迫るネタ切れと死闘を繰り広げながらも、作者のtwitterにて
 1日3回を目標に投稿しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

3月から始めた小噺集も、早3ヶ月目に突入しました。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊 

梁山泊(りょうざんぱく)…108人と1人が集う天然の要塞。近隣住民の方と定期的に交流を図っており、各好漢の特技を生かした出店はいつも大好評。

騎馬隊

騎馬隊…兵の罰ゲームで馬糞処理係に任命されることがあるが、林冲のハイスコアはきっと誰も抜くことはできないであろう。

人物
・林冲(りんちゅう)…毎度おなじみ、騎馬隊隊長。もっと部下に優しくするよう指導されたのを踏まえて優しくしたはずなのに、かえって部下との距離が遠くなったのはなぜだ。
・索超(さくちょう)…青い騎兵を率いる隊長。青い具足の色合いには若干のばらつきがあるので、色彩を重視した兵の配置にはこだわりがある。
・扈三娘(こさんじょう)…美人隊長。平気で男子更衣室で着替えをするが、胸はおろか、おへそすら見たものは誰一人としていないという。
・馬麟(ばりん)…隊長。林冲にほら貝を吹かされたが肺活量は普通だって。
・郁保四(いくほうし)…旗手。デカすぎて、朱富のお店の座席一人分だと足りない。

・皇甫端(こうほたん)…獣医。今でこそ乗らなくなったが、若いころの馬術の腕は地元で一番だった。
・段景住(だんけいじゅう)…馬の調達担当。馬具の改修も得意だが、かつて余計なことして殺されかけた思い出が。

1.
張藍「…」
林冲「…」
索超(何という威圧感だ)
馬麟(銅鑼係の郁保四が小さく見える)
騎兵(あれが張藍様か)
兵(向き合っただけで失禁しそうだ)
扈三娘「完治したようで何よりです、張藍」
張「…」
林「…」
扈「それでは、行きますよ」
林「待て、心の準備が」
張「私の愛する所を十言いなさい」

張「一つ!」
郁保四「!」
林「いつ見ても美しい!」
張「二つ!」
郁「!」
林「料理が上手すぎる!」
張「三つ!」
郁「!」
林「笑顔が愛らしい!」
張「四つ!」
郁「!」
林「可憐な瞳!」
張「五つ!」
郁「!」
林「笑い声で癒される!」
白勝(気が狂いそうだ)
安道全(蕁麻疹が止まらん)

張「六つ!」
郁「!」
林「傍にいると癒される!」
張「七つ!」
郁「!」
林「肩の施術が上手い!」
張「八つ!」
郁「!」
林「きめ細かですべすべの肌!」
張「九つ!」
郁「!」
林「二人の記念日を忘れない!」
張「十!」
郁「!」
林「全てを愛しているぞ、張藍!」
張「私もです、林冲様!」

・張藍(ちょうらん)…何がおかしいのですか?あなた方?
・林冲(りんちゅう)…十周回って何もかもどうでもよくなった。

・扈三娘(こさんじょう).…王英殿にやられたら、声を出す前に首を落とすでしょうね。
・索超(さくちょう)…俺は二度と張藍殿の目を見て話すことはできぬだろう。
・馬麟(ばりん)…棒打ちの罰の方がまだましだ。
・郁保四(いくほうし)…桴を投げ捨てて逃げ出したかった。

・安道全(あんどうぜん)…薛永の気付け薬を1ダース飲み干した。
・白勝(はくしょう)…久しぶりに寝込み、死線をさまよった。

2.
索超「なあ、馬麟」
馬麟「どうした」
索「鮑旭から聞いたのだが、お前は里の暴れ馬を巧みに御した事があるらしいな」
馬「大した事じゃない」
索「そこで頼みがあるのだが」
馬「…」
索「あっちの暴れ馬もなんとか出来んか」

林冲「郁保四!馬に乗り旗を持ちながらの倒立がなぜ出来ない!」
郁「」

馬「…」
索(鉄笛を…)

♪〜鉄笛〜♪

林「すまぬ、郁保四」
郁「!」
林「さすがに無理がすぎたな」
郁(らしくないぞ)
林「今日はもう休め」
郁「はあ」

馬「…こんなもんかな」
索「中東の蛇使いがこんな芸をしたのを見たことある」

・馬麟(ばりん)…なだめる以外の曲のレパートリーもあるぞ。
・索超(さくちょう)…怒らせる曲だけは絶対に吹かないでくれよ。
・林冲(りんちゅう)…なぜ俺は郁保四の調練を途中でやめる気になったのだ?
・郁保四(いくほうし)…ぶっちゃけ出来そうな手応えを掴みつつあった。 

致死軍&飛竜軍 

致死軍&飛竜軍…闇の軍と資金源の塩の道を守る軍隊。各地で拠点を設けて戦いに臨むのだが、拠点に置いてある漫画を持ち出しする奴がいて、各拠点でいつも足りない巻がある。

人物
・公孫勝(こうそんしょう)…致死軍隊長。笑い声が独特と評されるが、それ以上に独特なところが多すぎて、今やだれも気にしなくなった。
・劉唐(りゅうとう)…飛竜軍隊長。公孫勝と出会う前は名の知れた博打打ちで、雑誌にコラムを掲載していた。
・楊雄(ようゆう)…致死軍の剣が標準装備だが、斬首用の刀の遣い手でもある。
・孔亮(こうりょう)…イケメンだが、ルックスのみで彼に惚れた女性は、おおむね彼の言動に幻滅するらしい。
・樊瑞(はんずい)…暗殺者。今まで暗殺した者の記録を詳細にとっており、孔亮は死のノートと呼んでいる。
・鄧飛(とうひ)…鎖鎌の名手。修行中はよくこんなめちゃくちゃな武器を使う気になったと思うほど、分銅でケガをしていた。
・王英(おうえい)…身長が小さすぎるから子供料金を提示されるが、顔を見られた瞬間大人料金に変更されるし、受付が全力で笑いをこらえている。
・楊林(ようりん)…日陰者あるあるネタには定評がある。

3.
公孫勝「劉唐」
劉唐「はい」
公「妙に銭が増えているが何をしていたのだ?」
劉「博打です、公孫勝殿」
公「お前も博打をするのか」
劉「綺麗なのから汚いのまで、技も色々持ってますよ」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「次行くときは誘いますから」
公「そうは言ってない」

公「…」
劉(無表情なのに。ウキウキしている気を感じる…)
公「稼いだ額を競うぞ、劉唐」
劉「その前に、僭越ながらご忠告を」
公「…」
劉「博打は熱くなったら負けです」
公「…」
劉「周りを見渡してカモがいなかったら、あなたがカモになっています、公孫勝殿」
公「…」
劉「ではお楽しみに」

劉(あいつは厳しい博打を打つな)
男「!」
劉(イカサマしたら、目を抉り出すほどの覚悟がある)
公「…」
劉(公孫勝殿は平気かな?)

公「劉唐」
劉「何事ですか?」
公「尋ねたいんだが」
劉「はい」
公「賭ける銭が無くなったら、次は何を賭ければいいんだ?」
劉「今すぐずらかりますよ、公孫勝殿」

・公孫勝(こうそんしょう)…張った目がことごとく裏目に出る様は、さながら妖術。
・劉唐(りゅうとう)…博打技のデパート。ライバルは石勇。

4.
公孫勝「…」
劉唐「公孫勝殿、こいつは…」
孔亮「猫ですか?」
楊雄「俺はパス」
猫「…」
劉「…拾われたんで?」
公「付いてきたのだ」
楊「随分懐かれてますね」
孔「どれ、俺が可愛がって」
猫「!」
孔「!」
劉「ほう、こいつは」
楊「人を見る目がある猫だ」
公「…」
猫「…」

孔「青蓮寺の軍との戦いでもここまでの傷は負わなかったぞ」
楊「ガッツリやられたな、孔亮」
猫「…」
公「どうしよう、劉唐」
劉「飼いますか?」
楊「飼うといっても、俺たちは拠点を転々としてるし」
孔「面倒を見る暇な奴なんて致死軍にはいないぞ」
公「暇な奴、か…」
劉「心当たりが?」

戴宗「届け物です」
羅真人「天速星?」
戴「着払いです」
羅「待て、印鑑が」
戴「偽装したのでよければ」
羅「地巧星か」
戴「じゃあ私を梁山泊まで」
羅「…目をつぶれ」
戴「まいど!」
羅「なんだこいつは」
猫「…」
羅「手紙が」
公「飼えんから面倒を見ろ、時々こっちに送れ」
羅「一清…」

・公孫勝(こうそうしょう)…猫の名前は一清にしよう。
・劉唐(りゅうとう)…飼い方マニュアルを注文済み。
・楊雄(ようゆう)…猫アレルギーゆえ遠くから見守るのみ。
・孔亮(こうりょう)…しばらく任務に支障をきたす傷を負う。

・戴宗(たいそう)…意外と行けるもんだな、二仙山。 客がいないときの再配達防止用の印鑑を金大堅に作ってもらってる。

・羅真人(らしんじん)…日頃の険しい態度から想像できない溺愛ぶりをしていた所を童子に見られた。 

本隊 

本隊…梁山泊の一軍。各隊長の兵対抗スポーツ大会は、毎回種目が変わる。

・関勝(かんしょう)…遊びだとついムキになって個人プレーに走ってしまうが、戦では全くそうならない。
・呼延灼(こえんしゃく)…両利きの利を生かした器用さが持ち味だが、やや頭が固い。
・穆弘(ぼくこう)…左目に眼帯をしているので視野は狭くなるが、状況判断力は的確。
・張清(ちょうせい)…野球大会の時、嫁の瓊英(けいえい)にクローザーを任せたら見事に三者凡退で抑えてのけた。
・宋万(そうまん)…あだ名は雲裏金剛(うんりこんごう)。仁王様のこと。
・杜遷(とせん)…あだ名は摸着天(もちゃくてん)。彼も背が高い。最近甥っ子が遊びに来た。
・焦挺(しょうてい)…あだ名は没面目(ぼつめんぼく)。不愛想という意味だが、たまたまムスっとしてる時につけられたあだ名で、本人のコミュ力はいたって普通。
・童威(どうい)…弟の童猛とは双子。ひげを剃ってる方と剃らない方で周囲は判別しているが、二人のスペックが大差ないので正直どっちでもいい。
・韓滔(かんとう)…棗の木で作られためっちゃ長い棒の使い手。まずはリーチで圧倒するのが彼の戦い方。
・彭玘(ほうき)…面倒見のいいおいちゃん将校。長年コンビを組んだ韓滔との漫才は圧巻。
・李袞(りこん)…最近になって、やっと槍を投げて戦う方法を会得した。課題は命中精度。
・丁得孫(ていとくそん)…前世で何かあったレベルで蛇が嫌い。楽園でも追放されたのか?

