見出し画像

Ye

kanyeについて暫く考えていた。

これを書くのに結構何週間か考えていたし、
何回かに分けて書いている。
なんかあまり自身の事は話してこなかったからか、こういう話は心が揺れる。
とか言いつつ本当に時間がかかってるからそろそろまとめたいところ。

まずはじめに昨今の彼の言動や行動、それに伴うキャンセルなど。
その辺の話をしたい訳では無い。
基本的にはメンタルヘルスに関わる話だ。
でもどうしてもその辺の話も絡んでくるから、
触れてはいるけれど。

彼の初期作やプロデュースしたトラックを聴いていると、どんな曲調にもkanyeのトラックの根底には哀しみがある様に感じる。

それが何から来ているのかは分からない。
育った環境なのか、もっと他の何かなのか。
自分以外の人は他の何かを感じるかもしれない。

しかし何にせよ俺が聴く分にはサンプルの選び方、使い方、グルーヴ、一貫して哀しみが付き纏っている様に感じる。
だからkanyeの曲を聴いていると哀しくて仕方ない。
でも、だからこそ魅力的なのだけど。

ラップも上手いとは思う。でも上には上がいると思う、正直。
ただ、プロデュースに関してはマジで天才だと思う。

誰もが彼の転換期であると思うであろう、
808s & Heartbreak

この作品で一気に彼の根底にある哀しみが表面にも爆発した様に思うが、
実はファーストや、それ以前にプロデュースした楽曲などからも、
彼が抱えていた物みたいなのは垣間見える。

この作品は元々持っていた哀しみに母の死というのが重なって、より深い哀しみとなって出たのではないかと。

しかしこの変化がなければ、個人的にHip Hop史でも最高傑作の一枚である、
MBDTFは生まれなかっただろうから、
なんとも言えない気持ちではある。

ただ、本題はここからで、というかここまでは誰でも書けるから読まなくても良いんだけど、

彼は双極性障害を患っているとの話だ。
俺は18の終わりあたりにメンタルの病気にかかって、パニック障害と、不安障害だったかな、なんか幾つか併発してた。
とにかく最初の頃は県内の大学病院をたらい回しにされた。
まあ俺にも問題は多々あったんだけど。多感な頃だし。
だから診断名も安定してない時期が結構あって、医者によって違ったりするから、ちゃんと病名を認識したのはかなり後になる。
その頃は20分かからない病院に電車で行くのに2時間3時間かかるとかはザラだった。
で、良くなったり悪くなったりを繰り返して、25ぐらいの時に完全にダメってとこまで行って、
色々と経た上で今の主治医に出会って反復性鬱病という診断をされている。

まあだからよく俺が音楽のストレスで壊れたみたいに思ってる人もいるんだけど、ぶっちゃけその情報は全然間違ってて、もっと個人的な事が理由なんだよね。
あまりにもプライベートな事なので話す気にはなれないけど。

そもそも双極性障害と反復性鬱病は違うんだけど、
じゃあなんで話すかというと
一時期、俺も躁状態を経験した。
それは症状が良くなる過程などである、そんなに珍しい事では無いらしい。

ただ、俺は個人的には鬱状態と躁状態だと躁状態の方が危険だと思っていて、
理由としては鬱の時はあからさまに落ちるので鬱って割と早めに気付くのだが、躁状態の時は気付かずに、後々抜けてから気付くっていうのが一つ。
そこでの"やってしまった感"というか、罪悪感みたいなのは、結構シャレにならなくて、
人にもよるとは思うけど、気付いた時その後悔に潰される可能性がある。

あと、例えば同じ死にたいという感情の時も、鬱の時は「ああ、死にたい」ってテンションだけど、躁の時は「死んじゃおうかな」みたいな感じで、
ノリって言ったら変だけど、極めて危険なテンションになる時がある。

これは説明が難しいんだけど、"死にたい→どうやって死のうか→だりぃな→寝よ"が鬱だとすると、躁の時は"死にたい→ベランダがある→飛んじゃえ"みたいな、変な勢いがある。

