〈俳句日誌〉茗荷が知らせる秋の訪れ

秋知らするうどんに匂ふ秋茗荷 苑慈

2021/9/22 ほんの少しの茗荷のきざみに鰹節がのったうどんをいただいた。鰹節で隠れていて分からなかったが、食べた瞬間に大好きな茗荷の風味を口いっぱいに味わった。驚きとともに、もうすでに茗荷の美味しい季節になっていたことに気づいた。大好きといいつつ茗荷をいただくのは久方ぶりだった。塩っぱくなく、やさしい味わいの茗荷うどんに心身癒された夜だった。

 秋の茗荷の時期、暦の上で秋が訪れる時期はもっと早いのですが、自分にとっての秋の訪れは九月のこの頃でした。俳句を始めてまだ間もなくの頃だったからです。俳句を始めたことで、日常での季節の変化に敏感になっていきました。それまでは暑いとか寒いとか、それくらいしか季節を感じることもなく過ごしてきました。しかし日常の細やかな変化に目を向けることで、季節の移ろいをいろいろな場面で感じ取ることができるようになりました。そうしたら、日々を生活するペースがゆっくりになっていった気がします。しかし一日の充実感は格段に大きくなっていきました。

【こだわりポイント】
 匂ふ
 「ニホフ」の「ニ」は赤色の土を意味する「丹」が由来で、そこから赤色を表すようになったそうです。「ホ」は「秀」ぬきんでている、という意味だそうです。これらことから、赤く色が浮き出ている、というのが「ニホフ」の原義となったそうです。(『岩波古語辞典』補訂版)
 秋茗荷の色にぴったりな赤土にちなんだ「匂ふ」を採用しました!(最初は「香る」や「薫る」で迷っていました)

【最後に】
 本日もここまで読んでくださりありがとうございます。読んでくださっている今(11月上旬)はもう立冬を間近に控えておりますが、今年皆さまに秋の訪れを知らせたものは何でしたでしょうか。季節の過ぎ行くのはとても早いですね。冬を知らせるものは今年はどんなものとなるでしょうか。寒さの冬も、これを思えば今から少し楽しみになりそうです。
 ここ最近すっかり肌寒くなってきました。コロナの不安が拭えぬ時節の上に季節の変わり目、皆さまもどうぞお身体にお気をつけください。
 それではよい晩秋の夜を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?