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「自分で書くこと」は、大切以上に本来楽しい。

年少さんの次女が、最近文字らしきものを紙に書くようになりました。他人には全く解読できない小さなマルやニョロッとした短い線をいくつも書き並べて、時々そこに自分で勝手に音や意味を与えて読み上げてくれたりもします。

少し前までお顔を書いていることが多かったのですが、小学生の姉兄の姿を見ていることもあるのか、字を書くことへの関心が強いように感じます。長女は年中さんの半ばごろになって、先に字を覚えたお友達や年長さんの園児から少しずつ字を教わってきました。長男は絵を描くのは好きですが、今も字に対する関心は必要最低限です(笑)

字を早く覚えること自体には、私はあまり意味を感じておらず、基本的に園や学校で教わるまで私から字を教えることもしません。むしろ字でも絵でも良いので、今は「自分で書くこと」を楽しんで大事にしてほしいなぁと思っています。

大人の社会ではスマートフォンやパソコンで文章を書くのが当たり前になり、かつては手書きであることに意味があった履歴書なども、今はテンプレートに必要事項を入力してデータで送ってくださいと当然のように言われる時代になりました。もはやどこでも文字を書くというより打つ行為が主になってしまっています。

子どもの生活環境はもちろん大人の影響を受けますし、学習環境でもコロナ禍でタブレット学習、オンライン学習が浸透して、「自分で書くこと」よりも画面上で文字や答えを選んでタッチ入力することにあっという間に慣れてしまいます。

それでも今のところ、わが家の子どもたちの宿題は音読と漢字ドリル・計算ドリルをノートに書くことや書き込めるプリントでの学習がメインです。学校でも先生が黒板に書いたことをノートやプリントに書いて学んでいる様子。

この学習スタイルを「いつまで時代錯誤な古いやり方でやってるんだ」と思う人もたくさんいると思います。私も今の学習法が全てにおいて最適であるとは思っていません。ただ、「自分で書いて」アウトプットすることは、今後もできるだけしっかりやってほしいなと思っているのです。

なぜ「自分で書くこと」が大切かというと、例えばパソコン上で文章を作る場合はいったん画面に思いつくまま打ち出してみて、その文章を見ながら、適宜必要な語句を入れ替えたり、不要な箇所を部分的に削ったりできます。また、漢字についても変換キーで自分の書きたい文字を見て選べば簡単にアウトプットができます。書きたいことが決まっていれば、1つ1つのシンプルなタスクを組み合わせることによって比較的簡単に文章が完成します。

「自分で書く」場合はそう簡単にはいきません。書きたいことが決まっていても、まず書く前に頭の中で文章を考え、適切な漢字を思い出し(思い出せなければ辞書などで調べ)ながら、自分で書いてみて読み直し、改めておかしいと感じる部分を消して、さらに書き直すといった文字通り手間のかかる作業を繰り返して文章を作ります。正式な文章であれば、下書きとして全て完成させてからあらためて全文を清書する場合もあるでしょう。一度に動かすところが圧倒的に多いですし、そのプロセスも複雑です。

どちらかが良いということではなく、どちらもできることが重要だと思います。シンプルタスクを組み合わせてできる方法を知っていることも大切ですし、同時に複雑かつ面倒なタスクで目的にたどり着くこともできる、かつそれにある程度慣れていると人間として強い、つまり学習においても成果を発揮しやすいということになります。

これは例えば地図を読んで目的地にたどり着くのか、ナビを使って目的地に案内されて行くのか、という違いにも例えることができそうですし、一事が万事、便利さと人間の行動や能力における最適がどこにあるのかという普遍的な課題のようにも感じます。

そこで冒頭の次女の話に戻るのですが、文字らしきものを一生懸命書いている彼女の姿を見ていて感じたのは、人はそもそも「自分で書きたい」んだということ。ただ、大人になっていく中で書きたくないことを書かされる場面も増えていき、それをショートカットできる便利なツールにも出会えます。そのためいつの間にか書くこと自体にネガティブな印象を持ってしまったり、自分から進んで書かなくなっていってしまうのかもしれません。

わが家の小学生組も既に書くことに対してちょっと抵抗感を感じてきています。宿題をやっていて「めんどくさい」とか「疲れた」と言うことがありますし、タブレットなどゲーム要素の強い学習スタイルを好んで取り組みます。それでも、ただ「自分が書きたい」ことは勝手にあちこちに書きつけていたりするので、書くこと自体の楽しみは失くしていないようです。この本来的な楽しみをいつまでも忘れないでいてほしいですし、それをうまく自分の強みにもつなげていってくれるといいなとも思います。

私自身も書くことが好きなので、パソコンを開いている時間は多いですが、手帳に何かをメモしていたり、誰かに手紙を書いていたり、家計簿をつけるなど、大人になった今もある程度楽しんで書いている姿を子どもたちに少しでも見せられているといいなと思っています。

「自分で書くこと」に対してできるだけ抵抗感を少なくして、日々の習慣のように当たり前に楽しめるような環境を作ることも大切だと感じます。そう考えると、鉛筆や消しゴム、ノートなどふだん使う文房具も、デザインだけでなく使い心地で子どもたちや自分に合うものを探して選んでみる、といったいろんな側面から工夫ができるなと思ったりします。これも楽しみ方の一つになりそうです。

国語スクール-kaname-でも、「自分で書くこと」の大切さはもちろん、その楽しさも忘れずに、力をつけていけるような取り組みを考えていきたいと改めて思いました。

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