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黄昏

黄昏

「民主主義の 黄昏」(仮訳) という本を読んだ。ピューリッツアー賞を受賞した、ジャーナリストのアン アプルバウムの作品だ。

189ページの小型本であるが、わたしには知的刺激を与えてくれる本だ。

ワシントンD.C.にある、ワシントンポスト紙で、17年間も彼女は特別寄稿者であった。  

我が家では、長年、ワシントンポスト紙を購読していた。  

でも、アプルバウムの存在に気付いたのは、ユーチュブでのインタビューが最初で、本屋に走り「Twilight of Democracy 」を購入、読破した。

世界は広い。知らない事が多すぎる。 時間を無駄にするのは勿体無い。

生まれた国と、現在生活している国を中心に、考えてしまっている事を、気づかせてくれた本だ。 

東ヨーロッパ、西ヨーロッパ、ロシアなど、違った角度から、現代の問題を考えてみるのも、良い頭の運動になる。

ポーランド外務大臣だったことのある方の奥様でもあり、歴史家、ジャーナリストでもある、アプルバウムさんの意見は、わたしの目を大きく開かせてくれた。

冷戦が終わり、世界情勢が変わりゆく中、 例えば、イギリスのブレクジット(Brexit) ーー欧州連合離脱や、米国におけるトランプ大統領の出現(もう消えてしまったが。)など、世界全体の角度から、現代を分析している。

「冷戦後、多くの国々で、国内が極端に二分化する傾向が出てきた。」

その理由を、具体例をあげながら解き明かしてゆく。

「政治的極右翼が、現代のソーシャル メディアを駆使して、真実を微妙に歪曲したり、アルゴリズムを使って、大衆の心理的操作を行う頻度が増えている。」

「9月11日の世界貿易センター爆破事件の時期は、世界の目が、その事件にしばらくの間集中し、二分化の勢いは一時的に停滞した。」

でも、実際の分断である二分化は、「冷戦後すぐに始まり、 長年その傾向が続いている。」と、著者は分析する。

「人々は、例えば、ヨーロッパの場合、ロシアの影響を恐れ、原子爆弾の存在にも、恐怖感を抱いている。」

「かたや、キリスト教に対して、無宗教派の勢いが盛り上がる事を恐れ、大勢の回教徒の移民流入をも懸念している。」

それと同時に、「技術革新による、現代の複雑な経済制度にも、恐れ慄いている。  不安要因が山積みなのだ。」

「その結果、大西洋の両岸で、権威主義体制、ポピュリズムへの憧れさえ、生まれ始めている。」

「また、最近まで続いた、民主主義に落胆してしまた結果、権威主義を求める気持ちも湧き上がってきた。」

「もともと、米国の建国者達は、民主主義擁護の為に、三権分立という考えを推し進めた。」 

「独裁政権樹立をできるだけ難しくする手法だったのだ。」

と言うことは、独裁政権、権威主義などは、 我らが油断すると、台頭することを、過去の長い歴史から、教訓として、学んでいたのだ。

 
「このような愛国主義的右翼派の流れは、決して冷戦後だけに始まったわけではない。」

アプルバウムは、 1894年、フランスで起きたドレフェス(Dreyfus)事件を詳しく取り上げて、人間界では、「過去にも同じような現象が存在した。」と、説明している。

「民主主義の黄昏」は アプルバウム氏の随筆だ。 

実際、「多くの過去、現在の、ポーランドをはじめ、東ヨーロッパや西ヨーロッパに住む、知人達を例に挙げて、記述している。」 

「今まで以上に、親子の間でも、政治に関する意見の違いで、家族の分断化が進んでいる。」

「同僚の間でも、口を聞かなくなるほど、分裂が進行している事に対し、警告を発しているのが、この書物だ。」

「エリートの間でさえ、溝が深まっているのだ。」

「権威主義体制への、魅惑的誘惑に負けないようにするには、どうすれば良いのだろう。 」

我々全員が、現状維持に任せるのではなく、「ひとり一人が、民主主義擁護のために、積極的に参画することが大切なのだ。」と著者。

口をぽかーんと開けて、 ゲーム、娯楽テレビ番組に、うつつを抜かしている時ではない。

時代は、人間が望まぬ方向へ、折れ曲がってしまう過渡期に、さしかかっているようだ。

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