5.
関勝「穆弘は凄いと思う」
穆弘「どこがだ?」
関「手前味噌になるが、俺も呼延灼も禁軍で期待された将校で、地方では将軍も務めただろう?」
穆「うむ」
関「その俺たちと、言ってしまえば田舎のヤクザが肩を並べて兵を指揮しているのだからな」
呼延灼「確かに…」
穆「俺はなんと返せば良いのだ」

関「褒め言葉だぞ、穆弘」
穆「素直に受け取りにくいが、そのように受け取ろう」
呼「逆に言えば、穆弘が禁軍にいたら俺たちより凄い事になったんじゃないか?」
関「なるほど!」
穆「俺が禁軍?」

呼「俺たちは軍学をきちんと学んだが、お前の指揮は我流だろう?」
穆「確かに、せいぜい五十人足らずの地元の喧嘩が関の山だ」
関「我流で正統派の俺たちと肩を並べるなんて凄い事じゃないか」
呼「お前の兵法書が書けるんじゃないか?」
穆「穆家の兵法か」
関「城の防衛に卓越してそうな名だ」

・穆弘(ぼくこう)…俺がそんな凄いなら、もう一人水軍にそんな奴がいるんだが…
・関勝(かんしょう)…軍学の講義はもっぱら居眠りしてた。
・呼延灼(こえんしゃく)…彼の溌剌とした振る舞いが、7代目フレッシュマン呉達の目に止まったのだ。

6.
張清「瓊英が完璧すぎる嫁なのだが」
関勝「ほう」
張「完璧すぎて、申し訳ない話、少しだけ息苦しさを感じてしまうこともあるのだ」
関「贅沢な悩みな気がするが、言っていることは何となく分かるぞ」
張「間抜けの達人として、瓊英に隙を伝授してくれ、関勝」
関「間抜けの達人…」

関「瓊英殿」
瓊「あら、関勝様。御機嫌よう」
関「実はある事を伝授するため、来させてもらった」
瓊「それは?」
関「隙だ、瓊英殿」
瓊「!?」
関「あなたへ隙を伝えるためにやって来たのだ」
瓊「…私には張清様が」
関「…?」
瓊「…」
関「いかん!申し訳ない。その好きではないのだ、瓊英殿」

瓊「隙でしたか、関勝様」
関(不意打ちに弱いな)
瓊「小さい時から一部の隙も許されぬよう育てられたので…」
関「あの張清のことだから、あなたの隙も含めて愛する事が出来ると思うぞ」
瓊「もっと隙を見せろと…」

張「瓊英、それは…」
瓊「隙です、張清様」
張(何をレクチャーしたのだ、関勝」

・瓊英(けいえい)…この衣装が私なりの隙なのですが…
・張清(ちょうせい)…今夜は眠れそうにない…

・関勝(かんしょう)…レクチャー翌日の張清の消耗ぶりは一体…

遊撃隊 

遊撃隊…戦では自由行動が許されているが、服装の自由までは許してないぞ。

人物
・史進(ししん)…隊長兼下ネタ要員。原作だともっとかっこいいんだけどなぁ。
・杜興(とこう)…李応が好きすぎる元執事。昔はタキシードがめっちゃ似合ってたのに、今はしわくちゃ。
・陳達(ちんたつ)…少華山にいた頃は、中々の料理の腕前を揮っていた。
・施恩(しおん)…もしも諸子百家の方々が替天行道を読んだらのネタがバズった。
・穆春(ぼくしゅん)
…故郷のお父さんからお手紙と予備のパンツが届いた。
・鄒淵(すうえん)…山で調練する時は、彼がいれば美味い飯にありつける

7.
史進「妓楼に行くぞ、鄒淵」
鄒淵「二度とお前などと行くものか」
史「…」

史「妓楼に行くぞ、陳達」
陳達「誰がお前と行くか」
史「…」

史「行く口実はないものか…」
安道全「史進、杜興の内服薬を持ってきたが、どこにいるか知らないか?」
史「これだ!」

安「妓楼の女たちの健康診断?」
史「引き受けてくれないか、安道全?」
安「喜んで引き受けよう」
史(しめた)

史「李瑞蘭に、心置きなくしたたかに精を放つのも久しぶりだ」
安「待たせた、史進」
史「お前も悦ばせたのか?」
安「大喜びだった」
史「やるじゃねえか」

安「天にも昇る心地だと言っていたよ」
史「!?」
安「日頃の修行の賜物だな」
史「…」
安「彼女も今日は良く眠れることだろう」
史「…」
安「是非また来て欲しいと連絡先まで頂戴してしまった」
史「なんてこった」

李巧奴「また来てくださいね」
安「私の鍼がここまで喜ばれたのは初めてだ」

・史進(ししん)…またパンツを忘れてきた。
・鄒淵(すうえん)…史進と行ったところより良い店を見つけたが、絶対に教えない。
・陳達(ちんたつ)…実は李瑞蘭に惚れられてる。

・安道全(あんどうぜん)…他の女の子の連絡先までしこたま頂戴してきた。

・李瑞蘭(りずいらん)…独りよがりな史進はもういい。
・李巧奴(りこうど)…李瑞蘭の同僚。久しぶりに清々しい朝を迎えたのも安先生のおかげ! 

水軍 

水軍…慢性的な兵隊不足に悩まされているが、慢性的な李俊の気まぐれにも兵は悩まされている。

人物
・李俊(りしゅん)…お頭。湖賊よりも海賊になりたくなってきた。
・張順(ちょうじゅん)…潜水部隊隊長。フィッシャーマンだが、彼の場合少し意味が違う。
・阮小七(げんしょうしち)
…阮三兄弟末っ子。七月と七の付く日は休んでいいだろ?と李俊に言ったら、七倍返しにされた。
・童猛(どうもう)…湖底の地形図を作るのが得意。最近妙に気になる箱を見つけた。

・阮小二(げんしょうじ)
…船大工で、阮三兄弟長男。嫁と子どもがいたが、音信不通になって久しい。何してるのかな。
・趙林(ちょうりん)…阮小二の弟子。劉唐や石勇にかもられ続けながらも、博打の腕を少しづつあげてきた。船作れよ、お前。
 
8.
李俊「お前は井の中の蛙だ、阮小七」
阮小七「なんだいきなり」
李「つまり大海を知らない」
七「生まれがこの辺なんだから仕方ねえだろ」
阮小二「なら海に連れてってくれよ」
趙林「何人女を引っ掛けられるか勝負しましょうよ、李俊殿」
李「よし、表向きは海の船造りがどうのとかいう理由を拵えておけ」

童猛「海も久しぶりだ」
張順「俺は潯陽江の方が馴染み深いが、良いもんだな」
李「遊びに来たんじゃねえぞ」
童「だけど、俺たちまで行く理由がないんじゃないですか?」
張「梁山泊の水軍みんな引き連れて、調練でもするおつもりで?」
李「表向きはな」
童「…裏の理由は?」
李「…遊びに来た」

童「さすが李俊殿!呉用殿に出来ないことを平然とやってのける」
張「そこにシビれる、あこがれるぅ!」
李「貧弱な呉用殿には及びもつかんだろう」

七「これが海か」
二「広いな」
趙「李俊殿、あの女ヤバいですよ」
李「どいつだ?」
趙「あの超美人」
瓊英「…」
李「ヤバっ」
童「やれやれだぜ」

瓊「あら、李俊殿に水軍の皆さん、御機嫌よう」
李「バカンスか、瓊英殿?」
瓊「仕事帰りの一息です」
鄔梨「誰かいるのか、瓊英?」
瓊「李俊殿と水軍の方々が」
鄔「なぜこんなところまで?」
李「…海で調練を」
鄔「今汗をかいたな、李俊」
李「!」
鄔「これは嘘をついている味だ」
李「鄔梨〜」

瓊「父上に嘘は無駄です」
李「交易船を融通するから、見逃してくれ」
瓊「本当に、そこまでしてくださるのですか?」
李「約束する」
瓊「だが断ります」
李「なに!」
瓊「この瓊英が最も好きな事のひとつはご自身でご自身のことを強いと思ってらっしゃる方にNOと断る事です」
李「この李俊が!」

瓊「李俊殿。だからあなたはヘタレなのです」
李「!」
瓊「調練をサボると心の中で思ったなら、その時既に調練をサボっているのです」
李「瓊英殿の覚悟が、言葉でなく心で理解できたよ」

