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俳句「消えゆく街」

黄砂降るいづれは消ゆる街消して

 いま栄えている街でも、二、三十年前までは田園だったとか、四、五十年前まで栄えていた街がいまは閑散としたアーケード街だとかいう場所は日本中あちこちにあるだろう。二百年、三百年とかいうサイクルで見れば、跡形もなく街が消えた場所だってあるに違いない。そこで生まれ育った人やそこに思い出をもつ人にとって、その場所が姿を変えることはさみしいことだが(さらには、いまそこで暮らす人にとっては単なる感懐では済ませられない問題だが)栄枯盛衰の理は、『平家物語』の昔も現代も変わらない。

 私のように山の中で生まれ育った人間にとっては、街も、街という場所にいる自分も、どこか虚構のように感じられることがある。

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