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「心」は「王様」「指揮者」「こころのより処」「自分らしさを生む」【新訳五臓六腑解説③】

東洋医学が考える「五臓六腑」を、私、独自の解釈を含めてまとめた【新訳五臓六腑解説】の三回目です。

今回は「心」の解説です。

「心」は「王様」であり「指揮者」

西洋医学的には、心臓はポンプのような働きがあって、血液を全身に行き渡らせるイメージがあるかと思うのですが、東洋医学の「心」のとらえ方は、単純な血を巡らす働きだけではないんです。

五臓六腑の中で、最も大切なのが「心」

よく「君主」に例えられ、全てをまとめる「王様」みたいな役割が心にはあると考えているんです。

人間って、卵子と精子が受精して、細胞分裂をしながら各臓器がつくられるのですが、心臓がない時期や、肺や、腎臓だってない時から、私たちはしっかりと生きていたんです。

同じからだですが、実は別々に誕生し、別々の働き、別々のリズムでからだは生まれるのです。

バラバラに生まれたからだを、まるで「指揮者」のように統括するのが、この心臓の役割。

まさに、すべてをまとめあげる王様!

心は「こころ」に密接に関わる

心は、精神活動や、意識に関わっていて、ストレスにさらされた時、こころの波がたって、グラグラと揺れないようにするには、心がしっかりしている必要があるのです。

心がバランスを崩しているイメージは、普段だったら気にも止めないようなところで引っかかってしまったり、悩まなくてもいいことだとわかっていて悩んでしまったり、自分でも訳がわからないくらい、こころが揺れてしまう感じ。

「肝」もストレスを受けると弱まってしまう臓器なのですが、肝がストレスを受けている時って、イライラしたり、怒らなくてもいいことまで怒ってしまう感じ。

心は、もっとグラグラしてしまって、とことんまで落ち込んだり、気分の起伏が激しくなったりしやすいんです。

こころの変化が、ジェットコースターのように世話しない感じ…笑ってたと思ったら、次の瞬間に泣きたくなるような…

ちょっとのことでも、ノーガードでこころに傷を負いやすい状態が、心が疲れている状態。

同じストレスを受けた場合でも、反応する臓器によって、症状の出方も変わるんです。

こころがグラグラして落ち着かない場合、こころのより処である、心が疲れてしまっているんです。

「血」と「脈」を主る

西洋医学と同様、血の循環に作用していると、東洋医学でも考えているのですが、東洋医学では「血」と「脈」をふたつ合わせて、「血脈」と表現されていることが多いんです。

血の生成に関して、「脾」の解説で、血も気も脾の働きで作られるよ、って書いたのですが(「脾」の解説はこちらから)、ちょっと詳しく書くと、脾が生成した血の素に、心の温かい気が混じると赤い血ができるイメージ。

血が、赤くなるために、心の作用が必要だと。

お母さんが赤ちゃんにあげる母乳は、母乳はそもそも血液からできるので、脾でできた血液の素が、そのまま母乳になる感じ。その素に、心の気が合体すると赤い血になりますよ、ってイメージでしょうか。

なんとなくわかりましたか?

「脈」はリズムの源

「脈」はリズムみたいなもの。体内リズムでしょうか。

普段、自分のここちが佳いリズムで、心臓は脈を打っているのですが、心が疲れてしまうと、脈が普段のリズムから外れて「あれ、いつもと違うぞ…そわそわするぞ」ってなるんです。

「あれ、いつもと違うぞ」と感じている時、指揮者である心がかなりくたびれている時があるんです…

ちなみに、このリズムを取り戻すのに、自分が心地よいと感じるペースで散歩をしたりするのがいいです。

できれば、自分が好きな音楽を聞きながら歩くと、自分のリズムを取り戻しやすいですよ。自分が好きな音楽は、自分の体内リズムと呼応しているので。

こころがグラグラしているとき、運動しようと思って、心臓がバクバクするくらい歩くのは逆効果。

元気な時はまだしも、こころが揺れ動いている時ほど、自分のペースで歩くことが大切。

家族やワンちゃんのペースで歩くのではなく、自分のペースで歩き、自分のリズムを取り戻すことが大切です。

心は「指揮者」

心は、全体をまとめ上げる指揮者のような大切な存在なので、心が疲れてしまうと、全体がガタガタっと崩れてしまうんです…

息も苦しいし、胃腸の調子も悪いし、便通も異常だし、からだが冷えるし…と、心が崩れると、全身の不調が出やすいんです。

私が初診の方の問診を取る前に、全身の状態を知るために細かい予診票を書いてもらうのですが、関節の痛みやら、睡眠障害やら、とにかくたくさん○がつく方は、どこの臓器に症状があるというよりも、「心」の状態がどうなのかをみなくてはいけないんです。

指揮者が不在になると、とにかくいろいろな症状が出てしまう…

心の働きって、本当に大切なんです!