張「みるみる老いたな、李俊殿」
七「釣れた!」

趙「徐々に日が暮れます」
二「海の船を見に行こう、趙林」

・李俊(りしゅん)…呉用からの罰について、考えるのをやめた。
・童猛(どうもう)…説教中、時を止めて逃げたかった。
・阮小七(げんしょうしち)…時を吹き飛ばして過去に戻り、海に行かない選択をしたかった。
・張順(ちょうじゅん)…説教中の時を飛ばせないかと思った。
・阮小二(げんしょうじ)…説教中に時を加速させたかった。
・趙林(ちょうりん)…説教を別の世界の自分に受けさせたかった。

・鄔梨(うり)…盲目の商人。李俊の汗は、ゲロ以下の匂いがプンプンした。
・瓊英(けいえい)…泳いでいる最中、不思議な弓と矢を見つけた。 

重装備部隊 

重装備部隊…攻城戦の時に平気を活用する部隊。でかいはしご車の雲梯(うんてい)という兵器や、卵鉄(らんてつ)という城壁を破壊する兵器を作ったり、使ったり。最近のトレンドはピタゴラスイッチの仕掛けづくり。

人物
・李応(りおう)…隊長。アイデアマンでとんでもないものを思いつけるが、作る作業はてんでダメ。
・解宝(かいほう)…もともと猟師だから、休日のたびに狩った獣で拵えた派手な上着を着てくる。

9.
李応「我々重装備部隊の技術は、李雲とは一味違う方向性で素晴らしいと思わないか?」
解宝「確かに、李応殿のアイデアや俺たちの兵器を作り上げる技術は自慢できるな」
李「攻城兵器以外の大規模工作をしてみよう」
解「面白そうだ」
李「何を作ろうか」
解「議論しよう」

解「議論の結果、李応殿のからくり人形を作った」
李「顔を上手く描ける奴はいないのか?」
解「仕掛けはすごいぞ」
李「ほう」
解「このボタンを押すと」
李「!」
解「右手から岩をも砕く飛び出すパンチが炸裂する」
李「左手は?」
解「岩をも砕く空手チョップが炸裂する」
李「詰め込みすぎだ」

李「尻から煙が出ているぞ」
解「これが目玉なのだ、李応殿」
李「尻だ」
解「尻のふたを開けると」
李「…」
解「饅頭を蒸せるのだ」
李「なぜ尻に?」
解「ユーモアだ」
李「食え解宝」
解「軟便…柔らかすぎだ」
李「悪意まみれだ」
解「きちんと排泄…蒸してほしいな、李応殿」
李「くそったれめ」

・李応(りおう)…アイデアや図面を書くのは得意だが、トンカチがとにかく苦手。
・解宝(かいほう)…からくり人形の試作段階で、尻から硫黄の匂いがした時はみんなで爆笑した。 

二竜山 

二竜山…兵養成施設。そればかりでなく、鍛冶屋さんとか大工さんとかも養成している。なお某隊長は色恋について養成され、やっとこさ実を結ぶことができた。

人物
・楊志(ようし)…隊長。嫁の済仁美がかわいすぎて赤面した時、楊令に赤面獣だとからかわれた。
・秦明(しんめい)…隊長。恥ずかしすぎて、恋愛絡みの心理テストの結果を聞くときですら動悸が凄くなる。
・解珍(かいちん)…機嫌がよい時の鼻歌は、老いぼれ犬の歌だと黄信に揶揄されている。
・郝思文(かくしぶん)…副官。いまだに関勝からしょうもないギャグだらけの手紙が届く。
・石秀(せきしゅう)…豚小屋の視察をした時、すごく自然に豚を曹正と呼んでいた。
・曹正(そうせい)…石秀を倒すべく日々武術の修行をしているが、その後の食事で全部台無しにしていることに気づいていない。
・蔣敬(しょうけい)…勘定が得意だからって、計算高いとかいうのはよしてくれよ。
・李立(りりつ)…剣はそこそこ使える。本人的には包丁の方が色んな意味で使いやすいけどね。
・周通(しゅうとう)…項羽になった夢を見たが、起きた時にはカップ麺のお湯も沸いてなかった。
・黄信(こうしん)…森羅万象ありとあらゆるものに、愚痴を言える。
・郭盛(かくせい)…呂方と仲良し。いつか方天戟の決着をつけてやる。
・燕順(えんじゅん)…部下には親分と呼ばせている。
・鄭天寿(ていてんじゅ)…彼が湖畔でたたずんでいるだけですごく絵になると、熱心な女性ファンはかく語る。
・楊春(ようしゅん)…解珍と長い旅をしていたことがあるが、暇なときはずっとパラパラ漫画書いてた。
・鄒潤(すうじゅん)…瘤取り爺さんを読んだ。俺ならわざと下手くそに踊ってもう一つ瘤をつけてもらうけどな。
・龔旺(きょうおう)…特技は槍を投げる飛槍。調練は投げやりになるなよ。

10.
楊志「曹正の、ソーセージ、はいつ食っても美味いな」
曹正(俺の口から伝えたかった…)
楊「楊令も大好物だぞ、曹正。もっと大量生産できないのか?」
曹「そうしたいのも山々だが」
楊「できない理由があるのか?」
曹(石秀が抜き身の剣をチラつかせてやがるからな…)
石秀「…」

楊「なあ、石秀」
石「はい」
楊「曹正の作ったソーセージを」
曹(まさか)
楊「曹正のソーセージとして商品化するのが良いと思わないか?」
曹(楊志殿…)
石「素晴らしいアイデアです!楊志殿」
曹「…」
楊「だろう?」
石「タイトルが最高ですね!曹正のソーセージ!」
曹(俺も包丁を研ぎに行こうか)

石「…」
曹「…」
石「あれが本心だと思うなよ、曹正」
曹「お前が使うのは切れもしない肉切り包丁ではなく、おべっかではないか?」
石「斬れるのは、致死軍の剣だけで十分だ」

・楊志(ようし)…案の定、曹正のソーセージはバカ売れ!CMの撮影も検討中。
・曹正(そうせい)…俺の料理が認められたのは嬉しいが、どうしてこうも心にしこりが残るのだろうか。
・石秀(せきしゅう)
…楊志殿が言うのと、曹正が言うのとでは、なぜこうも不快指数が変わってくるのだろうか。

11.
秦明「公淑は素晴らしい」
郝思文「最近の素晴らしいことは?」
秦「容の心を巧みに読んで的確にあやしていた」
郝「素晴らしい」
秦「陳娥殿は?」
郝「やはり素晴らしいです。帰ったら食いたいと思ったものが出てきます」
秦「奥方同士の仲も非常に良好だ」
郝「妻には死ぬまで敵いませんな」

解珍「惚気るな、愚かな旦那どもめ」
秦「厄介な爺が」
郝「いつも物を運ぶ籠に乗って参上されますよね、解珍殿」
解「わしの死んだ嫁は、それはそれは虎のようだったぞ」
秦「初めて聞く話だ」
解「いつもわしの作る料理に不満を言っていた」
秦「シンプルに不味かっただけではないか?」

解「散々わしの肉刺しとタレを食っておきながら、その言い草はなんだ」
秦「それは悪かった」
郝「誰しも始めたての頃はありますからね」
解「まあ、保健所の職員をいなすのが巧みだったのは感謝していたがな」
秦「保健所が訪問してきたのか?」
郝「それはまずい」

・秦明(しんめい)…公淑がゴキブリ退治で使った狼牙棒の後始末を文句ひとつ言わずやってのけた。
・郝思文(かくしぶん)…陳娥は私の心が読めるな。隠し事などしようものなら、大変な目に合う。
・解珍(かいちん)
…凌蘭という妻だったんだがな、妻への想いはタレの壺に引き継がれておる。 

双頭山 

双頭山…どこかが惜しい、Bクラスの拠点。何かが足りない気がしてならないものを、皆が抱えている。

人物
朱仝(しゅどう)…隊長。髭を蓄えすぎた時、食べこぼしがぼろぼろ出てきてた。
・雷横(らいおう)…隊長。あだ名は挿翅虎(そうしこ)。空を飛ぶ虎。虎に翼ってやべえぞ。
・董平(とうへい)…隊長。槍を二本使う。呼延灼の双鞭との立ち合いは見どころ満点。
・宋清(そうせい)…宋江の弟。なんで頭領やってんのかなぁと思う時が多々ある。
・孟康(もうこう)…北の人脈が広くて頼りになる。ツケもしこたま拵えてるけど。
・李忠(りちゅう)…副官。面倒見がよいが、ややお節介になることも。
・孫立(そんりつ)…武芸の腕はなかなかのもんだぞ。鞭の腕は呼延灼といい勝負ができるほど。
・鮑旭(ほうきょく)…盗人時代のあだ名は喪門神(そうもんしん)。死神である。馬麟とのバンド名にしようか検討中。
・楽和(がくわ)…正統派の歌手だったが、デスメタルに目覚めてしまった。
単廷珪(たんていけい)…水を生かした仕掛けは、山の防御で地味に役立っている。

12.
董平「またあいつからか」
孫立「どうしたんで?」
董「俺は上司の娘に一方的に惚れられてな」
孫「はあ」
董「それが嫌で嫌で断り続けてたら投獄され、あわや死罪になるところだったんだ」
孫「死罪?」
董「死罪」
孫「…死罪?」
董「死罪」
孫「…」
董「…」
孫「なんで?」
董「及びもつかん」

孫「呪いの人形かなにかが実体化したんじゃないですか?」
董「やめろ」
孫「死罪はないでしょう」
董「そういえば」
孫「心当たりが?」
董「娘の話になった途端、上司の目がおかしくなったな」
孫「…」
董「おまけにこの手紙を見てくれ」
孫「」
董「こんな手紙に慣れちまった自分が怖いよ」

