ブランドビジョンの整理の仕方
最近ブランディングってどうするんですか。立ち上げ時に何をしたら良いですか。という質問を受けることが何回かありました。自分はこうやっているなぁということをいくつかまとめてみました。あくまで私のこれまでの経験の中に基づいており、主にアプリなどのデジタルプロダクトを立ち上げる時に行っていることを書きました。
そもそもブランドとは
ブランドとは何か?という質問を受けた時に私はよく「ブランドとは人のようなものです」と返しています。友達のような存在なのか、あるいは家族のような存在なのか。一緒にいて楽しくしてくれる人か、助けてくれる人か。
ブランドのファンとなってくれる人にとって、どんな存在になって欲しいかをクライアントやチームと一緒に考えます。
ブランドを表す言葉を集めて整理する
私は「キーワードとしてブランドビジョンを整理する」という手法を好んでいます。ブランディングが及ぶ範囲はとても広範囲で、想起しやすいロゴだけではなく、コピーライティングのトンマナ、UIデザインの細かい部分、書体の選定なども含まれます。そうした時に、少し抽象的なキーワードにまとめることで、さまざまなものに展開することが出来るからです。
具体的にどのように言葉を選定するかというと、自分がデザイナーとしてブランドの立ち上げ時に依頼を受けた場合には、まずはファウンダーに質問をします。
事業内容などの基本的なヒアリングもしますが、大事なことはそれよりも「そのブランドを通じて何を伝えたいか?」といった思いの部分を聞くことです。何を課題に思って始めたのかの動機の部分でも良いです。
その中からキーワードとなる言葉を集めて、カテゴライズします。
また、ファウンダーが複数人いたり、チームとしてやっていて複数の意見があってまとまらないケースもあると思います。そうした時には、簡単なワークショップを行います。
手法例
1. 既存のブランドで正反対だと思うものを二軸に分けて、どちらがイメージに近いか投票してもらう
AppleとGoogleなど、誰もが知っている、そしてそれぞれ異なるブランドイメージを持つ会社(ブランド)を二軸に並べて比較してもらう方法です。やろうとしているものと違う業種でも構いません。
これはデザイナーが最初にワークショップの準備をする必要があり、分かりやすい2社の洗い出しと、二軸を表すキーワードの作成を行う必要があります。
2. ブランドを表すキーワードをたくさん書き出し、どういう言葉が相応しいと思うかディスカッションする
1.とは異なり、自分たち自身でブランドを表す言葉を探る方法です。1.をやってから、深掘りすることもあります。
ブランドを表すキーワードの例が思い浮かばないこともあると思います。そんな時、便利ツールとして、英語になってしまいますが、私はBrand Deckを使っています。
カードの裏表にはそれぞれ反対のキーワードが書かれています。
「🙆♀️You are.」「🙅♀️You are not.」というカードも含まれており、どのキーワードがブランドに相応しいか?また、違うのか?をデスクにカードを広げながら、ディスカッションして並べていきます。
私が所属しているAll Turtlesでは複数のプロダクト立ち上げを現在行っており、実際にBrandk Deckを使ってディスカッションもしました。英語が第一言語ではないけれど、英語でキーワードを出さなければいけないシチュエーションでは特に役立ちました。
競合調査
上記のビジョンの整理と並行して、競合調査も行います。他の近しいブランドは、業界の中でどのように自分たちを位置付けているのか? そして、自分たちはどう違うのか?
ブランド側が言語化してブランドガイドラインなどを公開している場合もありますが、そうしたものがない場合は、上記のBrand Deckを用いたりしながら、競合を表す言葉は何か?を自分たちのブランドと同じように導き出すことも可能です。
その際、競合のビジュアルやコピーライティングなどを集めておくと、ディスカッションの際にも役立ちます。
例としてLyftの元デザインディレクターの楠井さんは、Lyftと競合であるUberの違いを以下のようなキーワードで整理しています。
ウーバー
Luxurious : ラグジュアリー
Clean : クリーン
Sophisticated : 洗練されている
Conservative : 保守的
リフト
Playful : 遊び心のある
Fun : 楽しい
Friendly : フレンドリー
Liberal : 民主的
ユーザーの声を聞く
新たにブランドを立ち上げる時だけでなく、ブランドをリニューアルするケースもあります。特にスタートアップの場合は、まずプロダクトを作って、ユーザーが増えてきてからイメージを刷新したいというプロセスを経ることも多いと思います。
リブランディングと聞くと、まったく新しい別のものにしなければならない、と思うこともあるかもしれません。戦略上そうすることもありますが、すでにプロダクトを発表していて、熱心に使ってくれているファンがいる場合は、ユーザーの声を聞きます。
直接コンタクトとれる場合は、対面でのユーザーインタビューを行い、そうでない場合はアンケートを送る、あるいはTwitterなどに書き込んでくれている人が多い場合はそれらを集めます。
どういうモチベーションで使ってくれているのか、どんな時に使うのか。何に価値を感じてくれているのかを聞き出し、リストアップします。
まったく別のものに変えるのではなく、すでにある価値を強める形で進めた方が、既存顧客の支持も引き続き得られて、さらに新しいファンを獲得できる可能性が高いです。今までブランド側が気づいていなかった、でも実際に使ってくれている人が感じている大事な価値観だからです。
メンバーに周知する
ブランドを表すキーワードは、外に公表するより前に、まず先にチーム内に浸透させる必要があります。
私はブランドとは、ロゴなどのようなビジュアルだけでなく、プロダクト全体の体験を通してユーザーが感じるものだと思っています。つまり、デザイナーだけが知っていれば良いものでなく、プロダクトに関わるチームメンバー全員が頭の片隅に置いておくべきものだと思っています。
具体的には、出てきたキーワードをまとめて画像にしてSlackなどでシェアしたり、印刷することもあります。デザイナーが複数人いる場合、私はFigma上に置くようにしています。
外部のデザイナーとして依頼された場合には、ブランドを表すステート文のような文章にしてまとめることもあります。この次のロゴデザインのプロセスで、コンセプトとしてプレゼンする際に使用しています。
プロジェクトによっていろんな手法を試していて、現在もまだ試行錯誤の最中です。自分のためにも、ブランドについてはまたこうして言語化していこうかなと思っています。
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