【連載】~料理は科学~
今回は、とても偉そうなタイトルにですが、一般人に毛が生えたようなことしか書けないと、自負しています。(今回も!ですね…)
さて、このタイトルで皆さんの気を引けるのでしょうか。
ーさしすせそー
「あ、やっぱそれか」と思われる方が多いと思いますが。書きます。
料理に興味がない方でも、一度は聞いたことのあるフレーズかと思います。
さ:砂糖 し:塩 す:酢 せ:せうゆ(醤油) そ:味噌
言葉だけでは何の面白みもありませんが、この順番で味を付けていく科学的理由、経験的理由を知ることで、オリジナルのレシピがより美味しくなるので、是非覚えておきたいですね。
声を大にしたいのは、これ。
特に煮物など、長く火をかける料理には大事な順番です。ということ。
気にしたい理由は、
①食材が味を吸う順番
②味わいや香りが加熱で変化しにくい調味料から入れる
③加熱してカドを取りたい(まろやかにしたい)
全体的に言うと、調味料を入れるタイミングなど。
仕上がりの味を想像しながら調整します。
①科学的に見ると、砂糖と塩では分子量が違います。(数値は気になる方は調べて下さい)
分子量は、砂糖>塩なので、当然食材の中まで染み込みやすいのは塩です。
塩を先に浸透させると、食材に砂糖の入り込む余地が無くなってしまうので、先に砂糖なんです。
②酢は、加熱すると香りは飛んでしまいますが、まろやかさが残ります。(使用する量にもよりますが)ただし、この「酢」以降は発酵調味料で、その風味を使用したい場合もあるので、ほぼ加熱せずに使う場合など料理によって様々です。
③醤油と味噌は、焦げて黒くなったものを想像してもらうと分かりやすいのですが、加熱し詰まってくると、苦みや焦げたような香りなどが強くなってしまいます。
では、味醂は!?
これには「本みりん」「みりん風調味料」と2つあるので要注意です。
本みりんにはアルコールが入っているので加熱して飛ばすこと、砂糖より先に使用し、食材の荷崩れを防ぐ。という目的があります。
みりん風調味料は、仕上がりに照りを出すために使用する。
という役割があります。りんご飴の様にコーティングするイメージです。
本みりんよりもアルコール分が少なく、砂糖が多いので、使用量、タイミングは「そ」の後で構いません。
ー対比、抑制、相乗 効果ー
他にも知っておくと役に立つ、味の組み合わせがあります。
対比:「スイカに塩」「ずんだに塩1つまみ」
「出汁(だし)に塩、醤油」
などの、本来感じる甘味、旨味をより感じやすく際立たせる効果です。
抑制:よく聞く例は、「コーヒーに砂糖」。
酸っぱいものに砂糖(マリネ、ピクルスなど)
苦みや、酸味など好みに個人差の大きい味覚を抑える働きです。
相乗:昆布とカツオのお出汁。イチゴにコンデンスミルクなど。
同じ系統の味を、合わせるとより感じやすくなる効果です。
説明もなく事務的に表記しましたが、料理を続けると主夫でも主婦でも分かる効果です。「何か一味足りないなぁ」という時の「これ入れよう!」の様な閃きがあると思いますが、結構これに基づいていたりします。
※注意していただきたいのはこれが全てではないということ。
風味という表現の説明には、足りない部分があります。
ニンニクが足りない、ごま油を加熱したら香りが弱くなった。
などが例です。(いずれ香りの勉強をしたい)
ー減塩の話ー
酸味を加えることで、使用する塩分の量を減らすことが出来る効果があります。減塩した分の物足りなさを、酸味で補うということを調査している、大手の食酢メーカーさんのHPなどを見て頂くといいと思います。
未だに、こうした体系化されていない事柄が、公式の様に発見されていくことは、物理学者の数学的発見に準ずる価値があると思います。
ー五味ー
五味は、「甘・酸・辛・苦・塩」という意味があります。
それぞれ、「味」という字をつけ、「かんみ、さんみ、からみ、にがみ、えんみ」と呼ぶこともあるので理解はしやすいですね。
日本古来の「さしすせそ」では言い表せない、感覚です。
中華料理になると、辛味にも「麻(マー)、香(シャン)…」と6種類の表現があるようですが、今回は基本だけにしておきます。
人は味蕾という舌の上にある突起で味を感じるのですが、舌の場所によっても感じる強さが違います。(苦みは舌の奥の方など)
その詳細は「味蕾 しくみ」などで検索して頂ければ、わかるかと思います。
後述の為に五味を表記しました。
ー味を感じやすい温度ー
温度によって感じる強さの変わる味をご存じでしょうか?
