偏質的俳句鑑賞-第九回  只居ても腹は減也(へるなり)春の雪-井上井月

井上井月は奇特な人である。江戸時代に信州を放浪し、地主などに揮毫などを行って飯をもらう。酒が大好き。そして、最期は行き倒れ。 
山頭火や放哉などの自由律の放浪俳人と比較されることもあるが、井月のほうが飄々としたなんとも気の良いおっさんという感じでこっちのほうが好きという人もいるんじゃないだろうか。
出自も越後国出身ということはわかっているが家が分からない。実際の名も諸説あり。
だが、俳諧の腕は確かでこういうなんとも純粋なわかりやすいが、滑稽さを含んだ秀句がある。
「只居ても」は食べ物をもらいに行かないで借りた宿に留まっていたりしたのだろう。
その上に食にありつけるようなこともしないで「腹減ったなぁ」とぼやいてみせる。

働け!せめて俳諧をやれ!

というツッコミを待っていて、「春の雪」も降ってくるぐらい寒いし億劫だからさ。と笑ってみせる。
そういう余裕があるような句で人間くさくてとても良い。
こういうトリックスター的な、ちょっと変わり者の俳人のおっさんとしての井月が分かる面白い句だと思う。
それだけです。次回も良ければ読んでください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?