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「脾」は「気、血を生む」「智恵の源」「内臓を持ち上げる」【新訳五臓六腑解説②】

東洋医学が考える「五臓六腑」を、私、独自の解釈を含めてまとめた【新訳五臓六腑解説】の二回目。

今回は「脾」の解説です!

「えっ!脾って何?」

いきなり「えっ!脾って何?」と思った方も多いはず。

「脾」は西洋医学的な「脾臓」とは違うんです。

ちなみに「脾」は「ひ」と読みます。

江戸時代、日本でも解剖学が発達して、杉田玄白さんや、前野良沢さんが、オランダの『ターヘルアナトミア』という本を見ながら人体解剖をしてみたのですね。

その時、目で見た実際の臓器を日本語訳していったのですが、東洋医学の書物から用語を引っ張ってきて、この「脾」は誤訳されてしまったんです。

だから、脾とか言うよりも「胃腸全体の働き」という感じにイメージするとわかりやすいと思います。

脾について、「膵臓」の働きに似ていると書いてある本もあるのですが、どうなんでしょうね…私には正直わからないです。各々の解釈によるのでしょう。

「気」も「血」も、脾の働きで作られる

東洋医学でよく出てくる「気」も「血」も、この胃腸である脾の働きで作られます!

後天的に食べた食べものをエネルギーや、栄養に変換するのが、この脾の役割。

脾の主な作用に「運化」という作用があるのですが、食べたものを吸収して運び、もとあった食べものを、気や、血などに変換する工場のような作用があるとイメージしてもらうとわかりやすいと思います。

運んで変化させることができないと、水が停滞してからだむくんだり、血が停滞して貧血になったりします。

消化のイメージ

ここで、胃腸が行う消化のイメージを書いてみたいのですが、脾は、胃と強調して消化を行うため、東洋医学では脾と胃を合わせて「脾胃」と表現されることがあるんです。

消化の働きは、石臼(茶臼)に例えられたりして、石臼の本体が「胃」、石臼を回すための取っ手が「脾」だと説明している本があるんです。

この文章のもう少し後で説明するのですが、脾は手足をつかさどっていて、手足を動かすと石臼がまわり、食べものが消化されるようなイメージなのです。

脾は人間的な「情緒」を形成する

また、脾は「思い」や「智恵」が生まれるところで、頭で考えたり、人間的な情緒を形成するのに大切な場所だと考えています。

たまに、ものすごく甘いものを食べたくなる人がいると思うのですが、適度に取れば、からだは緩み、ストレスも緩和されやすいのですが、食べ過ぎると脾が病み、際限なく食べて胃腸を壊し、精神的にも落ち込むという悪循環を経験したことがあるのではないでしょうか?

人間的な理性というか、歯止めがきかなくなってきている時、脾が病んでいることがあるのです。

短期的なことならいいのですが、長期化すると、気も、血も生成するのに脾が大きな役割を担っているので、徐々に気も血も足りなくなり、一歩も歩けないくらい気分が落ち込んでしまうこともあるんです。

脾が病むと、思考がループする

私の印象なのですが、脾が病むと、考えが同じところでとどまり、思考がループして、解決しないままただ悩み続ける状態になることが多いですね。

クヨクヨ、ネチネチする思考になってきたら、脾に負担がかかってきている証拠なので、甘いものを控えてあげた方がいいですよ。

思い悩みはじめたら、たまに断食をするなどして、胃腸をニュートラルにすることも大切です。

内臓が下に落ち込まないように持ち上げる「昇清」という働き

脾の他の作用として、「昇清」という、からだを栄養する物質を上に持ち上げたり、内臓が下に落ち込まないように持ち上げる働きが重要なんです。

「昇清」って、漢字2文字にするとなんやら難しい働きに聞こえますよね…

私の解釈が入るのですが、昇清って、息を吸った時、自然と腰が反り、胸が張られ、からだが上に持ち上がっていく作用とイメージしていただくとわかりやすいと思います。

上に昇る感じ。からだがシャンとする感じ。

シャンとするから頭が働き、人間的な知性が活性化され、情緒も安定するんです。

昇清がしっかり働いていると、困難なことがあっても、ちゃんと悩んで解決できる!

脾が病むと、からだに「左右差」ができる

またまた私の解釈なのですが、脾が病むと、からだに「左右差」が出やすくなるんです。

左右差と言っても、からだを横に倒したとき、側屈ですね。からだが左右で曲がりにくさの差が出て来る感じ。

特に、からだの前側の左右差がきつくなって引き連れたり、肋骨がうまく挙がらずに息が苦しくなったり、側胸部が引きつったりするイメージがあります。

左右差から肩こりも生まれる

先ほど、息を吸った時に、腰が反って、胸が張られる感じが昇清のイメージと書いたのですが、この、上に昇る感じって、左右差があると、グーッと頭の方まで気が上がっていかず、途中でクニャッと脇道にそれるような状態になるとイメージしてもらいたいんです。

呼吸をしても、からだを上に持ち上げる力に左右差があるから、息を吸う度にちょっとクニャッと横にそれるので、頭まで気が昇っていかないと…

すると、首や肩あたりが張ります。

呼吸は、一日で1万5千〜2万回するので、その回数分左右差が生まれて、頭まで気が昇らないから、肩もはるし、頭もぼんやりするし、立ちくらみみたいなめまいが起きやすくなる感じ。

…なんとなくイメージできますか?