孫「お祓いをした方がいいのでは?」
董「俺は怪力乱神を語らん」
楽和「董平殿」
董「どうした」
楽「匿名の小包が董平殿に」
董「…」
楽「妙にしっとりして気持ち悪いんで早く受け取ってください」
孫「…」
董「開けるのを一緒に見届けてくれ、楽和」
楽「?」
董「!」
孫「」
楽「」
董「」

・董平(とうへい)…小包を開けた後の記憶がない。
・孫立(そんりつ)…嫁のじゃない、甲高い女性の笑い声が聞こえた気がした。
・楽和(がくわ)…失神したところを、鮑旭に助けられた。

・董平の上司の娘…董平の勤務先だった東平府の長官の娘。ダジャレじゃないぞ。彼女と関わった者の末路は概ね悲惨だという噂。 

流花寨 

流花寨…隊長の強い希望で矢を作りすぎた結果。兵糧庫のスペースも圧迫気味。

人物
・花栄(かえい)…隊長。弓を射ることより難しいことはできないと思った方が良い。
・朱武(しゅぶ)…軍師。陣形の知識が豊富。
・孔明(こうめい)……初めてきた兵はだいたい孔明が軍師だと思うのも無理もない話。
・欧鵬(おうほう)…旅先での李逵の指導により、流花寨一の料理上手に。
・魏定国(ぎていこく)…彼の仕事にやけど薬は欠かせない。
・呂方(りょほう)…
占いでも始めてみようかと思うレベルで、色々的中し始めてきた。
・陶宗旺(とうそうおう)…
石積みを崩すあの瞬間を味わいたくて積み上げてるところは正直ある。

13.
朱武「高い所の書物が届かん」
花栄「任せろ」
朱「平気か?」
花「あ!」
朱「置いてあった調度が…」
花「…すまん」 

呂方「花栄殿」
花「なんだ」
呂「具足を繕ってたら、糸が絡まったのを解いていただけますか?」
花「任せろ」

呂「なぜ俺まで絡まってるんですか」
花「…すまん」

朱「花栄に頼み事はできんな」
呂「かえって酷い目に遭いますもんね」

花(これは汚名を返上しなければ)

朱「花栄」
花「…」
朱「やはりいい、自分で取る」
花「!」
朱「なんだ!」
花「…」
朱「弓を使って書物を取ったのか…」
花「どうだ」
朱(どうだろう?)

呂「また絡まっちまった」
花「!」
呂「何だ!」
花「…」
呂「解くことは出来ている…」
花「どうだ」
呂(手で解いてほしい…)

陶宗旺「石積みが…」
花「!」
陶「急に崩れた!」
花「どうだ」
陶「私は積み方を模索していたんです!」
花「…すまん」

朱「破壊はできても創造は出来んな」

・花栄(かえい)…弓矢は超一流だよ。弓矢だけはね。
・朱武(しゅぶ)…あいつは弓矢以外に得意なことはあるのだろうか。
・呂方(りょほう)…気配に敏感で、未来予知っぽいことができる日もあったりする。花栄の諸々は予知するまでもない。
・陶宗旺(とうそうおう)…俺の仕事は、賽の河原の石積みみたいだとよく言われます。 

聚義庁 

聚義庁…梁山泊首脳陣。バランスのいい人材は阮小五くらいかも。

人物
・晁蓋(ちょうがい)…兵の調練に特化している。他はダメ。
・宋江(そうこう)…兵の心のケアに特化している。他はダメ。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…塩の道の構築に特化している。他は厳しすぎてついていけない。
・呉用(ごよう)…デスクワークに特化しすぎている。人間関係はダメダメ。
・柴進(さいしん)…物資の調達に特化している。でも与えられた予算は守ろう。
・阮小五(げんしょうご)…苦手なことってある?と燕青に聞かれた。
・宣賛(せんさん)…定期的に関勝をいじらないと、ほかの人に意地悪したくなってしまう。

14.
晁蓋「調練を終えた後で行う文書決済の仕事は、対応できん」
呉用「身体を使った後は頭も使いましょう、晁蓋殿」
晁「まるで調練の時に頭を使ってないかのような言い草だな、呉用」
呉「身体を動かすのが主体なのは間違いないでしょう」
晁「ならば、頭を使いつつ身体も使うのを試してみる」
呉「?」

晁「…」
阮小五(文書を読みながら、遠駆けの調練をやるなんて)
晁「次の文書をよこせ、阮小五」
阮「はい」
晁「…」
阮「一里先に木!」
晁「…」
阮(前も見ずに障害物を避けるとは)
晁「…」
阮(これが本当の読書マラソンか)

晁「良い汗をかいたぞ、呉用」
呉「文書は?」
晁「阮小五」
阮「若干汗臭くなりましたが」
呉(次はコピーを取ろう)
晁「本題だが…」

晁「どうだ?」
呉「見事な判断です、晁蓋殿」
晁「だろう?」
阮「…毎回私が並走するのですか?」
呉「無論だ、阮小五」
晁「見事なアシストだったぞ」
阮「…」

・晁蓋(ちょうがい)…大至急の重要文書の日に限って雨が降るという事は、天がもっと熟考せよと言っているのだ、呉用。
・呉用(ごよう)
…晴れるのを待っていたら飢え死にしますよ、晁蓋殿。
・阮小五(げんしょうご)…晁蓋についてこれる体力も、文書をなくさない処理能力も、的確なガイドを下せる判断力も持ち合わせているのは梁山泊でも彼だけ。 

三兄弟 

三兄弟…荒事にはめっぽう強い便利屋なんだけど、司令塔がいないと全く機能しない。

人物
・魯達(ろたつ)…錫杖の腕を取り戻しつつある。
・武松(ぶしょう)…NGワードは無精者。
・李逵(りき)…彼の飯が食いたくて、仕事を依頼するクライアントが多数。

15.
李逵「恐ろしい事に気付いちまったんだがよ、兄貴」
武松「なんだ」
李「ここしばらく、兄貴が自分から何かやった事って何かあったか?」
武「…」
李「…」
武「…飯を食った」
李「俺の作った飯じゃねえか」
武「…着物を着た」
李「それは俺が洗濯して乾かして畳んだ着物じゃねえか」

武「そんなもんかな」
李(まさかそのレベルまで堕としちまったとは)

李「こいつはやべえと思うぜ、宋江様」
宋江「武松の主体性を取り戻すか…」

武「…」
宋「李逵から話を聞いた、武松」
李「…」
宋「お前の主体性を取り戻すために知恵を絞った」
武「…」
宋「梁山泊入りを勧める勧誘をしろ」

武「…」
李「…」
宋「ノルマは1日108人だ」
李(多すぎるってのは、俺の頭でも分かるぜ)
武「宋江様」
宋「…」
武「表立って叛徒になる事を促すのは良くないのでは…」
宋「武松!」
武「!」
宋「やらぬ言い訳ばかり積み重ねたから、主体性を失ったのだ!」
李(そもそもやっちゃいけねえ事だって)

・武松(ぶしょう)…案の定大捕物に発展し、青蓮寺との暗闘を繰り広げた。
・李逵(りき)…開封府の表通りでやったのがまずかったんじゃねえかな?
・宋江(そうこう)…強く叱りすぎたかな…もっと言葉を選んで叱らなければいけなかった… 

養生所&薬方所 

養生所&薬方所…立地は最高。居心地は人それぞれ。

人物
・安道全(あんどうぜん)
…誰に習ったわけでもないのに、修業時代から手術はめっちゃうまかった。
・薛永(せつえい)…彼の腸内細菌を検査した結果、新種の細菌が発見されたらしい。
・白勝(はくしょう)…彼がいるから仕事が回る。いなくなった時のことは考えたくない。
・文祥(ぶんしょう)…いつの間にか事務職の仕事もやらされ始めているが、これはまさか…

16.
安道全「白勝、妓楼に行ってくる」
白勝「あいよ」
文祥「え!」
安「何がおかしい、文祥」
白「いつものことだろう?」
文「…」
安「じゃあ行ってくる」
白「気をつけてな」
文「…」
白「…」
文「…」
白「文祥」
文「おう」
白「不覚にも、お前の疑念に今気づいた」
文「だよな」

安「妓楼に行くぞ、史進」
史進「!」
杜興「!?」
陳達「!?」
安「今日は行かんのか?」
史「…後で行く」
安「分かった。今日は五人相手をしなくてはならんので、先に行くぞ」
史「五人…」

杜「安道全と行ったのか?」
陳「説明しろ」
史「実は…」
陳「俺も行くぞ」
史「鄒淵も誘おう」
杜(わしは?)

鄒淵「あの忌まわしい店で一体何が」
史「やはり一緒に行こう、安道全」
安「分かった」
陳「…」

李巧奴「安先生!」
女「ようこそ、安先生!」
女「お待ちしてました!」
女「今日は私からね!」
女「私が先よ」
安「待ってくれ」

史(大歓迎ではないか)
陳(俺たちの相手をする女の目が冷たい)

李瑞蘭「また史進か」
史「随分しょっぱいな、瑞蘭」
李「私も次は安先生にお相手してもらうの」
史「なんだと!」
李「だって史進の相手は痛いんだもの」
史「…」
李「安先生のはとてもとても気持ちいいらしいわ」
史「…」

李巧奴「マッサージも上手いのね、安先生」
安「ツボを抑えているだけさ」

史「どうだった?」
陳「安道全の部屋から出た女の顔が、とてもつやつやしていた」
鄒「艶めかしい声が鳴り止まなかったぞ」
史「まさか、安道全が…」
安「待たせた」
史(五人も相手をしたのに、この余裕)
陳(何というテクニシャンなんだ)

瑞「史進達には勘違いさせときましょう」
巧「了解」

・安道全(あんどうぜん)…他の店の出張依頼も頼まれ始めた。
・白勝(はくしょう)…帰った安道全に話を聞いたら案の定でホッと一息。
・文祥(ぶんしょう)…場所も相手も御構い無しに治療する姿勢は医者の鑑だ!

