小説指南抄(1)「外見」ではなく「印象」で描け~読者の想像力に委ねる~

「外見」ではなく「印象」で描け~読者の想像力に委ねる~

 映画を観たときに、原作と主役のイメージが違うと感じたことはないだろうか。
 これは、原作の小説が、主役の外見や外貌などの描写をせずに、読者の想像力に委ねているからである。
 そこで原作を読んだ読者の数だけ主役の人間のイメージがあり、映像化に際しては、その最大公約数でイメージが作られている。
 ティーンエージャー向けの作品には、外見の設定などを細かく決め描写しているものも少なくないが、絵師やアニメ化を念頭に置かなければ「顔立ち」や「スタイル」の細々とした描写は不要である。

例)
荒削りに彫り込んだギリシア彫像のような美貌にもかかわらず、くぼんだ眼窩の奥に光る瞳の陰りが、酷薄な印象を与えていた。

 具体的すぎて、「濃い顔は俺のタイプじゃないし」的な読者も出てくるかも。
 そこで、次のように直してみる。

例)
 見つめてくる視線には悲哀の色が浮かんでいる。唇に浮かぶかすかな笑みが皮肉な影を与え、本来は美貌であろう顔立ちに酷薄な印象を与えていた。

 つまり、「外見」や「顔立ち」ではなく、彼の与える「印象」にフォーカスして描くのである。

「外見」ではなく「印象」をこそ描け
これは、あくまで私流のキャラ描写術である。参考になっただろうか?
(2019年 04月 22日 読書記録゛掲載記事)


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