難しい!?笑

もうちょっと補足します。

例えば、障子があって、ふすまでもいいんですが…日本の仕切りって、ドアをバタッて閉めるのではなく、右が閉まって、左が閉まって、右の障子も、左の障子も、ピタッと閉まらないと閉まった!とは言わないじゃないですか?

左右差があって、片方が閉まりきっていないとピシャッとならない。

ピシャっとならないから、上にグンと持ち上げる力がうまく働かない感じ…左右差のため、まっすぐに持ち上がらなくて、横にクニャッと倒れてしまう感じ…伝わったでしょうか?

胃腸である脾が病むと、気も血もできなくなってヘロヘロになるし、頭に気が昇らないからから感情がループして同じことをネチネチ考えてしまうと…

慢性病で「肌肉」「手足」が痩せる

私の経験からなのですが、本などには脾は「肌肉」や「四肢」をつかさどるという記載がよくあるのですが、これ、慢性疾患を扱ったり、たとえば難病の人や、ガンの人を定位的に診るときに、すごく重要になってくるんです!

「肌肉」は「きにく」と読んで、皮下組織のことです。脂肪とかがある、皮膚をつまむと、ムギュッとなる部分が「肌肉」

慢性疾患の方たち、この肌肉から痩せてくるんです!

皮膚をつまんでも、ムギュッとならない!

そして、手と足、腕や腿の肌肉が痩せるんです!

回復してくると、肌肉から戻ってきて、つまむといい感じにムギュッとなるのが顕著で、ガンの方など、抗がん剤後などに回復してきた時の指標に私はすることが多いんです。

普通の痩せ方だと、手足から痩せるとかはないんです!お腹周りや、顔から痩せるのが普通なので。

…ちなみに、一番痩せやすい部分って「眼下脂肪体」という、目の後ろにある部分らしいですよ。すぐに痩せるから、クマが出たときに周りが気づきやすいとか。

気や血がしっかりとできている状態だと、手足は痩せてこないのが特徴なのですが、脾がしっかりしていないと手足の肌肉から痩せると…なので、手足から細くなってきた時、ちょっと注意が必要なんです。

脾が病むと、症状が長期化しやすい

ざっと、「脾」について私が大切だと思うところを書いてみました。

イメージできるようになりましたか?

脾は、気と血を造っている場所なので、病みはじめると長期化しやすい部分なんです。

からだは治りたいのに、からだを治すのに肝腎な「エネルギー」も「栄養」もできなかったら、徐々に衰弱してしまい、結果として症状が長引いてしますのです。

私はよく「胃腸症状はありませんか?」と質問するのですが、便通や食欲に異常はなくとも、脾が病み、からだに取り込んだ食べ物をエネルギーに変換できない場合もあるので、胃腸症状と脾の不調が結びつかないこともあるんです。

その時は、食べものはしっかり摂っているのに痩せてきてしまったり、貧血症状が出る人もいます。

「こんな症状の時、何を食べたらいいのでしょうか?」

よく「こんな症状の時、何を食べたらいいのでしょうか?」という方がいらっしゃるのですが、この質問をしてくること自体、慢性的に食べ過ぎているということでしょ 笑

質問の答えとして、食べないくらいがちょうどいいですと答えるのですが、食べない方が言われるほど、人は食べてしまう生物なのですよね…

わかっちゃいるけどやめられないのは、もしかしたら智恵を生み出す脾が疲れているからかもしれませんよ。

たまには胃腸も休めてあげてください。

「脾」のまとめ

まとめます。

「脾」って胃腸全体というイメージで、西洋医学が考える「脾臓」とは違うんだよと。

気も血も作る場所で、脾が病むとエネルギー不足になったり、立ちくらみになりやすいと。

また、人間的な「智恵」を生んだり、病むと思考がループしやすくなりますよと。

内臓を持ち上げる働きがあって、病むと左右差ができて、うまく真っすぐ上に引き上げることができませんよと。

慢性病にかかって脾も弱ると、手足から痩せますよと…

まとめはこんな感じ。

もの言わぬからだが、何かことばを発してきたとき、ちゃんと耳を傾けてあげてください。

からだの声に耳を傾けてあげると、必ずからだは喜びますよ。

みなさんがよりよく生きてくれることを願っています!

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