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短歌「おはよう」

今日はぼくの誕生日だと母に言へば掛けてくれたことばは「おはよう」

 母の語彙が痩せていく。それに伴って、言い間違いも増えた。例えば、「おいしい」を「うつくしい」と言ったり、「気持ちいい」を「かわいい」と言ったりする。その他には、ことばの一部だけが元のことばで、あとは別のことばの場合もある。私の名前は「ゆきひこ」だが、よく「ゆうこ」と呼ばれる。この場合は、母の妹の「ようこ」と混同しているのか、「ゆきひこ」と言おうとして言い間違えるのかは、はっきりしない時もあるが……。
 この時、誕生日ということばを母が理解して、「おめでとう」と言おうとしたことは表情から分かった。「おはよう」は、言い間違いだが、還暦近い人間の誕生日に贈ることばとしてはなかなか素敵だと思った。

※ この作品は『喜怒哀”楽”の俳介護』( https://haikaigo.com  )に
4月4日に掲載したものです。

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