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【連載】~料理の完成度~

いつもご覧いただきありがとうございます。
宜しければ、ご興味のある方はこちらも併せてどうぞ!
僕について自己紹介を最初に投稿しました。
随時更新する予定です。

ー料理の完成度ー

料理を作るに当たって、完成度とは何でしょう。
答えの見つかりにくい、突き詰めようと思えば、どこまででも果てしなく深いところに行ったとしても、まだ答えに辿り着けないものだと思います。

ー料理という根本ー

料理は、食べた人が満足すれば、それは完成なのかも知れません。

しかし、作る側として考えた場合にどうでしょうか?
もっと、感動的な、魅力的な料理が出来たのではないか。
非の打ち所の無い、文句のない逸品は作れたのか。
工程の中に改善点は無かったか。
材料や調味料はこれで良かったのか。

正解や及第点は数多くあるが、完成度の高い料理とは何なのか?
とても難しい問題だと思います。

人間の摂食の理由は明らかに、活動するための栄養補給です。

それをさほど難なくこなせる、現代日本で料理、食事は美味しく、楽しく、団欒に、より効率的に動ける体を保つために。という目的が加わり、そこに商品価値が生まれています。

ー食べる側の目的ー

お客様として、飲食店を利用する理由は
・単純に食欲を満たすため
・見惚れるような料理を食べたい、紹介したい
・交際の場として
・特別な時間を過ごすため
・有名なシェフの料理、食材を食べる=ステータスとして
などでしょうか。

僕は安価なお店に完成度やサービスを求めるのは、日本人の悪い所だと思っています。最低限でいいのです。
(が。同時に、提供する側の矜持として、「安くてもサービスは負けない」という心意気は常に持っていたいのも事実。

ーお客様の求める料理とサービスー

では自分に、お客様の求めるサービスを普通に越えられる程度、調理技術が備わっていると仮定しましょう。

料理には、細かい心遣いが求められます。
苦手な食べ物であったり、アレルギーの方、咀嚼する力が弱い方など、事情をお持ちの客様に対応することも、そのお客様に対する料理の完成度として評価できる部分です。

仮に、前述のような料理への詳細なご注文が無い方に対しての、完成度はどうなるでしょう。
基本的に何でも美味しく召し上がるような方々に対してです。

ー手間暇をかけるー

当然のことながら、この言葉はとても大事です。
常に最大限の手間暇をかけることが、完成に近づくのだと思います。
衛生面、火を入れる時間、タイミング、下処理の綿密さ、味付け、盛り付けのセンスなど可能な限り完全に、時間をかけて丁寧に行えば、手間暇はかかっていると思います。

逆に合理的で作業の少ないキッチンを目指したとします。
・使う野菜はカット済みで納品され、産地も不明
・市販の安価な油を使用
・味付けも市販の合わせ調味料しか使わない
・揚げ物や焼き物も冷凍で、既に衣や下味、タレが付いている状態の物を温め直すだけ
・湯銭で袋から開けるだけで完成されている料理を使う
・ご飯などもレンジで温めるだけ
など。温める以外の仕事は、ほぼ盛り付けだけで出来上がりです。
もしかしたら、弁当箱に入った料理をただ温めるだけの作業というのが一番合理的かも知れません。

消費するお客様も、どの様な方法で作られたのか分かる程で、味付けも、常に一緒で、うまみ調味料も入っている。
調理学校では「テクスチャー」と教わりましたが、ものによっては食感や舌ざわり、香りなどで感覚的に分かる人が多いはずです。

セントラルキッチン方式で自社工場を持てるような会社を、より極端に書いた感じですが、色々な業者を駆使すれば不可能ではありません。
これに対して、完成度が高いから高価な代金を支払おう。
とは思いませんし、利幅も小さく、実は原価が高いのがこの合理的な方法です。

もっと言えば、雇う側と雇われる側に大きな格差を生むものだと思います。

上の箇条書きを全て手作りで自分達で行ったとします。
・自社で管理した、安全性の高い野菜や魚を朝取れで納品。
・健康面で心配の少ない油を使う。
・厳選した調味料を使用し、自家製の味付けを行う。
・上質な小麦粉を使用し、衣をつけるのも店舗で手作業で行う。
・ご注文を頂いてから、仕上げの過熱を行う。
・いつでも水やお米の種類を気にして、炊き立てのご飯を使用する。

度を越えた極端なことを言えば、原材料から全部手作りと手作業をし、食べるときに作る。
ということが出来れば、もっと手間暇をかけた完成品に近いのでしょうが。

ー本題ー

極端な部分(原材料の話のところ)を抜いたとしても、大多数のお店では省く作業は省いているのが、なんとなく直感で分かると思います。
食材の成熟具合、調味料においては、発酵が必要なもの、専門的なプロにお任せした方が美味しく仕上がる食材や調味料は沢山あります。

雑な言い方をすれば、お造りの「つま」ひとつをとっても、手作業で行うお店もあれば、機械で大根をくるくる回してOKなお店もあります。

特に一般の方に言いたいのは、
見抜けない様な加工品をただ添えただけ、上から掛けただけ。というものも存在していて、あなたが本当に美味しいという評価をした料理が、どこまで手仕込みなのか?であったり、自分はその対価に値する商品を買えているのか。を考えてみると、意外にも全てが手仕込みであるという料理を見つけ出すのは至難の業かも知れません。
ということです。

(全て手仕込みが正しいのではない旨の話は、次の段落へ)

ー料理の本質ー

偉そうに語りましたが、以上のことを踏まえて、料理をしている(た)立場から言わせて頂きたいのは。
料理の完成度というのは、お客様が求める環境を演出した上で、お客様が求める価値観を越えた料理で、「また食べたい」という感動を与える。
というのが正解に近い気がしてきました。
少し濁った表現をすると、どこかの焼肉屋さんの、キムチやチャンジャもどこかで加工された商品をお皿に乗せただけ。という可能性だってあります。

ーまとめー

「料理の完成度を上げなさい」という叱責は、何度も受けていました。

キッチンスタッフは、日々同じ料理を何度も何度も作っていて、提供する料理は、沢山作る料理うちの1つでしかありません。

しかし、それを注文したお客様は、何個も見ているわけではなく、提供された1品だけが自分の購入した料理です。

掘り下げて考えていくと…
完成度を上げる。ということの一つは、心を込めて作るということ。
心を込めて作るというのは、食べる相手のことを考えて、どうやったら美味しく食べて頂けるかに集中すること。
美味しく食べて頂くには、段取りを含めて一つ一つ納得した上で準備をすること。
・納得のいく準備をするには、知識と手際の良さを身に着けること。
・知識と手際の良さを身に着けるには、勉強と労を惜しまず努力すること。
・労を惜しまないとは、時間にとらわれないことと、そこで要領を得ること。
・要領を得ることとは、先輩や上司のいい所を真似して学ぶこと。
・学ぶのは、お客様の為に今自分ができる最大限の域を超えていくこと。
なのかなぁ。と思います。

若い体力のあるうちに、やっておくといい感じですね。
ただ、時間を忘れて働きたくても、労基の関係で会社が認めてくれないこともあります。
そこで、既製品を添えるだけの部分が出て来てしまうこともあるんです。

だからこそ、「支払われた対価」を書いたというのもあります。
(ちゃんとした料理を出している料理店の地位を向上させたいという目的が、僕の中では常にあるんです。)

ということで、今回はここまでです。
ご拝読ありがとうございました。

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