見出し画像

詩)ピアノ・コンプレクス

昼がハンバーガーだったので腹が減った

時間は4時 半端な時間だが

味噌ラーメンを食べに中華屋へ向かった

最終的に出てきたのは回鍋肉だった

注文の直前に氣が変わったのだった


陽が傾き店内に西日が差し込むと

カウンターの椅子の影が真横に伸びる

別の客のカラになったビールグラスが気になる

こんな時間に飲んでどうすんの?

俺のは肉と飯と卵のスープの栄養補給だぞ!

これは そう ピアノのためだ


アパートに戻れば

中古で買ったデカい電子ピアノが待ち構えている

練習で繰り返すフレーズが眠気を誘う

栄養の摂取は関係がなかった

失敗を刻むシナプスの同じ箇所が執拗に焼かれている

指よ 早く覚えてくれ 先へ進ませてくれ

眠ってしまうと また悔いることになる

知恵を使わないで知恵の輪を解くのは苦痛だろう

喰らい付いているんだ

ピアノに触れていなければ

私はもっと色々と残念なことをしている筈だ

ピアノには少しだけ捧げよう

捧げてもいい命を 捧げられる分だけ

独学を言い訳に自分を許しつつ


完)ピアノ・コンプレクス





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?