意図しない助かり

今日は良い天気だ。と、
さっきまでそう思っていた。

頭上を通りすぎていくカラスが、
「雨が降るぞ!雨が降るぞ!」というように、
あわてた様子で鳴きながら飛んでいた。

なんだ、そうか。雨なのか。
洗濯物を干したままだったから、
家に向かって、ちょっと急ぎ足になった。

「教えてくれてありがとう。」とカラスに言う。
「あんたにじゃなくて、カラスの仲間に鳴いたつもりなんだけどな。」
「どんなつもりでもいいよ。助かったことには変わりない。」

…お礼を全部言い終わる前に、
カラスは、森の方へ飛んでいってしまった。

ベランダに出て、洗濯物を取り込むころには、
急に空が曇ってきて、今にも一気に降るぞという感じだった。
間に合ってよかった。あのカラスのおかげだ。

夕方、雷の音で目が覚めた。
さっき帰ってくる時に走ったものだから、
疲れて眠ってしまったのだろう。

「起こしてくれてありがとう。」と雷に言う。
「あんたを起こすつもりで鳴ったんじゃないんだけどな。」
「どんなつもりでもいいよ。助かったことには変わりない。」

…お礼を全部言い終わる前に、
雷は、光も音もすっかり消えてしまった。

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