・史進(ししん)…いつになく、李瑞蘭は冷たかった。
・陳達(ちんたつ)…次は李瑞蘭に相手してもらおう。
・鄒淵(すうえん)…安道全の部屋から聞こえる艶やかな声に興奮した。

・杜興(とこう)…誘う相手にすらならなかったのは日頃の言動のせいだってば。

・李瑞蘭(りずいらん)…次の史進の指名は仮病を使おう。
・李巧奴(りこうど)…安道全に惚れた。その恋の行方やいかに。

練兵場 

練兵場…グラウンドキーパーのおじさんたちの仕事は超一流。みんなも感謝しよう。

人物
・徐寧(じょねい)…馬に乗って鎗を使うのが得意。馬から降りた時の腕前はまぁそこそこ。

17.
周通「兄貴は打虎将というくらいだから」
李忠「ああ」
周「虎を倒したんだろう」
李「本当だからな」
周「まあ本当に倒したところで、武松がいるんじゃ二番煎じなのは否めん」
李「この野郎」
周「そこで兄貴が真の打虎将になるために」
李「ん?」
周「梁山泊の虎退治をしてもらおう」
李「面白い」

周「錦毛虎か?」
李「矮脚虎なら、ギリギリで勝てるかもしれん」
周「頼りねえな」
李「病大虫ならいけるな」
周「あいつは侮れんぞ」
李「あの小太りには負けないさ」

李「参った」
周「フラグ乙」
薛永「お疲れ様でした」
李「強いな、薛永」
薛「いえ、そんな」
周「病気の虎に負けてるようじゃ、万全の虎なんかとてもじゃないな」
李「くそ」
薛「ところで周通殿、足元の野草を採ってくれませんか」
周「はいよ」
薛「雑に毟るな」
周「」
李「強い」

・李忠(りちゅう)…自称虎をやっつけた男。あだ名は打虎将(だこしょう)。打虎将の李忠だ!と名乗られた武松は、笑いを堪えるのが大変だった。
・周通(しゅうとう)…梁山泊かませ犬ランキング殿堂入り。強い周通なんて、らしくない。

・薛永(せつえい)…多分二人で来られても勝てました。

李忠VS梁山泊タイガース
・挿翅虎(そうしこ)
…双頭山頭領。一撃で負けた。
・錦毛虎(きんもうこ)…清風山頭領。あっさり負けた。
・矮脚虎(わいきゃくこ)…清風山サブ。体格で有利でも引き分け。
・跳澗虎(ちょうかんこ)…少華山サブ。ころっと負けた。
・花項虎(かこうこ)…張清組サブ。善戦したが負けた。
・中箭虎(ちゅうせんこ)…張清組サブ。善戦したが負けた。
・病大虫(びょうだいちゅう)…薬屋さん。ご覧の有様。
・笑面虎(しょうめんこ)…酒屋さん。武術素人に勝っても…
・青眼虎(せいがんこ)…大工さん。意外に強くて負けた。
・母大虫(ぼだいちゅう)…女将さん。闘う前に土下座した 

工房 

工房…大工さんの工房や鍛冶屋があるところ。あと死ぬほどめんどくさい大砲屋さんも。

人物
・凌振(りょうしん)…大砲。
・湯隆(とうりゅう)…鍛冶屋。鉄のハートをもちたいところだが、仕事が好きすぎるので、クライアントの要望についつい甘くなってしまう。
・李雲(りうん)…大工。じつは武芸の腕に自信があり、入山前は武芸の先生もやっていたことも。

18.
魏定国「もういいだろう、凌振」
凌振「まだこれからだ、魏定国」
魏(こいつに声をかけた俺をぶん殴りたい)
凌「撃つぞ」
魏「待て!人がいる!」

「!!!」

魏「直撃したぞ、凌振」
凌「…」
魏「えらいことに…」
凌「いや、よく見ろ魏定国」
魏「…無傷だと?」

徐寧「今何か当たったような」

魏「大丈夫か、徐寧?」
徐「魏定国か」
凌「…」
魏「今お前に大砲が直撃したのだが…」
徐「今のが噂の大砲が」
魏「なぜ無傷なのだ」
徐「この鎧のおかげさ」
魏「妙に金ピカでうるさいだけの鎧だと思っていたが」
徐「徐家の家宝の賽唐倪という。俺の自慢の鎧さ」
凌「…」

凌「徐寧」
徐「なんだ、凌振」
凌「その鎧は何でできているのだ」
徐「特別な金属だろうな」
凌「欲しい」
徐「は?」
凌「よこせ、徐寧」
徐「家宝だと言っただろう」
凌「知ったことではない」
徐「自分勝手にも程がある」
凌「溶かして、大砲の素材にしたらすごいのが出来そうだ」

魏「馬鹿を言うな、凌振」
凌「裏切る気か、魏定国」
魏「確かに、溶かす気は更々ないが、金属の素材に興味はある」
徐「知らん」
魏「せめて、湯隆と一緒に材質を調べさせてもらえないか?」
徐「だめだ」
魏「お前も中々面倒だな」
凌「いいから貰っていくぞ、徐寧」
徐「野郎」

凌「身ぐるみ剥いでくれる」
徐「武術で俺に勝てると思っているのか」
凌「大砲のためなら命などいくらでもくれてやる」
徐「!」
魏(大砲が関わると、武力が30は上乗せされるんだよな)
徐「くそ、一旦退こう」
凌「逃げても無駄だ」
徐「この時ばかりは鎧の音が疎ましい」

安道全「絶対安静だぞ、呉用殿」
呉用「皆には内緒にしてくれよ」
安「全く、梁山泊一のワーカーホリックに付き合うのも楽じゃない」
呉「…何かうるさくないか?」
安「とてもうるさいな」
呉「頭痛が」

徐「いつまで追いかけるつもりだ」
凌「貴様の鎧を大砲にするまでだ」

安「一体なんの音だ」
徐「助けてくれ」
安「静かにしろ、徐寧」
徐「なら凌振を止めてくれ」
安「凌振?」
凌「」
徐「あの野郎、俺を追いかける途中で死域に入りやがった」
安「追いかけっこするのは勝手だが、とっとと別の場所に行ってくれ」

金大堅「うるさくて仕事にならん」
蕭譲「全くだ」

兵「徐寧殿こないな」
兵「クソやかましい鎧の音はするがな」

凌「」
徐「しまった」
凌「」
徐「死域の凌振は林冲より強い」
凌「」
徐「どこに連れていく気だ」
魏「せめて湯隆と素材を調べるのはやらせてもらえないか?」
徐「やむなしか」

湯隆「見事な鎧だ」
凌「早く溶かして大砲にするぞ」
徐「もしもやったら、俺も死域に入ってお前を溶鉱炉に叩き落とすからな」
湯「見たことない金属だ」
魏「お前にしてそうなのか」
湯「これは量産化できんな」
徐「量産化などさせるものか」
魏「面倒な奴だな、お前も」
凌「俺に着せろ、徐寧」

徐「なぜだ、凌振」
凌「大砲の直撃を受けても無傷な鎧ではないか」
徐「まあそうだが」
凌「俺も大砲の弾を受けて、衝撃を確かめたい」
徐「正気か?」
魏「そういう奴なんだ」
凌「着せろ、徐寧」
徐「断る」
凌「」
徐「また死域に」
魏「すまんが観念してくれ、徐寧」
湯「よそでやれ、お前ら」

・凌振(りょうしん)…着てみたものの、お腹がつっかえて腹回りを歪ませてしまった。
・徐寧(じょねい)…結局湯隆に補修してもらったが、細かすぎる注文に辟易された。

・魏定国(ぎていこく)…なんでも貫く弾が出来たら、矛盾ならぬ弾鎧って言葉が出来そうだ。
・湯隆(とうりゅう)…鍛冶屋出禁にしたいやつランキング1位が二人になった。

・呉用(ごよう)…騒音が酷すぎたから、賽唐貎着用可能区域を設けないといかんな。
・安道全(あんどうぜん)…養生所周りの着用は絶対禁止だ。

・蕭譲(しょうじょう)…妙に耳障りな音なんだよな、金大堅。
・金大堅(きんだいけん)…金属同士の擦れる音がノイズになってるのかもしれんな。 

顧大嫂のお店 

顧大嫂のお店…連日野郎どもで超満員のお店。名物は焼饅頭。

人物
・顧大嫂(こだいそう)…キッチン担当。たとえ店に何人いようとも、5分以内に必ずお出しするよ!
・孫新(そんしん)…ホール担当。銭勘定と席決めはお手の物。

19.
薛永「今度は顧大嫂殿の店に呼び出された…」

顧大嫂「待ってたよ、薛永」
孫二娘「そんなにビクビクしなくても、余程のことをしない限り食いやしないって」
薛(怖い)
顧「今日の依頼はね」
薛「だからなぜ扉を閉めて、鍵をするのですか」
孫「情報漏洩を防ぐためさ」

顧「自白剤を作ることはできるかい?」
薛「…何に使うのですか?」
孫「それを聞いてるんじゃない、薛永」
薛「ひぃ」
孫「出来るか出来ないかを聞いてるんだ」
薛「…出来ますけど」
顧「ならさっさと作り方を教えておくれよ」
孫「誰かにチクったって、あんたに飲ませりゃ一発だからね」
薛「勘弁」

薛「出来ました…」
顧「ありがとう、薛永!」
孫「セクハラ爺の茶に混ぜて、会議で大恥かかせてやる」
薛「用法用量は…」
孫「だから風邪薬じゃないって」
薛「一滴で充分です」
顧「え!?」
薛「それ以上いれたら、記憶の全てを自白しちゃいます」
孫「いいこと聞いたよ」
薛(薬師の良心が…)

・薛永(せつえい)…済州の年老いた役人一人が失踪したニュースを聞いた。

・顧大嫂(こだいそう)…孫新は私に首ったけだから使う気無いけど、義姉さんには使えるかもねえ。
・孫二娘(そんじじょう)…厠の用具入れから救出された上司が、今度は煙草休憩から帰ってこない。 

侯健の仕立て屋さん 

侯健の仕立て屋さん…店主しかいないのに、なぜか誰かに見られてる気がする不思議な仕立て屋さん。

人物
・侯健(こうけん)…あだ名は通臂猿(つうひえん)。テナガザルのこと。どんだけ長いんだよ。
・侯真(こうしん)…後ろの正面だあれ?