まあでもこれは俺が経験したのが鬱の方が圧倒的に長いからってのもあるかもしれない。

そして何より俺が引っかかってるのは、
俺が治療を今の病院で始めた頃に、
「薬の副作用で音程が半音上がるけど大丈夫ですか?」という質問を主治医からされたのを覚えている。

太るとかは良く聞くが、音程が変わるってのは聞いた事がなかったから、
それよりその当時は何より早くステージに戻りたかったので、
「それでも良いからステージに上がれるのを優先してください」
と言った。

で、その薬の名前が何だったかは忘れたんだけど、投薬し始めて暫くしてからマジで音程が変わった。
これはその時にすぐには気付けなくて、後々数年経って気付いたんだけど、
俺が出してるハズの音域と出てる音域が違う。

それは下手したら自分にしか分からない違いなんだけど、
本人としてはめちゃくちゃ違和感があるのね。
特に声を張った時に違いはより分かりやすく出る。

で、これを正常に戻すのにマジで時間がかかった。
正確には自分の思った声を出す事という基本的な事をちゃんとコントロールする事。
こんなの20歳ぐらいの時にマスターしたはずなんだけどな、と思った。

で、記憶が定かでは無いんだけど、異変にちゃんと気付いたのは2017あたり。
でも過去の音源や投薬の時期を照らし合わせると2015あたりから変わっている。

別に声に重きを置いていないアーティストなら大した問題でもないのかもしれないが、フロー、ライム、キャラ、etc…人によって強みは色々ある中でも、俺の場合の強みは声とトラック選びだった。

だから気付いてなかったのが2年ぐらいか。
で、気付いてからコントロールできる様になるまでに2年近くかかってる。

これはかなり印象的だったから覚えてるんだけど、Rappelle-toiってアルバムの最後にTAXI.って曲があって、
それを最後に作ったんだけど、
やっとそこで戻って来たというか、コントロール出来る感覚を得たのを覚えてる。

俺は前述のそれを自分の中で"躁状態の時の声"って呼んでるんだけど、やってる最中より抜けた後に振り返った時にとんでもなく違和感があるのね。
自分のに限ってはもう聴けば1発でわかるんだけど。
なんて言ったら良いのかな、初めて自分の声を録音したのを聴いた時の違和感ぐらい違うって言えば分かるかな。

で、次のセルフタイトルのアルバム作ってる時には完璧にコントロールできる様になってたから、
結局4,5年かかったかな。

まあその間に薬が何回も変わってるから、その問題の薬が抜けたって可能性も大いにあるんだけど、
とりあえず相当時間がかかった。
(飲み忘れが多いのと錠剤取り出すのがストレスなので、朝、晩とかで一包化して貰ってるから細かい名前が分からない)

そんなのもあって胸に楽譜記号のナチュラルを入れてる。
元の音程に戻すって意味の記号なんだけど、
シラフというかニュートラルな自分に戻すっていう表の意味と、実は記号通りに音程を元に戻す、というかナチュラルな自分の音程を忘れないっていう意味を込めた。

ナチュラル(英: natural)は、本位記号(ほんいきごう)とも呼ばれ、西洋音楽の五線記譜法による楽譜に用いられる変化記号「♮」のこと。シャープやフラットの機能を解除する意味を持つ。
Wikipedia


で、kanyeのアルバム聴いてると、DONDAでそれに近い現象を感じるんですよね。
それまでの作品より声が半音高い。

同じ薬使ってるって確証も無いので、真偽のほどは分からないし、そもそも治療してるのかも分からないけど。
でも俺の感覚的に明らかに前述の"躁状態の声"なんですよね。

これに本人が気付いてるかどうかは分からないけど、いずれにせよ本来の彼に戻るには時間はかかると思う。
特に双極性障害って躁の時期がしっかりあるというか、あっちゃうので、気付かない又は気付いていても制御出来ずに勢いでぶっちぎっちゃう可能性もないとは言い切れないと思うんです。
現に俺がそういうテンションだった時って誰の意見も耳に入らなかったし、
自分で考えられる状態じゃないのに自分で決定しちゃうみたいなことが結構あって。

だから彼の問題発言や行動とかに対して、同意は全くしないんだけど、
もし制御出来ないんだとしたら、
それを制御できる様になって、
自分のした事を振り返った時が一番心配。

