映画レビュー(85)「Winny」


2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。以上 アマゾンの紹介文。


当時を知っているからこそ響く

 開発者・金子氏は警察側の誘導で著作権無視の違法アップロードのためにソフトを作ったテロリストのような扱いを受ける。だが、このWinnyによる著作権侵害を最も蔓延させた張本人はPC雑誌である。特に「ネットランナー」誌は、「絶対に真似をしてはいけない」という言い訳を申し訳の様に添えて、微に入り際に渡って使用方法・ダウンロード方法を解説していた。有名なライターには津田大介がいる。

裁判を通して事件の背景が浮かぶ

 裁判の経過と弁護活動を通して、当時の警察の事情や、まだPCやプログラムのスキルのない一般人が観る「オタク」に対する視線を思い出した。
 当時私は、勤務していた広告会社でWEBプロモーションのADと、社内IT化のチームの一員だった。97年から自分でもWEBサイトとか作っていたので、その勢いでDB構築やLAN工事などをやってたわけだ。40歳過ぎのハゲおやじが、高校生たちに交じって情報処理の資格も取ったわけよ。
 今、シニア世代がPCやスマホで悪戦苦闘しているが、当時、私たちIT担当を「また、オタクが何か言ってやがる」的に散々小ばかにしてきたのが彼らの世代。残念だが「いい気味だ」としか感じないのは、そのためだ。
 社会派の映画としてなかなかの佳品である。

Winny


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