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【序章】 迷求空間〜偶然の出会いを誘発する複雑で多様な理想の場

Covid-19の感染拡大禍と現在の状況を捉えようとする様々な論考を通して整理し、理想とするこれからの空間を描く際に「迷求空間」という言葉を思いついた。

感染拡大禍において極度に密集した中心業務地区の空洞化や職住近接を強いられる住空間を課題の中心として議論しがちである。有効に機能しづらくなった過密都市の価値を振り返りながら、情報インフラネットワークが整備された現代においては物理的な都市構造だけではなく、スケールを広げて「都市的な状態とは何か」を捉える必要があり、その上で物理的で生々しい建築を構想しなければならない。

特に就労空間においては、知識産業時代に重要とされる現実空間での『多様な知との「素敵な偶然の出会い(セレンディピティ)」』、ITの発達によるネット空間の拡大、この両方が連続する現代において新しい空間を的確に表現する言葉が「迷求空間」である。「迷求」とは発音のまま「迷宮」のことであり、「迷」は多様な知との出会いを「求」める様を示している。

近代に拡大した職住分離のゾーニングから、”新しい生活様式”の中で復権しつつある職住近接の生活、そして、新たなスタンダードになり得る”中間のような場所”など、複雑ながらもバランスの取れた多様な選択肢が現代では求められる。

”経済的にも、文化的にも、労働と生活が共存する自立生活圏”をさらに発展させ、建築という物理空間に広がる「迷求空間」を「迷求空間〜偶然の出会いを誘発する複雑で多様な理想の場 ー The creation of a complex, diverse, and ideal place for serendipity.」と題して数回に分けて段階を踏みながら具体的に描きたいと考えている。

大きな構成は2つに分かれており、1つはwith Covid-19、after Covid-19の社会と都市像を様々な事実や論考を元に整理し、最後に「迷求空間」の具体的な空間像について描き記したい。

現在と展望
1.感染拡大 with Covid-19
2.知識産業時代の都市像
3.フラット・シティ ー 離散空間都市のイメージ
4.フラット・シティとランドスケープ・アーバニズム
5.地方都市のあるべき姿 ー 多様性と寛容性、その実現のための空間

迷求空間
1.名前のある空間の終焉
2.地方都市の空間
3.サイトスペシフィックによる創造性の喚起
4.行き止まりのない迷求性
※連載予定のタイトル及び記事内容は変更の可能性があります。
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Illustration by Genta Inoue


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