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今どきの大学生に教えてもらったこと:「観光業界研究」の講義での気づき

 高校生や中学生からも授業や学校生活を通じて色んなことを教えてもらいましたが、大学生からも色んなことを教えてもらっています。大人が(私が)当然だと思っていることが実は彼彼女の当然ではない、ということですね。これは私のいる大学だけではなくて、他の大学も程度や内容に差はあれ共通していることだと思います。
 私は講義の最後に、その日の講義の感想や気づきや疑問を学生からフィードバックしてもらっています。先日、OTA(オンライントラベルエージェント(ExpediaやTrip.com)を扱った回でのことです。この回では、皆さんはホテルや旅館などの宿泊施設を予約する時どんな経路で予約しますか、と、質問を投げかけました。
質問の背景には、施設への直接予約、OTA、旅行会社などの複数の答えが上がるものという想定があったのですが、9割程度の学生がOTA、と答えました。その質問から、様々な販売チャネルの話になり、この講義は終了したのですが、その回の振り返りコメントで「そもそも予約する時にネットの予約サイト以外の方法を知らなかった」という言葉が目立ちました。そうか、今どきの学生は旅行会社や電話予約なんてそもそも知らないし手配手段として知らないからホテルを予約する選択肢にすら上がらないのか、と納得しました。
 言い方を変えると今の大学生世代の中では手配手段としてそもそも旅行会社は認知されづらく、従って宿泊施設の手配においては、OTAとの競合相手にすらなっていない(傾向が強い)ということです。
 また、旅行会社の収益構造の変化について学んだ回でのことです。1960年代から2000年代までの定期券等の代理販売やツアー手配の話やOTAの話まではスムーズに理解が進みました。しかし、大手旅行会社JTBを例に取り、コロナ後の旅行会社のビジネスモデルについて学修したとき、それまでグループで活発に議論していた様子から、明らかに意見が出づらくなりました。ビジネス領域(ツーリズム、エリアソリューション、ビジネスソリューション、グローバル)4領域に話が及んだ際、特にソリューションの事例を調べ学習したのですが、このソリューションの内容がそれまで学んできた旅行業のイメージやビジネスモデルが異なるので、理解が難しかったようです。
 ある意味で、旅行会社・業界が従来のモデルから脱却しようとしていることの表れでもあるのですが、学生にとっては具体的な事例を踏まえながら学んでも、腑に落ちない部分があったようです。(同時に、講義における私の説明方法を改善する必要があると反省しました・・・。)次回の講義の復習の際に、学生のフィードバックに基づいて、具体例を用いて復習してみたいと思います。
 これらのことから感じたのは、思っていたより若者世代は「旅行会社」に関して理解していない(関心が低い)ということ、変化している旅行業界の業務内容について、イメージをしづらくなっているな、ということです。講義は「観光業界研究」なので、学内でも比較的観光に関心のある学生が多いにも関わらず、です。
 このことを踏まえ、更に学生と旅行業界との関係を採用活動の視点で考えてみました。学生が最初に企業と深いつながりを持つきっかけとなる新卒採用活動においては、説明会や採用面接にあたっては、より学生の目線に立った、学生が自分ごととして理解できる資料や説明の工夫が必要になるでしょう。インターンシップにおいても、現場の緻密な手配の業務、添乗や接客などのコミュニケーション関連業務、そして今旅行会社が取り組んでいる、学生がイメージしづらい新領域の業務というように、複数の側面から学生が業務イメージを立体的に持てるような工夫が大切になってくるでしょう。業界や業務内容そのものが学生のマインドに入っていない場合、宿泊施設の手配手段として旅行会社が選択肢に入らないのと同様に、将来の就職先として選択肢に入りづらくなってくるかもしれません。
参考URL
株式会社JTB 「事業領域」https://lnkd.in/gXAjXDuP


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