A Clock of Stars: The Shadow Moth 喧嘩ばかりの幼い姉妹が世界を救う!?

フランチェスカ・ギボンズ著、2020年10月1日刊行、ページ数:496、ジャンル:ファンタジー

あらすじ
 イモーゲンは妹マリーが喧嘩のたびにいつもママに泣きつくのが気に入らない。「お姉ちゃんなんだから妹に優しく」、「もう小さい子じゃないんだからママの(男性の)お友達にだって感じよく」、「ママの代わりに面倒を見てくれてるおばあちゃんが大人同士で話してるときは黙って邪魔しないで」・・・ってやってられない!
 イモーゲンはデート中の母の留守に、祖母に連れられて行ったティールームで、妹マリーの態度にも祖母の態度にもうんざりして一人外に散歩に出る。立ち入り禁止の看板がある庭にも気にせず入っていき、蛾が飛んでいるのを見て追いかけていると、ドアのついた木を見つける。好奇心に任せてドアを開けて進んでいったが、実はこっそりマリーも後をついてきていた。しかし、戻ろうとすると、一度閉じてしまったドアは開かない。ふたりは魔法の王国に迷い込んでしまったのだ…!
 両親も友達もいないひとりぼっちの王子ミロ、ミロの叔父で行き過ぎた収集癖のある王、切れ者だが年寄りの王の側近、態度ばかり大きくてなんだか頼りにならない大男の狩人、森の種族の盗人、片目の時計職人、王の心を射止める野心家の美女アネシュカなどが住むこの魔法の王国は、夜になるとスクレットという魔物たちが城の周りで暴れまわるため、夜は絶対に外に出てはいけないという。「友達」と「家来」の区別もつかない王子ミロと、喧嘩をしながらも友情を育んだイモーゲンとマリーは、ミロの助けで元の世界へ帰る方法を探すが……!?

感想
 冒頭の、すぐ大人に「お姉ちゃんがー!」って訴える妹のずるいとこを許せない、大人でも幼児ほど幼くもないお姉ちゃんの気持ち、うんうん、私は姉じゃないけど(ていうか兄しかいないけど)わかるわーとか思いながら読み始めていたら、そのムカつく妹ごと異世界にたどり着いちゃう。なかなか「現実的なハードモード」で、それが妙に引き込まれます。バリバリのファンタジーなのに、引き込まれる最初の引き金が幼い姉妹の「あるある」って、不思議な気もするけれど、それでどれどれ・・・とページをめくってしまうんですよね。
 そうすると、恐ろしいモンスターたちがうごめくハイファンタジー風に始まったかと思えば意外な展開が待ち受けていて、姉妹は元の世界で心配しているはずの母親とイモーゲン、マリーの3人の結びつきを築き直すだけでなく、王子との奇妙な友情の始まり、イモーゲンとマリーが通ってきた魔法のドアについて唯一知っている存在のスクレットたちとの交渉などを通してたくさんのことを学んでいきます。
 そしてYAファンタジーといえば三部作、三部作と言えばYAファンタジーという昨今ですので(笑)、これも最初から三部作としてスタート。お次は魔女のお告げに導かれたあの人が何かを起こす…!?

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