映画レビュー(24)時をかける少女

時をかける作品

(2007年 09月 29日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)

先ほどDVDでこのアニメを鑑賞し、まだ余韻に浸っている。
先般見た「パプリカ」といい、筒井作品のアニメは佳作続きだ。
原作者の筒井康隆は、この作品「時をかける少女」を、どんなに私が年老いても優しくやさしく慕ってくれる親孝行な娘のような作品だと言っていた。
今回のアニメは、原作の物語との直接の関係はない。主人公のおばが、原作の少女らしいと匂わされているだけだ。
今回の主人公の少女は、友人のために、何度も何度も時間をやり直す。
彼女とこの作品がいとおしいのは、その何度も過去へ戻る主人公の行動が、「あの時ああすればよかった」「なぜ、あのとき、一言好きだといえなかったんだろう」という、誰もが抱える思春期の想い出と重なるからだ。
タイムリープとは、あの時代、友人たちや将来に対して抱いていた、「ふらふらと右往左往する不安や希望や迷い」のメタファー(暗喩)に他ならない。
そんな普遍性が、年齢・性別・時代を超えて、多くの人たちから愛される原因だろう。この「時をかける少女」という作品そのものが、「時をかける」のである。
私は、少年時代にNHKのドラマシリーズ「タイムトラベラー」を見、青年時代に大林宣彦の「時をかける少女」を見た。そして、ちょうど主人公の少女と同じ年の娘を持つ親となって、再び、このアニメ作品に出会うことができた。
今は静かに、この作品と同じ時をかけることができた幸運を喜びたい。そして、筒井康隆と同じ時代にいることを読者の一人として喜びたい。
時をかける少女(アニメ) 通常版



時をかける少女(大林宣彦)

追記
言うまでもないことだけど、遠い「未来」に去ってしまう結ばれることのない恋人とは、初恋のメタファーである。
遠い過去に去ってしまった、結ばれることのなかった恋人は、誰の心の中にもいるからだ。

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