未だ聴こえない音楽の制作日誌-27- 響かせないで響かせる
「リバーブは1曲につき3個まで」
この言葉を師匠的な存在の方からいただいたことで、私は海外から音楽をリリースできるようになった。
リバーブとは音の反響を擬似的に作り出し、「空間」を感じさせる効果である。大きなホール、長いトンネル、小さな部屋、音が鳴ったときの反響を想像して欲しい。色々な種類の空間の大きさを再現できるのだ。
そして、このリバーブをかけることで各楽器が同じ空間にあるかのように馴染んでいかせることが出来る。と、私も思っていた。
それまでクラブミュージックとポップミュージックの間の音楽を作ってきていたが、その曲の中に「空間」を作り出すのが好きだったし、色々なリバーブを色々な音にかけて、多様な響きを音楽の中に入れるのが好きだった。
が、この手法は間違いで、音が「どんどんぼやけていく」だけ。
写真で言えばピントが合ってないような音楽になる。
考えてみればその通り、音が響くということは空間があるわけで、響きが大きくなればなるほどその空間は大きくなる、そして響きの成分が多くなればなるほど、楽器自体が遠くにあるように感じていくのだから。
「リバーブは1曲につき3個まで」
大抵は一つはボーカルに、一つはスネアに使う。となるとあと1つの音にしか使えない。
この制限こそ、技術、感性を育てる重要な要素だった。
先日に私がDTMの講師もしていることを書いたが、「ミキシングが上手くいかない」「曲の完成度をあとワンランク上げたい」とかいう相談も大抵はこの「リバーブかけすぎ問題」である。
もし同じように悩んでいる人がいれば、先ずは片っ端からリバーブを切って欲しい。シンセサイザーのプリセット、元々の音にリバーブが入っていることもあるので要注意だ。
このリバーブを切って音楽を作る行為を行うと、DTM技術は飛躍的に向上する。
音の長さはディケイやサスティンを使って構築していく、響きやサラウンドはディレイを上手く使う。それぞれの音量にも繊細に気を使わなければいけない。
これにより今までよりも丁寧な作業が必要となり、「音」への理解を深めていくことに繋がる。最初のうちは非常に大変だが、後々、必ず役に立つ。
そして、インパクトを出したい時や、立体感を出すための鍵となる音にリバーブをかけることによって、他の音がグッと近く感じられるようになる。
遠近感が出る。
ソロプロジェクトとして音楽を作り始めた時、海外レーベルに音楽を送っても全く反応が無く心が折れかけた時、相談して得られたこの「リバーブは1曲に3個まで」を守るようにしてから、海外レーベルから返事が来るようになった。
壮大に感じるので、ついつい響かせたくなるのが人情というものだが、これをグッと堪え、一つ一つの音を丁寧に見直していくことが大事だ。
今日、自分の曲を手直ししていて、どうにも上手くいかないと思っていたら、まさに「リバーブかけすぎ」であった。
気を抜くと、やはり癖で響かせてしまっているらしい。
そんな自戒の念も込めて、ここに記すことにした。
明日も音楽を作ろうと思う。
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