俺自身が作品と人間性を切り離せない人間だから、やっぱりここ暫くは彼の音楽を心から楽しめていない事実はある。
まあ細かいところを言うと女子供ペットに対する暴力とか性犯罪じゃない限りはギリみたいなところはあるんだけど。
でもやっぱ自分が経験した事のその数億倍のプレッシャーの中にいるって考えると、
思いっきり否定も出来なくて。
勿論これまでに沢山のインスピレーションも与えてくれたしね。

そしてこれは俺の感覚的な話なんだけど、
この世界には人に何かを伝える事が出来る人がいて、
それはアーティストだったりアスリートだったり、
少し特別な部類の人なんだけど、
ただ、その中にも本当に少数、
王になるべくして生まれて来た王みたいな存在っていて、
俺は勿論自分がそうじゃないと分かってるし、数少ない表現者の中でも99%以上の表現者がそうじゃないと思ってる。
カニエもそうじゃないと思う。
それは決してネガティブな事ではなくて、作品なり表現で人に何かを伝える事が出来るってだけで充分凄い能力というかギフトなんだけど。

ただ、どうしても前述の王になるべくして生まれて来たみたいな人がいるのは感じるんだよね。
そこには羨ましいとか敗北感みたいな感情はなく、もし自分がそうだったらとか考える余地もない。
今生きてる人だとリアーナはそんな感じがする。
マイケルもそうだったと思う。
タイムリーなところだと大谷翔平選手もその部類っぽいですね。

それは、よく"持ってる"とか言う表現があるけど、そういうレベルじゃなくてね。
凄い感覚的で悪いんだけど顔に出てるというか、姿で分かるというか。
俺はインタビューなんかで共感覚があるって話をした事があるんだけど、
音だけじゃなくて人も色で見えるのね。
それをオーラって言う人もいるけど、
そのさっき書いた特別の中の特別みたいな人って、その色が普通じゃまず見ない色なんです。
だからと言って残りの大勢の人が無力かと言ったら全然そんな事は無い。
むしろその王みたいなのが特別すぎるだけで、
その他の俺含め色んなアーティストは普通だと思う。普通ってのは普通にいいの意味ね。
そしてやっぱり表現者には繊細な人も多い。
自殺する人もいるし、それも凄く分かる。
また、理由は違えど俺も最短距離で俺の思う芸術に近付けるには自殺で完結させるしかないのかもと考えた事はある。
まあそれは間違いなんだけど。俺の場合。

だから、カニエがファッションの分野で王の様に扱われてる(た)のは少し危険だと思っていた。
センスが良くて人を惹きつけるのは良いんだけど、
前述の通り王になるべくして生まれて来た人間ってメンタルも常人には計り知れないところがあると思うから、
そうでない人が、自分が着た服を次の日に世界中の人たちがこぞって着ていたらしんどいだろうなと思う。

話を戻すと、俺が思うに、
メンタル系の疾患の何が一番怖いかって、
内外共に蝕まれるところ。
それは色々な要因があるけれど、
やはり薬がデカいかな。
太るっていうのもあるし、何より浮腫むのよ。
ブヨブヨというかパンパンになる。
勿論食う量にあんまり関係なく。

だから鏡を見るのも嫌になるし、結果的に自己肯定感ダダ下がりするんですよね。
で、思う様に動けない自己嫌悪も重なるからホント悪循環で。
ひどい時って風呂も入れないしね。

で、俺はホントに酷かった時は1日26〜28錠ぐらい薬飲んでたんだけど、
今はもうベースになるあんまり強く無い薬を朝晩2錠+寝る前とかでやれてる。
やっぱ20何錠とか飲んでた時は何も出来なかったし、考えられなかった。

まあそれも主治医と喧嘩してというか勝手に俺が怒って他の病院に行った時期があって、
そこで痛感したんだけど、ホント医者との相性って大事で、2個ほど病院行ったんだけど、マジで医者と合わなくて、2個目の病院でたいして話してもないのにとんでもない強さの薬出されて、それが未だに薬で一番恐怖を感じた出来事かな。
家でトイレ行くだけで2、3回転ぶみたいな、数メートルが立ってられなくて、流石に死ぬと思って元の病院に戻ったっていう。