「舌」と関わりが深い

東洋医学の本を読むと、「心は舌に開竅する」と、なんやら難しいことが書いてあることが多いのですが、舌を見ると、心の状態がわかりますよって書いてあるんです。

…どういうことかと言うと、東洋医学の診断の分野の中に「舌診(ぜっしん)」という、舌を診るだけで全身の状態を診察する方法論があるのですが、古来から、舌は心と繋がっていて、舌の形や、色に「心」の状態は特にあらわれやすいと考えていたのです。

心がくたびれてくると、舌を鏡で見たとき、どす黒くなっていたり、光沢がなかったり、顕著に心の不調感があらわれるんです。

鍼やお灸の前後に、舌の色や形を診ることが私は多いのですが、舌の色や形って、施術前後で本当に大きく変わるんです!

日頃から、歯を磨く前に鏡で舌を見る癖をつけておくと、普段の色がちゃんとわかるようになり、鏡で確認しただけで、自分のこころの状態を把握しやくなるんです。

健康な舌ってどんな舌なのかわかりずらいかも知れませんが、赤ちゃんの舌が、正常な舌を知る上での大きな指標になるんです。

なので、近くに赤ちゃんがいたら、自分の舌と比べてみるといいです。

舌を見る際、特に大切なのは「いきいきした色や、形であるかどうか」なのですが、自分の舌を見続けているとわかってくることが多いので、是非日々観察する癖をつけてください。

余談かも知れませんが、舌って、受精した後の細胞分裂の課程で舌が形成されるとき、手や足と同じ発生でできてくるのです。

なので、緊張して、手や足にグッと力が入り続けていると、舌の先で歯の裏側を押すので、舌の先が赤くなったり、舌先に口内炎ができたりするんです。

こころが不安定になると、舌先が荒れて赤くなったり、痛くなったり、痺れたりすると覚えておいてください。

睡眠に関わる

心は、睡眠とも関わりが深いです。

夜中にうなされる場合、心が疲れていて、心に熱がこもり、こもった熱で心の血が干上がるようなイメージなんです。

血が干上がると、長時間寝つづけることができず、途中で起きてしまったりしやすいんです。

「心」と「自分らしさ」

私の個人的な解釈なのですが、心って、「自分らしさ」があらわれる臓器に思うんです。

例えば、「読書が好き」と「物語の中でも、ファンタジーが好き」とか。

だからこそ、心が疲れたり、病んでくると、自分が何を好きだったのか思い出せなくなるんです…

好きだったことを、いつの間にか忘れていたり、何が好きだったのか思い出せないくらいこころに鍵がかかってしまっている場合、あなたらしさである「心」がいじけている可能性があります。

もし思い当たることがあったのなら、自分が若い頃に好きだった映画をもう一度見返して見て何を感じるか?とか、好きだった音楽をもう一度聞き直してみてください。

若い頃に読んだ本をもう一度読み返してみて、やっぱり好きだったと思うかもしれません。印象が変わっているかもしれません。

人は誰しも変わります。変化はこわいことではないんです。

でも、こころが動かなくなっていたのなら要注意。

こころが疲れているのなら、自分が好きだったものをもう一度思い出してみてください。

無理はしなくてもいいんです。

ゆっくりでいいんです。

ずっと努力してきたからこそ、心が、自分の主である王様が疲れてしまったんです…

時には休息も必要ですよ。

何かをすることだけが、自分を癒す方法論ではないんです。

何もしないこと、引き算の方法論も時には必要であることをわかって欲しいです。

「心」のまとめ

これで、心の説明は終わりです。

なんとなくイメージできましたか?

西洋医学の血を循環させるイメージだけではなく、こころがグラグラしないように支えているのが心の大きな働き。

心は王様で、すべての臓器を指揮者のように束ねて、個性のある個々の演奏家たちを束ね、人生という素晴らしいシンフォニーを奏でるのに大切な大切な役割がありますよと。だからこそ、心が崩れると、すべてが崩れてしまうと…

舌に反応が出やすく、色やくすんだり、光沢がなくなったりすると心は疲れていて、舌先が荒れるのも心の疲れが表にあらわれているものだと考えたらわかりやすいです。

心は自分らしさを生み出す臓器で、心がくたびれると、自分は何を好きだったのかすら、思い出せなくなることもありますよと。

心のイメージをしっかりと持っていただき、ご自身のからだをセルフケアする際にお役立ていただけたら幸いです。

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