俳句「風に吹かれて」
憂国をしばし忘るる稲の秋
豊かだなあ……と思う。黄金色に実った稲田を見ると、自分の田んぼでもないのに、うれしくなる。マルコ・ポーロの『東方見聞録』には日本が黄金の国と紹介されているというが、一面に広がる稔り田を見ると、あながちそれは的外れではないと思う。秋の日射し、稔り田、田を渡る風の三つが揃えば、まさにこころは黄金の国だ。
地震、豪雨、世界のあちらこちらで続く戦争・紛争、政治の混迷を考えると、これからの日本はどうなっていくんだろうと憂えずにはいられない。
けれども、黄金色に実った稲田を見ていると、日本は大丈夫という気持ちになる。心配をわすれ、しばし風に吹かれよう。