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「手紙の時間」- 季節の贈り物、お歳暮の手紙 -前編・送付状-(全2回)

お歳暮とは

季節も深まり、いよいよ年末の足音が聞こえてまいりました。
1年間の感謝の気持ちを品物に代えて贈る、お歳暮の季節も間近です。
今回は、お歳暮の送付状とお礼状についてご案内いたします。

お歳暮とは、お正月の年神様へのお供物として塩鮭や数の子など、親族で持ち寄ったり、実家へ贈る習慣が、お世話になっている方へ1年間の感謝の気持ちを贈る行事に変化したものです。

直接持参することが望ましいとされていた時代もありますが、師走の名の通り、先方もお忙しいこともあり、現在はデパートなどから配送することが一般的になりました。配送の場合は手紙を別途お送りするとより丁寧です。

また、お歳暮を受け取った場合は感謝の気持ちを記したお礼状を送り、無事に品物が届いた報告を兼ねて喜びをお伝えします。

今回は、前編として、お歳暮にまつわる手紙について、贈り主が書く「送付状」と、後編では受け取った方が書く「お礼状」について、
POSTORY代表の近藤千草さんとともにご紹介します。

送付状としての手紙例、その他

掲載切手:冬のグリーティング(84円)2020年11月20日発売 ※モチーフ:雪の結晶

こちらは上質な手漉き和紙に榛原千代紙『六花』の文様がほどこされた、華やかなグリーティングカードです。
真冬となるこの時期にお使いいただけるのはもちろんのこと、夏には「涼を呼ぶ」として浴衣や絽の着物の柄ゆきに用いられるように、活躍の場は冬だけではない雪の紋様です。
雪の結晶が舞う、静謐かつ華やかなイメージの手紙になりました。

最初の画像でご紹介しているのは、上質な手漉き和紙に榛原の金魚文様がほどこされた見目涼やかなグリーティングカードです。

合わせた切手は榛原本店が所在する日本橋をモチーフにしたものです。
江戸時代に五街道の起点となった日本橋は、今も昔も心豊かな生活を育む街です。

掲載切手:冬のグリーティング(84円)2020年11月20日発売 ※モチーフ:雪の結晶

合わせた切手は雪の結晶柄。箔押しの結晶がきらりと輝きます。

プチギフトで感謝の気持ちを

榛原 千代紙を包装紙に

お歳暮の時期に日頃顔を合わせているごく身近な方へ、手渡しでのプチギフトはいかがでしょうか。 例えばバスソルトなど入浴剤、個包装のお菓子などを美しい千代紙で包み、豆のしをつけたら小さなお歳暮の完成です。

「のし」とは「のし鮑(あわび)」の略で、海の幸に恵まれている日本は、特に鮑を神事のお供物として、また不老長寿の象徴とする習わしが存在します。
その鮑を薄くスライスし、長くのしたものを祝事の贈答に用いたり、縁起物としました。
お供物としての「のし鮑」を贈り物に貼り、品物の穢れのなさを表したことが現在にも「のし」として受け継がれています。
そのため本来は、贈り物が生もの(魚・肉類)の場合には生ものが重複するため、のしではなく笹の葉を敷くとされていますが、現在は心を込めた贈り物の証として「のし」が存在しているとも言えます。

お歳暮やお中元などで酒肴類を贈るときにも「のし」をつけることが一般的になりました。
ちいさな贈り物に豆のしをつけて、普段以上に感謝の気持ちを伝えてみるのはいかがでしょうか。

(ご紹介している豆のしは、榛原日本橋本店でのみ取り扱っています。)

こちらは切手を貼らない、小さな便箋と封筒のセットです。
改まってお礼の言葉を口にするのが少々恥ずかしい時、このちいさな便箋が活躍します。
もしうまく書けなくても、文章が長くなってしまっても、この愛らしい便箋であれば上手に伝えてくれるはずです。贈り物の添え状にもお使いいただけます。

凛とした柄ゆきに感謝を乗せて

掲載切手:特殊切手「美術の世界シリーズ 第2集」(84円) 2020年10月16日発売 
※モチーフ:《鮭》1877年頃 高橋由一 東京藝術大学 蔵 重要文化財

送り状としてお使いいただける、蛇腹便箋のレターセットは、箱入りの便箋と封筒ですので、贈り物にも適しています。
ご自分用に、お気に入りの切手を入れて文箱として使うのも素敵です。

お歳暮で贈る慣習がある「荒巻鮭」をイメージした鮭の切手

合わせた切手は、江戸生まれの洋画家・高橋由一による「鮭」を元にした切手です。
古来、お歳暮で荒巻鮭を贈る慣習があることになぞらえて、お歳暮の手紙に鮭を添えてみました。
写真では豆皿を長角皿に見立てて焼き魚風にし、切手を横にしていますが、実際に封筒に貼る時には縦にします。