20.
侯健「真の修行の成果?」
時遷「あいつは俺を凌駕する泥棒になる」
健「そんなに盗みが上手いのか?」
時「まだ幼いが、致死軍でも十分通用するものを身につけている」
健「そんなバカな」
時「将来が楽しみだ」
侯真「父上」
健「いつの間に背後に!」
時「修行の成果を見せろ、侯真」
真「はい!」

真「これから関節を外して父上の裁縫箱に入ります」
健「…」
真「!」
健(すごい音がした)
真「!」
健(人体ってこんなに可能性があるものなのか)
真「入ります!」
健「…」
真「蓋を閉めてください」
健「…」
時「これで仕立ての出先でも侯真を持ち運べるだろ?」
健「普通に歩かせてはだめか?」

・侯健(こうけん)…よもや裁縫箱に人が入っているなどとは誰も思わんだろうな。
・時遷(じせん)…若い頃は軟体芸で鳴らしていて、全盛期は婦人の手提げ袋に入れた。
・侯真(こうしん)…近隣の子供達総出で探しても、かくれんぼで見つかったことは一度もない。 

女傑三人衆 

女傑三人衆…彼女たちの予約が入るや否や、飲食店は緊急対策会議をひらくという。

人物
・扈三娘(こさんじょう)…孫二娘殿の顔が恐いせいではないですか?
・顧大嫂(こだいそう)…あんたの顔に似合わない剣が物騒なのさ、扈三娘。
・孫二娘(そんじじょう)…顧大嫂の食う量が多すぎるんだよ。

21.
扈三娘「梁山泊の面々で、ある法則を発見しました」
顧大嫂「それは?」
扈「地位が上な方ほど間抜けな法則です」
孫二娘「分かる!」
顧「宋江殿は間抜けが息して歩いてるような人だもんね」
孫「呉用も智慧者の割に間抜けだね」
扈「帯の表裏が逆でも平然としてますもんね」
顧「間抜け者の法則か」

孫「軍人連中は、もっとそうだろうね」
扈「この話はいくらでもできますよ」
顧「あんたの隊長は言わずもがなだ」
孫「関勝もガキのままおっさんになっちまったね」
扈「呼延灼殿も、伝達事項の日時をよく間違えます」
顧「秦明は店に来た時惚気っぱなしだった」
扈「董平殿も小賢しい間抜けですね」

顧「間抜けじゃない奴は誰だい」
扈「まずは索超殿です」
顧「裴宣は?」
孫「旦那は仕事じゃ一分の隙もないけど」
扈「はい」
孫「家に帰った途端の落差が凄いよ」
顧「男はみんな間抜けだねえ」
扈「!」
孫「どうした扈三娘」
扈「財布を忘れました」
顧「あたしも!」
孫「…」
顧「あんたもか…」

・扈三娘(こさんじょう)…申し訳ありませんが、ツケといていただけますか?良いですよね?ね?
・顧大嫂(こだいそう)…腕を組んで仁王立ちするだけで、並の男は平伏する。
・孫二娘(そんじじょう)…店主の弱味を探しておくよ。

22.
扈三娘「間抜け者の法則の話をしましたが」
顧大嫂「したね」
扈「間抜けでない方が、組織にいてくださらないと困るのですけれども」
孫二娘「その通りだ」
扈「間抜け者の方々に比べると、どこか器の大きさに欠ける気がしませんか?」
顧「それはあるね」
孫「副官止まりって奴じゃないかい?」

扈「私の場合は林冲殿と索超殿が一番身近なのですが」
顧「両極端な二人だね」
孫「索超がいない頃のあんたはとげとげしかったよ」
扈「索超殿が来てから、騎馬隊に初めて安寧が訪れました」
孫「色々仕組み化してくれたんだね」
顧「私はそういうのてんで駄目だ」
孫「あんたは林冲側だよ、顧大嫂」

扈「しかし、林冲殿と比べると、どこかが見劣りしてしまうのです」
顧「林冲と比較するのは酷だよ、扈三娘」
孫「それぞれ得意な役割ってもんがあるだろう?」
扈「そうですね」
顧「で、あんたは何が得意なんだい、扈三娘?」
扈「…女子力?」
孫「馬麟に飯を取り分けさせる女が何言ってんだい」

・扈三娘(こさんじょう)…だってお食事って、お付きの婆やや女中さんが取り分けるものじゃないんですか?

・顧大嫂(こだいそう)…一度二人で懲らしめてやらないとだめだね、孫二娘。
・孫二娘(そんじじょう)…山賊に育てられた女の恐ろしさをお嬢様に思い知らせてやるよ。 

林冲さん家 

林冲さん家…このバカップルが主役の長編はこちら

人物
・張藍(ちょうらん)
…林冲より強いという時点で、男どもは色々察しなくてはならない。
・林冲(バカ)…張藍に反論するくらいなら、死んだ方がましだ!

23.
史進「…」
陳達「林冲殿の家にピンポンダッシュする罰ゲームなんてよく思いつくよな」
鄒淵「おまけに全裸で」
史「…」
陳「しかもそれをやるのが考案者という、底無しの馬鹿さ加減ときた」
鄒「あの時は俺たち死域に入ってたよな」
史「…!」
陳「腹を据えたらしいぞ」
鄒「結末や、いかに」

張藍「…」
史「!」
陳(こいつは)
鄒(完全に出鼻を挫かれた)
陳(どうする史進)
史「…」
張「…」
陳(両者全く目を逸らさない)
鄒(見応えのある、見事な立ち合いだ)
陳(武術ならな)
史「…」
張「…」
史「…」
陳(史進の気に乱れが)
鄒(張藍殿の気は澄み渡ってきたぞ)

張「史進殿」
史「…」
張「」
史「!!!」
陳(史進が膝をついた!)
鄒(今何を囁いたんだ)
史「」
張「…」
陳(あの史進が…)
鄒(肩を震わせて泣いている…)
史「」
張「…」
陳(家に招かれた)
鄒(天女様のような神々しさだったな)
陳(きっと中で優しく諭されるに違いないな)

林冲「よう」
史「」

・張藍(ちょうらん)…私が史進に何を囁いたかですって?本当に知りたいので?
・林冲(りんちゅう)…あいつには地獄すら生ぬるい。

・史進(ししん)…一ヶ月、一言も口を利けなかったという。
・陳達(ちんたつ)
…張藍の話をするたびに史進の顔が引き攣るのが気になる。
・鄒淵(すうえん)…素敵な家庭なんだろうなぁ。林冲殿の家は。 

柴進屋敷 

柴進屋敷…やたらデカくてやたら広くてきれいな庭がある。治外法権の特典付きで、綺麗な庭にそぐわない、汚い食客もうじゃうじゃいる。

人物
・柴進(さいしん)…セレブ。暇つぶしの達人。ストローの袋があれば3時間遊べる。

24.
柴進「盧俊義殿の屋敷がからくり屋敷ならば、私の屋敷も何か仕掛けを施さなければならん」
白勝「はあ」
柴「しかし、ただの落とし穴とか、タライが落ちてくるというありきたりな仕掛けでは面白くないだろう?」
白「住みごこちを損なわなければ何でもいいんじゃねえか?」
柴「なるほど」

柴「住みやすさに特化したからくり屋敷を採用した」
白「ほう」
柴「このレバーを回すと…」
白「…」
柴「卓が回転して、手元に食べたい料理がくる」
白「なら卓ごと回転させちまえばいいんじゃねえか?」
柴「このボタンを連打すると…」
白「…」
柴「水が出てくる」
白「普通に注ぐのはダメか?」

・柴進(さいしん)…便利さの追求とイノベーションには手間が伴うのだ、白勝!
・白勝(はくしょう)…イノベーションを追求しすぎて、普通の良さを見失っちまってら。 

梁山パーク 

梁山パーク…盧俊義の屋敷がテーマパークになった。水滸伝という、どこかで読んだことのある書物を題材にしたテーマパーク。関連書籍を持っていけば記念品がもらえるぞ!

