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もう「ちゃんと」しなくていい


子どもを追い詰める「教育虐待」とは?


教育虐待。

Twitterを見ていたらショッキングな言葉が目に飛び込んできた。
以下はニュースの概要である。

医学部受験で9年浪人 〝教育虐待〟の果てに…
医者になるよう強く要望した母親を殺害し、遺体を損壊、遺棄した長女の裁判があった。9年間の浪人生活を送り、母の異常な干渉で追い詰められていた被告を、判決は「同情の余地がある」と判断した。教育を理由に、親が子どもに無理難題を強いる「教育虐待」が社会問題になっている。教育虐待がエスカレートし、行き着いた悲劇的な結末。親子の間に一体何が起きていたのか。公判では長年にわたる異常な生活状況が浮かび上がった。(共同通信=斉藤彩)

今、この事件が注目されると同時に、
殺人を犯した娘への同情が集まっている。
ニュースのツイートやリツイートについたコメントを見ると、

・子どもは親のトロフィーではないし、自分の劣等感を埋める道具ではない
・子どもは独立した人格であり、人生

など、「殺人は決してしてはいけないことだけど、彼女に同情する」というコメントを多く見かけた。
記事を読めばわかるが、毒親育ちではない人でも
「これは行き過ぎ」と思うエピソードがたくさんある。

母に「看護師になりたい」と本音を打ち明けた。
だが「あんたが我を通して、私はまた不幸のどん底にたたき落とされた」と一蹴される。
その後、母は夜通し怒鳴り続けた。
殺害を決意したきっかけは、スマホたたき壊され、助産師学校に落ちた際に「裏切り者」「うそつき」と徹夜で叱責されたこと、と述べた。

これらの言葉は消そうとしても、なかなか消えない。
何故なら、愛する母親から言われた言葉だからだ。

子どもであっても「別人格」と認めていれば

世界中の人が敵になっても、自分を生んだ母親だけは味方でいて欲しい。
失敗した時、自分が一番しんどい時は「大丈夫だよ」と言って、そっと抱きしめて欲しい。
「あなたはそのままでいいんだからね」と頭をなでて欲しい。
自分が選んだ人生を一緒になって応援して欲しい。

子どもなら誰もがそう願うし、信じて疑わない。
だが被告はそれとは真逆の対応を母親からされ続けた。
味方どころか、人格否定をされ続け、失意のどん底に叩き落されたのだ。

「もっと勉強をがんばればよかったじゃん」という声も散見したが、否定され続け、精神的に追い込まれた人間はがんばるどころか、不安しかない環境の中、生きていくだけで精一杯なのだ。

殺された母親が被告に医学部受験を強いたのは、
自身の学歴コンプレックスが大きく影響しているように思えた。
亡くなった人をとがめるつもりはない。
だが子どもは自分が希望した人生を変わりに生きてくれる人形ではないし、周囲に自慢するための道具でもない。
腹を痛めて生んだ子どもであっても別の人格であることを理解し、被告が望む人生を認めてあげれば、ここまでの事件にはならなかったように思う。←あくまで私見です。

記事中、明治大学の諸富祥彦教授(臨床心理学)はそうした親を持つ人にこう話している。

「親の人生の願望を子どもに押しつけてはいけない。
だが親はその自覚を持つのが難しく、
外部の人間が介入できないと、対処は困難となる。
子どもの立場からできるのは、外部に助けを求めること。
スクールカウンセラーや児童相談所などを積極的に利用してほしい」

まさにその通りだ。
だが、幼い頃から支配され、親を絶対の存在と疑わない子どもは
「助けを求めること=言いつけること」と思うように刷り込まれているので、なかなか行動に移すことができない。

もう「ちゃんと」しなくていい


ただネットが発達し、漫画家の田房永子さんはじめ、毒親について発信する方が増えたことで、発言もしやすくなったし、以前よりもはるかに情報を得やすくなってきた。私も田房さんの本に救われた1人だ。

今、拘置所にいる被告は記者にこう話している。

拘置所はルールさえ守っていれば叱責を受けることはありません。
今のほうが気持ちとしては楽ですね。
細かいルールが煩わしいこともありますが、
刑務官は私に対して『うざい』とか『死ね』とか言うことはありません。

どれだけ多くの暴言を浴び、否定され続けてきたかということが、痛いほど伝わり、胸が苦しくなった。
それなのに彼女はこう続けた。

自分自身は良い娘ではなかったので、母の苦しみや焦燥を、もう少しちゃんと分かれば良かったです。

心がきゅーっと収れんするような気がした。
もう「ちゃんと」しなくていいんだよ、普通でいいんだよって……。

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