平均を求めすぎた後悔⑥
息子の指差す冷蔵庫を見て、私は思い出すのだった。いつも寝る前に準備する息子の水筒を忘れていたことに…
妻と病院で別れた後、息子は水分をほとんどとっていなかった。私は妻のことが気にかかり、飲み物を飲ませることを忘れていたのだ。
私はしまったと思い、すぐに冷蔵庫からお茶を取り出し水筒に入れ、息子に手渡した。
水筒を受け取った息子は、ストローを勢いよく吸いのどを鳴らしながらお茶を飲んでいた。
飲み終えた息子は満足そうに笑いながら、私に水筒を「ハイッ」と渡してきた。
その瞬間、私は息子を抱き締めていた。激しい後悔で胸が締め付けられていた。「パパ、気づきなかったよ。ごめん、ごめん。」と息子に謝っていた。
息子は訳がわからないのか、「ギュ~」と言い抱き締め返してくれた。
息子に手を引かれながら、寝床に戻った私は寝かしつけをしながらも後悔していた。
「子どもは、ちゃんと自分の言いたいことをなんとかして伝えようとする。それに気づくのが親の仕事なんだよ。」
今さら、初めて息子を実家に連れていったときに、母から言われた言葉を思い出した。
結局、2歳児はこうあるべきだとレッテルを私は、息子に押し付けていたのだった。スマホ片手に、息子の成長を平均、普通、一般的といったありふれた言葉で当てはめようとしていたのだ。
息子は自分のしたい事、いいたい事を伝えようとしているのに、自分の偏見から見ないふりをしていたのは私だったのだ。
ハミガキしたらお菓子は食べられない、お茶は冷蔵庫にある、寝る前の水筒がない。
息子は理解し、私が言ってることも納得してい。
ただ、お茶が飲みたかったことを言えなかっただけなのだ。
息子が眠りにつき、病院からの電話を待つために真っ暗なリビングで ソファーに座る。一人ため息をついて手で顔を覆った。
知識ばかりの頭でっかちだった私は、息子の成長に気づけていなかった。今までの後悔と申し訳なさで、感情が荒波のように揺れていた。
同時に、イヤイヤ期も2歳である今も、長い目でみれば一瞬で振り返る過去になる。
これから、息子と一緒に歩調を合わせて、成長を自分の目に焼き付けていこうと思った。
しばらくたってから大きく背伸びをして、後ろで寝ている息子を見る。
妻がいなくても泣きもせずに、ぐっすりと寝ていた。スマホのバイブが鳴り電話に出た、病院からだった。
丸1日かけるような出産で早朝に女の子が生まれた。妻には本当に感謝の気持ちしかなかった、そして、新しい命の誕生に歓喜した。
息子を見ると新しい命に、恐る恐る手を伸ばしていた。心なしか妹を見る顔は、昨日よりずっと優しい顔をしている様に見えた。
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