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最小公倍数のプロダクト戦略(FigJamフォーマット公開)

プロダクト戦略をたてる際に活用できるフレームワークはこの世に無数に存在します。

時代や業種やフェーズやプロダクトの性質に応じて最適なフォーマットが異なるため、どういったフォーマットを選びとって進めていくか迷う人も多いでしょう。

そこで、私がいままで数々の新規事業立ち上げとプロダクトグロースをおこなってきた経験から、プロダクト戦略をたてる際にほとんどの場合で使っているオレオレFigJamフォーマットをご紹介します。

最小の工数で最大の効用をうみだすという意味で「最小公倍数のプロダクト戦略」と題しました。

(本記事は 2023/3/14 に開催されたFigmaの主催イベント「デザイン経営」のセッションでお話したフォーマットを公開する目的で書いたものです)

新規事業創出のためのFigJamフォーマット

スタートアップに限らず新規事業を立ち上げるためには大体の場合「Product Market Fit」を追いかけます。そこまでの道のりを分解してみると、

Customer / Problem Fit「顧客は何の課題を抱えているか?」
Problem / Solution Fit「その課題はどう解決すべきか?」
Solution/Product Fit「解決策としてふさわしいプロダクトになってるか?」

以上の3つのFitを確かめなければいけません。この3つのフェーズにおいて私がほとんどの場合で使っているフォーマットが以下の9つです。

これからひとつずつ軽く紹介します。

ちなみにFigJamである理由は、経営者・企画職・CS・エンジニアまで、すべての職種すべてのプロジェクトメンバーがこのフォーマットにアクセスして作業できる状態にすべきだと考えているからです。(私が企業のプロダクト戦略を支援するときも、これらのフォーマットで私がひとりで作業をするということは絶対にありません)

そういった意味で誰でも使いやすいFigJamというアプリケーションを選んでいます。

1. プロダクトビジョン

1文で、どんな世界を達成したいのかを簡潔に書いてもらうことで、プロジェクトメンバーが何かの意思決定で迷ったときに立ち戻ってくる文章をつくります。

2. ペルソナ

どういう人に一番つかってもらいたいかを定義します。より具体的な方がいいですが、個人的には「好きな食べ物」とか「休日の過ごし方」とかは何の役にも立たない場合が多いので、そこの解像度をあげるよりも「課題とゴールの解像度」を深ぼる方が健全だと考えております。

3. 価値仮説シート

このプロダクトの価値をひとことで表します。
誰が、何をしたくて、どういう課題を抱えていて、このサービスではどういう特徴をもっていることに価値があるのか。なるべく短い文章になるように推敲を重ねることが多いです。

4. プロット

こちらは価値仮説シートと似たフォーマットですが、より具体的な1つのシナリオを「プロット」というかたちで記載するものです。
「Aさんがどういう課題を抱えていたけど、このサービスを使ったことによりこういうことができるようになりました~」というシナリオを文章でかきます。

5. 6up Skeches

つくったプロットをもとに6コママンガをつくります。サービスの規模や体験に必要な時間軸に応じて4コマでも9コマでもなんでもいいと思いますが、あえて絵でかくというところに価値があります。

6. ステークホルダーマップ

少しビジネス寄りなフォーマットとして「ステークホルダーマップ」というのもつくります。サービスを提供するにあたってでてくる登場人物を洗い出し、その関係性もできるだけ可視化しておきます。これによってお金の流れや価値の流れを再確認して抜け漏れをふせぐことが可能です。

7. リーンキャンバス

あまりにも有名ですがリーンキャンバスというビジネスモデルの可視化のためのフォーマットも大体の場合FigJamでつくります。すると多くの人がこの議論に参加しコメントを残していく空気がうまれていくのでおすすめです。

8. ユーザーストーリーマッピング

開発寄りのフォーマットになりますが「ユーザーストーリーマッピング」です。私のオリジナルフォーマットの特徴として、先程つくった「6up Skeches」の1コマ1コマをストーリーとして一番上におき、それをどんどん抽象化していくことで、タスクやファンクションを洗い出していくことが可能となっています。最終的に、サービスを構成する最低限の機能を意味する「MVP(Minimum Viable Product)」にあたるのはどのファンクションだろうかということを、皆で赤線をひきながら共通認識をつくることができます。

9. サービスブループリント × ユーザーストーリーマッピング

このように、サービスデザインのフォーマットであるところの「サービスブループリント」をつくったあとに、その下にユーザーストーリーマッピング的にファンクションを洗い出していくというやり方もよくやります。このフォーマットは私自身他に例をみたことがないので、まさにオレオレフォーマットという体裁をなしておりますが、サービスの流れとファンクション群とMVPの構成要件がひとつにまとまっているため意外と便利なフォーマットだなぁと自負しております。

グロース戦略のためのFigJamフォーマット

おまけ的に、新規事業用だけでなくグロース用のフォーマットも少しだけ。

Product Market Fitに向けて、つまりプロダクトが市場にほしがられる状態を目指して、私達プロダクト開発チームにはグロースが求められます。

グロース戦略をたてる際には、OKRもしくはNorth Star MetricsのようなフォーマットでKPIを設定し進めることが多いでしょう。

10. North Star Metrics

以下は実際にFigJamで作成したNorth Star Metricsの例です。

フォーマットだけをとりだすとこうなります ↓

まず「ビジョン」「ユーザー体験」「事業目標」の3つを一番最上のものとして、この3つをバランスよく達成する「North Star Metrics」を設定。

その下に、KPIを洗い出しやすいよういくつかの分類(この例だとBreath, Depth, Frequency, Efficiency)をした上で「大KPI」「中KPI」アイディエーションが必要であればそれに紐づく「施策」という感じでツリー状にしていきます。

このツリーもひとりで私がつくるのではなく、プロジェクトメンバーのできるだけ多くの人と共に、KPIとなりそうな数を洗い出して構造化していきます。

そうすることで、自分がやっていることがこのプロダクトにおいてどう貢献しているのか、より貢献するためにはどこのKPIに集中すればいいのかということを考え始め、プロダクトへの当事者意識が強化される傾向にあります。

ただしこの黄色の付箋であるところの North Star Metrics 自体はある程度トップダウンで決めないとグダグダになるので、ここだけは少人数ではじめに決めておくとよさそうです。

11. 中長期プロダクト戦略表

完全オリジナルフォーマットです。

プロダクトビジョンを一番上におき、それを実現するために3~5年のうちで1年ごとに戦略を設計していきます。

上部は「時価総額」「主要な数値(たとえばGMV)」「目的」「目標」「フォーカス」などを記載します。

そして下部には、

上部で設定したその年の「目標」を達成するために必要な「機能」や「体験」をブレストをしていき、構造化します。

ここで出されたものは厳密にバックログにいれていく場合もあれば、大きな方向性として各チームに渡し細かいことはチーム判断にまかせるという場合もあります。

このフォーマットは経営陣と共に策定することが多いため、ツールとしてのラーニングコストが低いFigJamを採用しています。


以上の11個が、私がプロダクト戦略という観点でよく使っているFigJamフォーマットでした。

どれかしらが参考になりましたら幸いです。
皆さんもFigJamでオープンにプロダクト戦略しましょう!

Figma Communityにも公開しました↓

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