民営化だけが問題ではない。地方分権の歪みがここにも。

水道の民営化により、地域間の格差がいっそう拡大することが懸念されている。いうまでもなく水道は重要な生活のインフラである。その料金にこれだけの格差が生じることがあってよいのか。

そもそも格差は民営化によってもたらされるというより、地方分権がもたらしていることに目を向けるべきではないか。

かつて拙著『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)で指摘したように、水道料金にかぎらず、保育や子どもの医療費補助など、さまざまな分野で大きな地域格差が存在している。しかも、こうした格差はたまたまその地域に住んでいることで生じる「個人の責任によらない格差」である。条件のよい自治体にすめばよいといわれるかもしれないが、家族を含めた生活と深く関わるので移住は容易でない。転職と同じようにはいかないのだ。

だとしたら水道料金を含め、生活のインフラ部分は基礎自治体に任せるのではなく、国が責任を持って管理・運営するか、少なくとも料金・サービスの格差は是正していくべきではないか。

地方分権に反対の声をあげる人は少ないが、分権化はこうした「個人の責任によらない格差」を拡大する、ということはもっと広く認識されるべきだろう。

https://www.fnn.jp/posts/00406941CX

「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。