人物
・盧俊義(ろしゅんぎ)
…入口に彼の銅像があるが、どう見ても細身に作られすぎている。
・燕青(えんせい)
…イケメンすぎるキャストとして、レアキャラ扱いされている。
・蔡福(さいふく)
…不愛想なポップコーン売り。
・蔡慶(さいけい)
…愛想のいい綿あめ売り。

25.
蔡福「梁山パークでパレードだと?」
蔡慶「新企画だとさ」
福「サクラの依頼か?」
慶「キャストが足りないから、緊急召集の赤紙が届いた」
福「戦をするのは軍人であって、我らではないはずだが?」
慶「キャストの、依頼だ」
福「盧俊義様の辞書にミスキャストという言葉を載せるぞ、慶」

盧俊義「蔡慶は関勝役だ」
慶「関勝殿?」
福「私は?」
盧「燕青だ」
福「燕青?」
慶「盧俊義様」
盧「何だ」
慶「隣にいるのは?」
燕青「…」
盧「燕青」
燕「…」
福「燕青が演じるのは?」
盧「李逵だ」
燕「…」
慶「兄が、燕青」
燕「…」
慶「燕青が、李逵」
福「何がおかしい、慶?」

福「燕青を演じるならもっと身体を仕上げてきたのだが」
慶「突っ込むポイントが迷子だぞ、兄貴」
福「?」
燕「…」
福「端正で細身な李逵だな、燕青」
燕「燕青役とは大抜擢ではないか、蔡福」
福「燕青を演じるなら、もっと痩せておけば良かったよ、燕青」
慶「…」
福「さっきからどうした、慶?」

・蔡福(さいふく)…急ごしらえの燕青のキャスティングは案の定大ブーイングだった。
・蔡慶(さいけい)…燕青が燕青だといけなかったのか?

・盧俊義(ろしゅんぎ)…燕青の李逵はいまいちだったな。やはり魯智深の方があっていたか。
・燕青(えんせい)…燕青という同姓同名の人物がいるのですが、ただの偶然ですよね? 

代州 

代州…呼延灼の先祖の頃から守っていた土地。韓滔のおかげで、農産物の収穫量は上昇傾向。

人物
・呼延灼(こえんしゃく)…将軍。某関勝ほどノリが良くないので、人気は普通。むしろ関勝のノリが異常なのだ。
・韓滔(かんとう)…耕作が大好きで、嫌味にならないセクハラの名手。
・彭玘(ほうき)…彼の代州酒場放浪記は読みごたえがある。
・程順(ていじゅん)…クソ真面目な呼延灼の副官。

26.
韓滔「のう、呼延灼」
呼延灼「どうした、韓滔」
韓「今日の飯はまだかのう」
呼「どうした、韓滔」
韓(どんな反応かな)
呼「まだ食ってないではないか」
韓(いや、饅頭と野菜をしっかり食べたぞ)
呼「俺も楽しみにしているのだ」
韓(わしがやり返されてるのか?)
呼「腹ペコだ」
韓(そうは思えんの)

韓(間食などと勘違いする量や献立ではなかったぞ)
呼「彭玘」
彭玘「なんだ、呼延灼」
呼「今日の飯はまだか?」
韓(マジっぽいぞ、これは)
彭「…言ってやれ、程順」
程順「…恐れながら、呼延灼将軍」
呼「なんだ、程順」
程「さっき食べたばかりです」
呼「…」

彭「呼延灼」
呼「…」
彭「ボケるには早すぎるぞ」
呼「韓滔」
韓「…」
呼「さっき食ったばかりではないか」
韓「ただのボケのつもりだったのだが」
呼「ボケるには早いぞ、韓滔」
彭「ボケ違いだ、呼延灼」
呼「なに?」
彭「肉と野菜の雑炊を食っただろう」
程「彭玘殿、それは昨日です」
彭「」

・呼延灼(こえんしゃく)…痴呆の将軍ではない!代州地方の将軍だ!
・韓滔(かんとう)…だんだん自分の記憶が心配になってきた。
・彭玘(ほうき)…まぁこの歳まで生きると、昨日のことが今日の事のように思えるのもザラだろ?
・程順(ていじゅん)…彭玘殿。飯を食ったのはたったの半刻(1時間)前です。 

北の大地 

北の大地…梁山泊の遥か北の大地。後に金と呼ばれるが、まだまだまだまだ先のお話。

人物
・阿骨打(あぐだ)…チャラ男なのに、戦もできるし気配りもできるしでメッチャ良いやつ。

・蔡福(さいふく)…流罪にされたのか、俺たちは。
・蔡慶(さいけい)…この辺も意外と面白そうだぜ、兄貴。

27.
阿骨打「おい、蔡福」
蔡福「話しかけるな、チャラ男」
阿「お前の憎まれ口が妙にツボにはまってな」
福「ろくな仕事もせん職人が適当に拵えたツボだな」
阿「wwwww」
福「笑いすぎだ、阿骨打」
阿「笑わずにいられるか」
福「変態か、お前も」
蔡慶「意外な組み合わせだな」
燕青「凸凹コンビだ」

阿「お前の憎まれ口の瞬発力は一体なんなんだ?」
福「まるで俺の贅肉が機動力を損なっているかのような物言いだな」
阿「wwwww」
福「この笑い袋をなんとかしてくれ、慶」
慶「良い友に見えるぜ、兄貴」
福「願い下げだ」

阿「友ではないか」
福「離せ阿骨打」
阿「汗をかいているな、蔡福」
福「俺がこの大地を加湿しているのだ」
阿「wwwww」
福「お前は俺の汗で塩分濃度の測定でもしていろ」
阿「wwwww」
福「もしも携帯食料の塩気が足りなければ任せろ」
阿「お前の汗から精製した塩なんかいらん!」
慶「仲良いな」

・阿骨打(あぐだ)…北の部族、女真族のリーダー。蔡福の真逆を行く闊達な男。

・蔡福(さいふく)…ここまで笑いを取れたら満更でもない…と言うかと思ったか読者ども。
・蔡慶(さいけい)…一体誰に話しかけてるんだ、兄貴?

・燕青(えんせい)…二人の掛け合いを記録しようと思った。 

子午山 

子午山…ならず者更生施設。更生したからと言って、国の役に立つわけではないのがミソ。

人物
・王母(おうぼ)…お年似合わずチャレンジ精神が旺盛で、若者文化に対する理解も広い。
・王進(おうしん)…下手したら王母様よりも、家電製品の扱いは下手くそかもしれない。

28.
鮑旭「私も楽器に挑戦してみたくなった、馬麟」
馬麟「ほう」
鮑「笛はお前がやるから、他の楽器がいいな」
馬「ならば、次に里に行った時楽器屋に行こう」

鮑「こんな所か」
馬「琵琶とかどうだ?」
鮑「ほう」
馬「琴もあるぞ」
鮑「悪くないが、もっと野性味のある楽器がいいかな」
馬「ならば…」

馬「このギターはどうだ?」
鮑「一気にバグらせたな」
馬「李白モデルと杜甫モデルは、流石に無理だが」
鮑「古の詩人はロックを嗜むんだな」
馬「曹操モデルは何とか買える価格だぞ?」
鮑「これなら手持ちの銭で買えそうだ」
馬「短歌行は初心者に優しい曲らしいな」
鮑「まさに歌うべし、か」

鮑「楽譜が全く読めん」
馬「俺もだ」
鮑「お前もか、馬麟」
馬「俺はノリで吹いてる」
鮑「じゃあ私も、ノリで弾いてみるか」
馬「チャレンジャーだな、鮑旭」

鮑「こんな高価な買い物は初めてだ」
馬「俺も協力しよう」

鮑「お前を人肉饅頭にしてやろうか!」
馬(キャラが盗人時代になっちまった)

・鮑旭(ほうきょく)…ギターは今の自分より、盗人時代の自分の方が相性が良かった。
・馬麟(ばりん)…鮑旭とバンドを組む時に備え、荒々しい曲の練習中。

29.
楊令「張平」
張平「はい」
楊「なぜこの卓に4つ置いてあった菓子が3つになっているのだ」
張「楊令殿」
楊「なんだ」
張「つまり、何を仰りたいのですか?」
楊「なんだと?」
張「まさか、確固たる証拠もなく、私が勝手に食べたのだ、と仰りたいのではないですよね?」
楊「それは」

張「そもそも本当に菓子は4つあったのですか?」
楊「あった、はずだ」
張「初めから3つだったという事は?」
楊「それはないだろう」
張「なぜです?」
楊「王母様、王進先生に、お前と私の分で、4つないとおかしいではないか」
張「ならば王母様か王進先生がお先に召し上がった可能性は?」
楊「む」

張「卓の下に落ちている可能性は?」
楊「そんな都合の良いことがある訳…」
張「!」
楊「ないぞ、張平」
張「菓子の数っていくつでしたっけ?」
楊「だから3つに…」
張「4つではないですか」
楊「あれ?」
張「しっかりしてください、楊令殿」
楊「…すまん、張平」
張(本当にしっかりしろよ)

・楊令(ようれい)…疑って悪かったな、張平。
・張平(ちょうへい)
…疑って悪かった、と思わせてしまったことに罪悪感が…

青蓮寺

人物
・袁明(えんめい)
…青蓮寺総帥。SNSを実名で始めてしまい、洪清が大慌てで修正した。
・李富(りふ)…ワーカホリックになる前の記憶が全くない。
・聞煥章(ぶんかんしょう)
…珍しく出番無かったのは、謹慎処分を受けていたから。
・王和(おうわ)…闇の軍指揮官。色々ヤバい。
・呂牛(りょぎゅう)…聞煥章の何か。一緒に謹慎させられてた。

30.
王和「李富殿」
李富「珍しいな、王和」
王「なぜか全く分からないのですが、変態だとよく言われまして」
李「聞こう」
王「致死軍の兵を斬る度に舌舐めずりしてしまったり」
李「…」
王「反吐がでるほど嫌いな奴にほど、甲斐甲斐しく尽くして、殺す時は喜悦で鳥肌が止まらなくなるのです」
李「…」

李「王和」
王「…」
李「…」
王「…」
李「それが普通だ」
王「ですよね!」

蒼英(なにも我々のいるところでやらなくても)
何恭(李富殿もヤバイな)
呉達(軍隊では考えられん)

