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妻の入浴中、僕は歩く

息子が生まれてから妻が入浴中、息子を抱っこしていることが多かった。初めての赤ちゃんで、とにかく可愛くてしかたなかったのだ。抱っこしているだけで父親になったんだと思えたし、小さな手で服を「ぎゅっと」握られているのに幸せを感じた。

しばらくたって、首がすわり目がぱっちり開くぐらいに成長するとそんな幸せは長く続かなかった。
妻が入浴しに部屋から出ると、息子は下唇をかみ、目を潤ませながら大声で泣きはじめるのだ。

僕は、「パパがいるじゃない」と笑いながら息子を抱き上げ部屋の中を歩きだすのだった。
すると、さっきまで泣いていた息子はしゃくりながら僕の顔を見つめ胸に顔をこすりつけるのだった。
僕はトン、トンと息子の背を叩いてたて抱きにする。

女性の入浴浴はとにかく長い。
もちろん、妻も例外ではなく長かった。
ただ、ずっと家の中で育児をしてくれている妻に感謝して僕は息子を抱き上げを歩きつづけた。

マンションの一室のリビングを行ったりきたり、テレビの音量は小さめに、たまに鼻唄を歌いながら様子を見る。息子がウトウトし始めたら、立ち止まり寝入るのを待つ。そして 、静かにベビーベットに寝かせるのだった。

「さぁ、一息つこう」そう思い、ソファに座るとドアが開き妻が手を「ごめん」の動きにしながらそろりと部屋に入ってくる。すると、僕の背後から聞きなれた泣き声がかすかに聞こえてくる。

妻と僕は目を大きくあけて顔を見合わすのだった。




    







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