ブックガイド(130)「熊の皮」(ハヤカワ・ポケット・ミステリー)
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もともと短編小説やエッセイの作家で自然愛好家ジェイムズ・A・マクラフリンの処女長編。
世捨て人の戦い
主人公ライス・ムーアはバージニア州のアパラチア山脈の自然保護区で管理人をしている世捨て人。メキシコ国境で事件に巻き込まれ、収監されていた過去がある。
ある日、手足と胆嚢を切り取られ全身の皮を剥ぎ取られた熊の死骸が禁漁区である山中で発見される。熊の手と胆嚢は、中国向けのブラックマーケットで高額で取引されているという。かつて生物学者を志していたライスは、単独で調査に乗り出す。
秘めた過去、孤立無援、単独捜査、と三拍子そろった主人公に思わずニヤリ。作者、わかってらっしゃるなと。
周辺のキャラクターにも因縁はある
ライスの前任の担当者は、密猟者と対立しレイプされた過去がある。また、その犯人一味とされた男にも秘めたる謎がある。
こういった物語が、淡々とした日常描写に補強されながら展開する。ライスが自然の中で野生動物のような感覚と意識を獲得して過去の因縁から少しずつ癒やされて行くようにも見える。
印象的なラスト
事件解決の後の後日談が、読者にも癒やしになっている。この物語は事件を描くことで終わるのではなく、事件を通して変わったライスや当事者達の心の決着を描いているのだ。
まさに王道ミステリ-であった。
「熊の皮」
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