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短編フィクション)ピザを頼むなんてトンデモない


ピザ宅配のニコレッタさんは

ひょんなことで賢者の石を手に入れた

彼女はその石を手にした その日のうちに

世界各国でトマト祭りをするという

何の現実感もない夢を見た

明くる日 全世界に齎(もたら)された惨状を

彼女はTVのニュースや通勤途中でも見かけたが

比較的 健全なコンプレクスだけを持つ彼女は

自分のせいだとは気付かない

悪の枢軸たる ときの権力者が事態を収拾しようと

万にひとつの本当の正義の仮面を持ち出したが

仮面をはカビの生えた地下室の宝箱にあったので

誰かが被るまでに随分と時間がかかったらしい


エシュロンに協力を仰ぎ判明した“震源地”

彼女には幾度となく遣いを送るがしかし

一向に彼らの“遣い”は彼女の元にすら辿り着けない

裏社会の名著「スナイパーを雇いなさい」

で有名な名物経営者が用意した最高のフレンドも

急にドイツでソーセージ職人になると言い出した


賢者の石のオマケで付いてきた有能なアクマ

悪意に敏感かつ眠る必要のない獣が

四六時中 彼女を守護しているのだ


結果 彼女にストレスを与えてはいけない

そう判断した ときの権力者(2度目)の差し金で

「宅配ピザを敷地内に投げ入れても配達完了と見做す」

という彼女の得体の知らないチカラに媚に媚びた法律を

議会はゴリ押しで可決しようとしている

しかし 比較的健全なコンプレクスだけを持つ彼女が

そんな法律を嫌うだろうことに

ときの権力者の考えは至らない

「彼女が働いている店にピザを注文すれば?」

そう進言した者は 間も無く射殺された


完)ピザを頼むなんてトンデモない


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