映画レビュー(17)「モンスターズ 新種襲来」

「モンスターズ 新種襲来」

(2016年 08月 16日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)


 ギャレス・エドワーズの前作「モンスターズ 地球外生命体」の続編であるが、ストーリー的には関係はない。
 前作同様、地球外の巨大生物が跋扈する世界状況を背景にしているだけで、物語は静かで象徴的である。
「怪物」を退治するためにアメリカ軍は空爆を行っているが、巻き添えになる市民も少なくなく、抵抗する反米武装勢力との戦争が続いている。
 主人公の新兵は、歴戦の鬼軍曹に率いられた部隊の一員として、行方不明の四人の兵の捜索のため危険地帯へ行くことになる。
 まるで、「プライベート・ライアン」を思わせるストーリーだが、カタルシスはない。
 兵は次々と死んでいくが、この映画の中で、怪獣に殺される人間は一人も出てこない。全員、人間同士の戦闘で死んでいくのだ。
 怪獣は、そんな人間には全く無頓着に深海生物のような優雅な動きで通り過ぎていくだけだ。
 この映画の「怪獣」とは、まさに「恐怖」と「疑心暗鬼」でテロとの戦いをせざるを得ない「人間の業」のメタファになっている。
 テロとの戦いのまさに推進役のアメリカが、現状に対するやるせなさや絶望感を映画で表現するならば、まさにこのような表現しかないのであろうと思った。
 ただ、そういった感受性のない観客にとっては、カタルシスのねえ「つまんない怪獣映画」でしかないと思う。と、アマゾンのレビュー観て思った。

 だからこそ、この作品、俺にとっては大傑作である。
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