スマホショップ常連客

スマホが壊れた。
うっかり落とした先に小石があって、
そこへ画面のほうからぶつかったものだから、
それはもう派手に、思いっきり割れた。

前にも一度壊したけど、
その時はヒビが1本入ったくらいだった。
どうせ壊すんなら、このくらい派手なほうがいい。
そう、このくらいのほうが一周まわって良い気分だ。

…そう思い込むことにして、現実から目を逸らした。
で、翌日にはスマホショップに持っていった。

番号札を片手に座って待っていると、
2人連れの客が入ってきた。
夫婦だろうか。

「ああ、いつものやつですね。」
と、店員が言うのだから、常連なのだろう。
…スマホで「いつものやつ」って言うことあるんだ。
そして、どういうわけか、その2人のほうが先に呼ばれた。

どうも、新しいスマホに買い換えるらしい。
それも毎年、決まって同じ日に買いに来るのだという。
お互いに忙しくて、こうして会うのも年に一度で、
あとは電話かメールでやり取りしているそうだ。

そんな雑談交じりに、料金やら何やらの契約をしている。
そうして聞き耳を立てているうちに、自分の番号が呼ばれた。
ヒマを潰そうにもスマホが壊れてたところだし、
退屈が紛れてよかったかもしれない。

ちょうど店を出るタイミングで、店の外にさっきの2人が見えた。
2人そろって、空に向かって浮かんでいった。
ショップの店員さんは慣れた様子で、
上に向かって手を振っていた。

その光景と、店先に笹が飾ってあるのを見て、
「そういえば、今日は7月7日だったか。」
そう思い出して、帰り道でそうめんを買うことに決めた。

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