ここでは、お歳暮と送付状のマナーについてご紹介します。

お歳暮を贈る時期

お正月を迎える準備「事始め」は、12月13日から。28日までにすませることが理想です。
この事始めと同じ頃が、お歳暮を贈る時期とされていましたが、 現在は12月初旬から12月25日頃までに贈ることが多いようです。
最近の傾向では11月下旬に贈る場合も。
「歳暮」とは字のごとく年の暮れ、年末という意味を持ちます。
本来であれば12月にお届けするのが望ましいですが、 状況に応じてご判断いただくことをおすすめいたします。
いずれにせよ、準備は早めにしておくと安心です。

贈る時期が遅くなった場合

「お年賀」として、元旦から松の内(1月7日。地域により15日)までにお贈りします。
以降は「寒中御伺」として立春前日(2月4日頃)まで。
立春を過ぎた場合は「余寒御伺」とするのが通例です。

誰に送るもの?

・1年間お世話になった人
・夫婦双方の実家やきょうだい、親戚
・恩師
・職場の上司や取引先等、仕事関係
・習い事の先生

が主に挙げられます。

送り状としての手紙

品物とは別にお送りする手紙を「送り状」と呼びます。
封書、一筆箋、カード、葉書、どちらもお使いいただけます。
送り状は目上の方に送る場合にも葉書で失礼にはあたりません。

送り状、5つのポイント

① 品物が届く前に着くように投函します。
② お歳暮の手紙は縦書きで書くことをおすすめします。
③ ご無沙汰している方には季節のあいさつや相手の健康を気遣う言葉から始め、続けて近況を伝えます。
④ 日ごろの感謝の気持ちを素直な言葉でお伝えすることもおすすめです。
⑤ 贈った品物を具体的に記します。例)いつ、なにを、何の気持ちで(お歳暮として、等)

上記は厳密なルールではなく、いわば相手への気遣いや敬う気持ちを端的に表したもの。
例えば①は、受け取る理由がわからない贈り物は場合によっては不安に思う方もいらっしゃるので、あらかじめお伝えしておくと安心です。
生鮮食品を送る場合などは受け取り側のご都合もあるので、その意味でも先にお知らせすることをおすすめします。
関係性によっては、メールやSNSでご連絡をするのも手早くて良いですが、出来ることならば、季節に合わせた葉書や便箋でお知らせをしたいところです。

②の縦書きの理由は、正式な手紙は縦書きであると同時に、礼を尽くす意が込められているためです。
もしそれがよそよそしいと感じられる場合には横書きでも結構ですが、目上の方へのお歳暮の送り状には、できるだけ縦書きをおすすめします。

お喜びいただけるように、という感謝の贈り物であることを思うと、それぞれの関係性に適した手紙になると思います。
親しい間柄でしたら、勢いよく筆を走らせるのも愛情の一つ。
ただ、お声や表情が見えない分、普段以上に丁寧な言葉を用いると、より相手を敬う気持ちが伝わります。

送り状 文例 (縦書き推奨)

拝啓 師走のみぎり、◯◯様にはますますご清祥のことと拝します。
 今年もいろいろとお世話になり、心より感謝しております。
 本日、気持ちばかりではございますが、◯◯◯をお送りいたしました。 ご笑納いただけましたら幸いです。
 寒気いよいよ厳しい折、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
                                                                                                               敬具
                                                                                                               署名
日付
宛名

送り状 その他の文例

「日ごろお世話になっておりますお礼のしるしに、お歳暮として◯◯をお送りいたしました。 日ごとに寒さは増しますが、温かくお過ごしていただければ幸いです。」

「私どもの感謝に代えて、別包みにてささやかなお歳暮の品をお送りしました。 ご笑納くださいませ」

「本日、心ばかりですが◯◯店よりお菓子をお送りいたしました。 ◯◯◯がお好きと伺っておりましたので、お口に合えば幸いです。」

「感謝のしるしとしまして、◯◯をお送りいたしました。 お気に召していただければ幸いです。略儀ではございますが、書面にてごあいさつを申し上げます。」

※はがきに書く場合には、頭語(拝啓)、結語(敬具)は必要ありません。
※ですが、頭語・結語を書いても間違いではありません。
※はがきの場合には特に、どなたの目に入ってもよいよう、内容に配慮します。

※ 本連載に掲載の切手は、
日本郵便株式会社において販売終了しているものを含みます。
何卒ご理解の程お願い申し上げます。

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