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【3】迷求空間〜フラット・シティ ー 離散空間都市のイメージ

1979年に建築学会賞を受賞した2つの住宅がある。宮脇檀の松川ボックス(1971年)と安藤忠雄の住吉の長屋(1976年)である。どちらも70年代の高度経済成長期を代表する作品である。極度な密集市街地化や公害問題が顕在化していく時代の中で、それぞれ「プライマリティ・アーキテクチャ論」と「都市ゲリラ住居」という二つの論考を発表している。「乱雑な街の混乱を受け止めるのに十分な強さを持つ」「外部環境への<嫌悪>、<拒絶>の意思表示、内部空間の充実化」と、それぞれ鉄筋コンクリートで覆われた表現で市街地の劣悪な環境に対する明確な拒否を表明している。

出生率の低下が話題だが、実際には1940年代前半のベビーブーム以降の出生率は低下し続けていた。集団就職などの要因から都市部の人口は伸びていても日本全体の人口は減り続けることが当時から予測されていた。2060年の人口は約8.7万人とされ、現在の1.3億人から大きく人口が減少すると予測されている。※2 空き地や空家の除却、他の用途への有効活用が進まなければ、3戸に1戸が空き家という予測もある。※3 国土交通省の国土審議会での中間報告に先立っての報告では、2050年には人が住む地域の2割弱に人が住まなくなり、国土の3割は人口が半分以下になると予測されている。国土計画ではこれまで30万人をひとまとまりを生活圏と考えてきたが、長期展望では、デジタル化により10万人圏とし、国土の70%までカバーできると国交相は試算している。※4

感染拡大によりオフィスの需要が低下し、すでに郊外に人口が流失し始めている。※5 暮しの多様化により、これまで二極化していた人口密集率は平均化されることも考えられる。密集していた市街地は分散し、地価は低下し、容積の小さな建築が求められ、その結果として市街地、郊外、既存集落にフラットな街並みが広がるかもしれない。建物同士の離隔は大きくなり、風通しの良い空間に日光の差し込む、それぞれに独立した空間が確保できるようになる。空いた土地は緑地公園やレクリエーション、インキュベーション施設などの立地も考えられる。時代に合った立地適正化が進めば、現在の市街地や郊外に農地などの確保も可能になるかもしれない。

※2国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月)
※3野村総合研究所New Release(2015年6月22日)
※4日本経済新聞「新たな「国土計画検討開始」10万人が生活圏の基準に(2021年9月5日)
※5総務省が発表した2021年の東京の人口動態では、男性が「転出超過」する一方で、女性は「転入超過」のままである。女性就労者が活躍できる産業が少ないことや全時代的な偏見が課題とされている。

Illustration by Genta Inoue


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