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俳句「黴になりたい」

黴となり母のこころに棲みにしが

 いつか母が私のことをわすれさってしまう日がくるだろう。それでも私は母と一緒に暮らしたいと思う。母の介護をしていることを知る方たちからよく「自分も大事に」ということばをかけられる。もちろん有難くはあるが、私の場合、自分を犠牲にして母の介護をしているわけではない。だから、自分も大事に……と言われると、正直ちょっと違和感がある。生来、自分のしたいことしか出来ない人間だから(それで会社勤めも辞めた)、嫌なら母と二人で暮らしてはいない。
 「にしが」は、実現不可能なことを願う文語助詞。わすれさられることは覚悟しているが、本音を言えば、黴のようにしつこく、母のこころの片隅にでも存在していたい。


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