ブックガイド(91)「天使墜落」(ニーブン&パーネル)

(2004年 02月 15日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)


 1997年の発売で星雲賞を取っている。
 もの心ついたころからの読書マニアである私には、財布の中身がどれほど少なかろうと、明日のたばこ代に事欠くことになろうと、それでも本屋で「手に取ったとたんレジへ行かねばならない」という本が存在する。近年はなかなかそんな本に巡り会えないのだが、この「天使墜落」はそんな本である。

SFファンにとってのディストピア

 近未来、行き過ぎた環境保護政策が嵩じて、科学技術すら否定するようになってしまった地球では、「SFファン」はテクノロジーを信奉する異端者として迫害を受けている。地下に潜ったSFファンは、それでも性懲りもなく秘密SFコンベンションとか開いている(笑)
 政府が眼の敵にしているのが地球と縁を切った宇宙ステーションのコロニーである。完全な自給自足はできないため、時々地球の大気をかすめ取って、宇宙空間に逃げていくガスの補充をしなければならないわけだ。
 ところがある日、その大気回収用スタープシップが、地球側によって撃墜。パイロットたちは不時着して一命を取り留めるが、もし地球側の政府にでも見つかったら万事休すだ。

立ち上がったヒーローたちは

 彼らを救うんだ。雄々しく立ち上がったのは、SFファンたちだった。
 政府を出し抜き飛行士たちを奪取する。そして、地球にまだ一台だけ飛行可能な宇宙船があることを知る。
 SFファンのネットワークは飛行士(コードネーム天使)たちを自力で宇宙に返そうとする一大作戦を実行する。しかし、敵側には、ファンの手の内を熟知した「元SFファン」がいた!(爆笑)
 スタートレックファン(トレッキー)を題材にした「ギャラクシー・クエスト」って映画があるが、あれを見たときに真っ先に思い出したのがこの「天使墜落」。
 一気に読んじまいましたよ97年当時。
 思えば少年時代、SFばかり読んでいた私は、父(高校の現国教師)から「ロケットだとかロボットだとか地に足のつかないものばかり読んで」と叱られたものだ。小学六年の時にはじめて本屋の大人向けのコーナーで創元推理文庫SFに出会い、中学生の時にハヤカワSF文庫の創刊にファンとして立ち会い、いずれも欣喜雀躍したのを覚えている。
 いやあ、俺SFファンでよかった。そう思える作品だ。
「天使墜落」

 これ、創元SF文庫です。

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