見出し画像

【詩】鼻は銃

巨大な象の沈んだ目は
遥か遠くの一点をじっと見つめている
垂れ下がっていた長い鼻が
ゆっくりとひとりでに持ち上がり
ついには地面と水平になり静止する

先まで皺の刻み込まれた
長く真っ直ぐに伸びる鼻は
どこまでも撃ち通す銃
根元を膨らまし狙いを定め
目には見えない弾丸を放つ

発射された透明な弾丸は
知覚できない猛烈な速さで
空気を裂いて一直線に飛んでいき
買い物帰りのあなたの頭に
深く確実に突き刺さる

不意に撃たれたあなたの頭の
気づけ得ない意識が開かれる
あなたは買い物袋も自分の荷物も
すべてをそこらに投げ出して
すぐに象の元へ走り始める


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?