偏質的俳句鑑賞-第二十二回 金魚玉(きんぎょだま)天動説のなかに吊る-鎌田俊『山羊の角』

金魚玉とは金魚鉢の丸っこいやつで軒先に吊るしたりする。
まぁ、夏の季語としてオシャレで雰囲気も良い。
だが、そこにはもう一捻り必要になる。ただの金魚玉があるだけならば俳句にはならない。
ならば、「天動説」の世界に金魚玉を吊ってやろうという、

なんとも思想的にオシャレなことをしたのがこの句である。


もちろん「地動説」に則った世界に我々は生きている。だからこそ、「天動説」という非科学的な言葉が詩として格好良く見える。
あと、「なかに」という表現が良い。「天動説の世に吊るす」とかだったら捻ったけど、まぁ、って感じだろう。
けれども、「天動説のなかに」金魚玉を吊るすことで平面の地球という大きな世界が出てくる。その壮大な神話のような世界の「なかに」、金魚玉という卑俗なオシャレなインテリアを吊るす。
そういう詩として研ぎ澄まされてできた素晴らしい作品だと思う。
それだけです。次回も良ければ読んでください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?