・李富(りふ)…私も憎かったり面倒な仕事こそ、完璧に仕上げるよう、黄文炳先輩から習ったな。
・王和(おうわ)…闇の軍指揮官。見所のある部下と子供がいるんです。高廉と羌肆って奴なんですが。

・蒼英(そうえい)…我々はきっと平凡なのだな。
・何恭(かきょう)…李富とは同期だったはずなのに、いつのまにか李富殿になってしまった。
・呉達(ごたつ)…やっぱり軍人の方が向いていたかもな…

31.
蒼英「今日二人に集まってもらったのは訳があります」
何恭「誰だこいつらって声が聞こえてきました」
呉達「無理もない」
蒼「宋国での恐ろしい法則を発見してしまったのです」
何「それは?」
蒼「言うのも憚られるのですが」
呉「早く言え」
蒼「変態でないと出世が出来ない法則です」
何・呉「!」

呉「我々だって幹部の一員ではないか」
蒼「呉達殿は、李富殿と聞煥章に追い抜かれた現状に満足しておいでで?」
呉「それは」
何「私たちが頭打ちしてしまったのは否めないと思う」
蒼「しかしそれをクリア出来たとしても、大きな壁が我らを遮るのです」
呉「…変態であるか、否かか」
蒼「まさしく」

呉「あの事件以来、青蓮寺に住み始めた李富」
蒼「仕事変態と化しました」
何「ろくな噂を聞かない聞煥章」
蒼「彼の使ってる情報屋も、極め付けの変態だそうです」
呉「我々はそこまで行かないと、これ以上を望めないのか」
蒼「それは高みなのか」
何「変態への下り坂なのか」
呉「…飲もう二人共」

・蒼英(そうえい)…青蓮寺禁軍担当。聞煥章が各幹部の業務の抱え込みをやめる大鉈を振るったため、仕事は減ったが存在感がめっきり薄くなった。
・何恭(かきょう)…民政担当。李富と比較されがちだが、労働時間が常軌を逸している奴に比べられても…
・呉達(ごたつ)…地方軍担当。軍人から事務方に移ったが、もうちょっとデジタルツールを使いこなしてほしい。 

北京軍 

北京軍…地方軍で一番強い軍なのだが、軍規が緩く、チャラ男だらけの軍隊でもある。

人物
・唐昇(とうしょう)…トップではないがそこそこの将軍。彼の能力から何から、全てがそこそこ。
・董万(とうまん)…座右の銘は、いのちをだいじに。もっぱら自分の。

32.
唐昇「お前の髪型はいつもパンクだな、董万」
董万「かっこいいでしょう、唐昇殿」
唐「軍隊なら問答無用で頭頂を晒されるほど刈られるぞ」
董「ここは北京ですから」
唐「まぁ好きにすればいいと思うが」
董「そういう唐昇殿だって」
唐「…」
董「装飾品多すぎませんか?」
唐「ここは北京だからな」

唐「その髪型のために、どれだけの整髪料を使っているのだ?」
董「一日一缶はざらです」
唐「いつかハゲるぞ」
董「北京軍で戦の犠牲が一番少ないこの俺が、髪の毛を犠牲にするとお思いで?」
唐「過ぎたるは及ばざるが如しというではないか」
董「犠牲もハゲも少ないに越したことはありません」

董「…」
唐「どうした、董万」
董「兜が脱げなくて…」
唐「まさか、髪の毛が糊代になっているのではあるまいな」
董「ベタつくのは否めませんが、よもや脱げなくなるとは…」
唐「力を貸そう」
董「…」
唐「それ!」
董「!」
唐「…兜の裏がパンクになったということは?」
董「自裁します」

・董万(とうまん)…以後毛髪が頭を覆うことは無くなり、頭巾を目深にかぶり続けることとなった。髪の話題はご法度。

・唐昇(とうしょう)…装飾品をつけ過ぎて金属アレルギーになった。銭を持つのも大変だとか。 

禁軍 

禁軍…会話するたびに調練ってつけるのやめない?

人物
・童貫(どうかん)…禁軍元帥。公共のマナーを守る調練も、軍の調練と同じくらい厳しい。
・鄷美(ほうび)…副官。禁軍の発刊紙ではトレンド調練コーナーの連載を担当している。
・畢勝(ひつしょう)…副官。語尾が調練になりかけた時はさすがに焦った。

・趙安(ちょうあん)…フレッシュ!飽きたとか言うな!
・公順(こうじゅん)…フレッシュマンサポーター。
・何信(かしん)…フレッシュマン親衛隊名誉隊長。

33.
公順「趙安殿」
趙「どうした、公順」
公「我々もそろそろ新しい方向性を模索すべきではないでしょうか?」
何信「何を言っている、公順」
趙「いや、何信。公順の言っていることはもっともだ」
何「それは?」
趙「新しいことに挑戦し続けてこそ、フレッシュマンは鮮度を保てるのだ」

公(それがどうしてこうも胡散臭い自己啓発セミナーへの参加になってしまうのだ)
王黼「よく来ました、あなた方。臭っ」
公(またこいつか)
王「本当の自分に出会いたくて来たのですね」
趙「そうだ」
何「我々の真の姿を教えてくれ」
王「ならばまずは、ありのままの自分になることから始めましょう」

公(なぜ私たちは服を脱いで合掌させられているんだ)
王「…」
公(なんで商売できんだ、こいつは)
趙「見えた!」
王「何が見えましたか?」
趙「首に命に関わる傷を負う自分の姿が!」
王「?」
何「見えた!」
王「あんたも?」
何「これからはロープーウェイに気をつけます」
王「何言うてんねん」

・趙安(ちょうあん)…フレッシュマンの活動と軍人の二足の草鞋。ファンの数はすっかり頭打ち。
・公順(こうじゅん)…友達とご飯を食べた時、良い香りのする食べ物から匂いを感じ取れなくなっていた。
・何信(かしん)…虎にも用心します。

・王黼(おうほ)…不意に来た青蓮寺のガサ入れにも全く動じず撃退することに成功。只者ではないようだ。

34.
李明「将校が兵と接するマナーの調練など聞いたことがない」
韓天麟「このご時世、ハラスメントには誰もが敏感だからな」
李(ならば、日頃の厳しすぎる調練の方を見直すべきでは)
馬万里「一体どんな講師が来るんだ?」
陳翥「元帥肝いりの人材らしい」
段鵬挙「会うのが楽しみなような怖いような」

王黼「グッドモーニング!エブリワン!怖っ」
李「!?」
馬(なんだこの金髪は)
陳(こいつが元帥肝いりの人材?)
王「マイネイムイズ、王黼」
段(何言ってやがる)
韓「マナー講師の方で?」
王「まーなー」
李「殺しましょう、皆さん」
陳「そのロン毛を毟って屋外に晒してやろう」
王「ウェイト!」

許貫忠「すまぬ。教室を間違えていた」
王「オウ!ユーアーティーチャー」
許「!?」
王「シーユー」
許「…何者ですか?」
李「元帥肝いりのマナー講師かと…」
許「それは私のことだが…」
陳「ならば何者だ、あいつは?」

王「ソーリー、フレッシュマンズ!」
趙安「お待ちしておりました、先生」
公順(…)

・李明(りめい)…言葉遣いに難あり。
・韓天麟(かんてんりん)…叱る時は感情的にならぬように。
・馬万里(ばばんり)…歯磨きをきちんと。
・陳翥(ちんしょ)…もっと指示語を交えて説明して。
・段鵬挙(だんほうきょ)…語尾をきちんと言い切って。

・許貫忠(きょかんちゅう)…異臭を放つ謎の集団に圧倒されていた。

・王黼(おうほ)…英会話講師やらマナー講師やら、講師の名のつくものの肩書きを軒並み持っているが、何を教えられるんだよお前は。

・趙安(ちょうあん)…王黼の胡散臭さが一周回って面白くなってきた。
・公順(こうじゅん)…絶対にコンサル契約なんてさせませんからね。

35.
童貫「三ヶ月に及ぶ調練を終えた」
鄷美(何度死ぬかと思ったことか)
畢勝(長期調練手当は出るよな)
童「さすがにこの私も、軍の調練以外の調練をしたくなった」
鄷「はい」
童「そこで暫く、調練をやらない調練をしようと思うのだが」
畢「はい」
童「調練をやらない調練とはどんな調練だろうか?」

鄷「…」
畢「…」
童「鄷美」
鄷「元帥の、やりたくてもやれなかった事をする調練はいかがでしょうか?」
童「すると、この調練をもう三ヶ月延長することになるが?」
鄷「!」
童「畢勝」
畢「元帥ご自身で出来る調練をやられるのはいかがでしょうか?」
童「なるほど。私一人で出来る調練か…」

畢「身体を鍛え続けてきたので、書物を読む等、頭を鍛える調練をするというのは」
童「一理ある」
鄷「恐れながら、元帥」
童「…」
鄷「何もしないをする調練はいかがでしょうか?」
童「なるほど」
鄷「…」
童「鄷美」
鄷「はい」
童「その調練は、呼吸もしないのか?」
鄷「呼吸はありです、元帥」

・童貫(どうかん)…結果、食事もしなかったので、周囲が驚くほど痩せて帰ってきた。
・鄷美(ほうび)…そういえば、休日って何をする日なんだっけな?
・畢勝(ひつしょう)…長期調練手当はなぜか満額出なかった。

元ネタ!

twitterにて連載中!

いつか本にできたらいいな。

ご意見ご感想(クレーム)、リクエスト等、こちらまで!

今月号も長々とお読みいただきありがとうございました!

参加される皆さんの好きを表現し、解き放つ、「プレゼンサークル」を主宰しています! https://note.com/hakkeyoi1600/circle ご興味のある方はお気軽にどうぞ!