結果的に当時のことなんて断片的にしか思い出せないですからね。
これあるあるだと思うんだけど、
落ちてた時期の記憶が無いってよく聞くじゃないですか。
あれ本当で。

ただ、薬は怖いものだけど、助けにもなるのは事実。
俺は飲みすぎて死にそうになった事もあるけど、無理な断薬で死にかけた事もあるから、自分の判断での断薬はお勧めしない。
というかやめた方が良い。
俺は何故か「やめれるよ」という言葉に感化されて勝手に断薬を試みて、数日部屋の片隅で体育座りしたまま動けなくなった。
たまに無理にやめさせようとする人がいるが、
あれは本当に危険だから自分の事はしっかり自分で判断して欲しい。
俺は夜に関しては睡眠薬飲まないと何日でも寝れない様になってしまったけど、自殺してたかもと思えばそこまでマイナスな副作用だと思わない。

あとは家族ってのは本当にデカかった。
まずこれは俺が人生でも一番に近い良い判断だったと思うのが、
休養発表して引っ越した直後に猫を飼ったのね。
ホント生まれたての。
で、猫って俺か妻がいないと生きていけないじゃないですか。
だから、それ残して自分だけ逝けないというか。
それは本当に大きかったなあ。
あと猫って距離感が凄くちょうどよくて、まあこれは個人的な感覚、
というかこの話自体全部個人的な感覚ですけど。
なんか猫っていい具合に空気読むというか。
普段ほんとに自由にしてるんだけど、すげー落ちてる時にスッと寄ってきたり。
で、あとは子供ね。
これも猫と同じで妻か俺がいないと無理だし、なんなら最初の頃は二人掛かりでも目を離せない。
でも今振り返ってみると、なんか精神的に戻ったところで来てくれたから、一緒に成長できたというか。
現に産まれてからこれまでで俺の状態も凄く良くなってるから、
多分そういうことなんだと思う。

しかし動ける様になって来ると意欲も湧くもんで、
特にここ2年ぐらいは健康オタクみたいに節制してる。
だから普通の有り難さが沁みるわけ。
ここで勘違いして欲しくないのは、意欲が湧くから動けるんじゃなくて、
動ける状態がまず作れないと何をするかなんて考えられないんですよね。

だから、俺に限らずみんな"健康が一番大事"っていうのはそういう事なんだと思うな。
でももしこれ読んでる人でメンタル的になんかしらの難関にぶち当たってる人は焦らなくても大丈夫。
20何錠だった薬が片手で数えられるぐらいになるんだから。
「うつ病、期間」とかで検索すると長くて2〜3年でよくなる人が多くて焦るのも分かるし、俺もそうだったけど、
俺みたいに10年以上かかる人もいる。
だから時間がかかっても焦らないで良いと思う。

なので、kanyeは多分この先、素に戻った時に自分の発言とかあんまり覚えてないと思うんですよね。
あの人ぐらいになると嫌でも記録として色々残ってるから、それは責任を放棄するとかの話じゃなくて。
本当に傷が深いと覚える事さえ脳は放棄しちゃうというか。そういう事ってあるんですよね。
これ言ってもなかなか伝わらないとは思うんですけど、あるんですよね。

だから彼の色々で傷付いた人や失望した人たちもいるだろうし、そういう人たちに許せなんて言うつもりはなくて、嫌な物は嫌、許せないなら許さないで良いと思う。

ただ、もし彼の近くで彼を心配している人がいるなら、
彼がいつか自分を取り戻した時に、
その反動で潰れない様に、
いくらかの人は長い目で見てあげれたら、
少しはプラスになるんじゃないかなとも思う。

少なくとも俺は自分が独りになったと思った時にそばに居てくれた人たちの事は忘れないし、
それで本当に助けられたから。

Beとか聴くと哀しいもんね、良い意味で。

ちょっと何週もかけて書いたから長くなってしまったけど、
もしなんかメンタルの不調とかで悩んでる人の助けになったらいいなと思います。
自分をしっかり見て、
目を逸らさなければきっと大丈夫です。
確実に言えるのは、自分に背かなければ、ゆっくりゆっくりでも人は前に進んでます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?