見出し画像

人間修行

人間修行

広い庭園の中なので、 大木の根元にあるベンチに座り、瞑想の真似事をしてみる。

亜熱帯雨林の中に、一人でいるような気分を十分味わえる。

数種類の小鳥の声が、励ましてくれているように思える森の中。

「一人なのだ。」と言う、現実を受け入れたつもりであるが、 脆弱な心は、あっさりぐらついてしまいがちだ。

強がりのフリをしていても、大自然の中で深呼吸をしていると、自分の弱さを痛切に感じてしまう。

状況は変えられない。 自分の管轄下にあるのは、自分の心だけだ。 自分が自分を励ましながら前進あるのみ。

考え方次第では、私は「大変幸運な者だ。」とも、言える。 実際、食事に困らず 屋根のある場所でぐっすり眠れる。

現に小旅行さえ楽しみ、豪華なホテルに自腹で10日間も滞在しても、 破産するほど苦しくはない。 

長年、仕事の関係で、世界中の豪華なホテルに滞在、企業か政府が支払ってくれていた。 

目の前の大木が話しかけてきた。 「健康であるだけでも、儲け物。 そちのような輩が、不満を持つとは不届き者であるぞ。」

「ははー 仰せの通りでございまする。 まだまだ、人間の器が小さく、 修行不足でござりまする。」と、私は心の中で平伏した。

まだ、この地上での生活が許されているのは、 「もう少し人間修行を積み重ね続けよ。」と言う、大自然からのお告げであったのだ。

大自然との対話で、すっかり単純な私はご機嫌な気分になり、 そろそろ、あの美味しい日本食の朝食を食べる事にした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?