これを知ると、あんなものやこんなものを食べられなくなる可能性が!?
温度によって、感じ方に差が出るのは「甘・酸・苦・塩」の4つです。
辛味は痛覚ということで、食べて熱くなったりする経験もありますが、味蕾によって感じる「味」として少し説明します。
甘味:体温に近いときに強く感じます。
アイスや缶コーヒー、清涼飲料水などに驚くほど多くの
砂糖が使用されているのは、このためです。
体温ほどの温度にすると驚くほど甘かったりします。
酸味:温度によって感じやすさに変化はないのですが、
他の味に影響されて感じ方が変わる場合があります。
苦味、塩味:温度が高い程マイルドに感じる=低くなると強く感じる。
このことを知ると、食べてもらいたい温度で提供することの意味や、味の付け方に意味が出てくることで、より一層、間違いのない料理へと近づいていけます。
ー五色ー
五色は、「青(緑)・赤・黄・白・黒」です。
だから何?となるかも知れませんが、これもとても大事な要素です。
いざ出来上がった料理の映えについて、「美味しそうに見せるには何が足りないんだろう」や「もっと食欲をそそる彩りにしたい」という時に意識してみるのもいいと思います。
せっかく美味しい味付けができても、盛り付けが美味しくなさそうだと、
もったいないですよね。
「この色はこれ」「○○という色素が…」という勉強は専門学生に任せておいて。(アントシアニンとか科学的な名前です)
「煮込んでみたら、色がくすんでしまったorz」「せっかくいい色で盛りつけたのに、主人が帰ってくる頃には、しおれて色も変わってしまった」など。経験で覚えましょう。
今では検索すれば映える写真は山ほどあるので、そういう意味では、参考にしやすい教材が溢れています。
よく上司には、「美術館に行ってこい」など言われた覚えもあります。
和食では山水画の様に、左奥を高く盛り付けるのが基本です。
他にも幾つかポイントはありますが、お皿の余白の使い方など、一言では語りつくせない盛り付けの技術や、「センス」が問われる場面でもあり、一生学び続けていく課題でもあります。
青は食欲減退の色で、赤は逆に増進させるという話も定説としてあります。
これはカラーコーディネーターの方が詳しいジャンルかも知れません。
ー五法ー
五法は、「生・煮る・焼く・揚げる・蒸す」です。
具体例を挙げると、
生:海鮮のお刺身、サラダ、さくら肉。など
煮:カレイの煮つけ、筑前煮、赤ワイン煮、味噌煮。など
(米も煮物の一種で炊くと言います)
焼:魚の塩焼き、鉄板焼き。燻製も焼きのようです。
揚:天ぷら、フライ、素揚げ。など
蒸:茶碗蒸し、肉まん。など
ーまとめ と 余談ー
これら「五味五色五法」を組み合わせることによって、様々な料理が過去から積み上げられてきました。
和える、漬ける、発酵させるという技術もあるので、正確には言い表せないほどありますね。
また、古い調理方法でも科学的に研究されつくしていないものもあります。
「食」というものは、人間には外せない根本的な作業ですし、新しく革新的なものはすぐにメディアで取り上げられます。
最新の科学を駆使した料理は、他にも沢山あり、特に家庭では再現の難しい料理や、お店で魅せる為に作られた調理器具もあります。
僕が知っている限りでは
真空、液体窒素、エスプーマ、人工のイクラ(テレビで見たのはスペインの方だったかな?)など、分子ガストロノミーと呼ばれる分野がありますが、総じて料理に変わりはなく。
カクテルでも、グラスに煙の入ったシャボン玉を乗せて、割ったら「ほわぁぁ~」(語彙w)みたいなものもありますね。
僕の見せて頂いたものは、卵白(の成分)でシャボン玉を作っているという話を聞きました。
(昔、インスタに残してました)
https://www.instagram.com/p/CFDYxGFjsBy7yMA6X0zcnivK-upw3j_hUTxdOs0/
分かっているけど原理がよく理解できなかったりするものもあります。
「アミノカルボニル(メイラード)反応」や「塩をあてて置いておくと臭みが取れますよ」であったり「下味を付けて、味の乗りがよくなるようにしよう」などの経験的知識で行う調理もあります。
今回述べておきたかったことは、
・過去から続く経験の積み重ねが体系化されて、新しい料理方法が確立されていること。
・まだまだ発展する調理方法がたくさんあるということ。
それらを意識して自分発信の新しいオリジナルなスタンダードを広めていけたら、それほど嬉しいことはないですね!
(地元が冷やし中華の元祖!とかで全然いいと思います。)