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影をひそめて

ここ一ヶ月くらい歯間ブラシにハマっている。歯科衛生士さんに「きれいに磨かれていますね」と褒められるくらいにちゃんと歯磨きができている自負はあったのだが、ふと歯間ブラシを手に取って試してみた。歯磨きを終えたあと、歯間ブラシでごそごそやってみると、出てくるは出てくるはで、軽い衝撃が走った。はじめて贅沢保湿で鼻をかんだときと角度は違えど同様の衝撃だった。それから、寝る前にする歯磨きのあと歯間ブラシを使うことが日課になった。
仕事の合間に、夜寝る前に、移動中の車内に、誰かと会う待ち合わせの間に、様々な場面でこれを暇つぶしに読んでくれている人がいると勝手に想像するが、30代男性の口内事情をなぜ私は読んでいるのか、という疑問や怒りが生じてしまう人もいるだろう。誠に申し訳ない。申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、歯間ブラシの感動をどうしてもいちばんに書きたかったのだ。たまたま空を見上げたらきれいな夕焼けだったこととか、ラジオから流れてきた知らないバンドの音楽がかっこよかったこととか、スーパーに並んでいた新商品のお菓子がとんでもなく美味しかったこととか、そんな感動と同じ場所に歯間ブラシの感動もある。感動は、なにも泣いたり笑ったりすることだけが感動ではないのだ。

先月から愛媛、北海道、群馬に行って、人と会うことが多くて、移動も飛行機や車で、長時間の移動も久しぶりだった。ぼくのなかの夏の3大イベントだった。楽しいことで準備をしたり、疲れることがあっても、根本的に楽しいことなのでそんなに疲労感はない。楽しい疲れはいい疲れだ。一つひとつ細かくここに残しておきたかったのだが、そんなこともできずに終わってしまった。あんなに待ち遠しかったことも、その場面がやってくるとあっという間に時間が過ぎ去ってしまう。そして1週間、一ヶ月とスルスルとその場面から遠退いていく。

久しぶりに仕事がほぼ定時で終わったので、今日の夜はダラダラしていた。やっぱり、ぼーっとしたりダラダラすることがなによりも好きなことかもしれない。ずっとぼーっとしたりダラダラしていたい。

8月も終わりに近づいている。阿呆みたいな酷暑の日は影をひそめて、たまに涼しい風が吹いたりしている。そう思わせておいて、また阿呆みたいな暑い日がカウンターを喰らわせようと機を伺っているのでは、と身構えてしまうのだが、そんなことであれば8月は堂々と暑さ全開でいてほしい。もうどうしようもない暑さの日に逃げ場所として入る伊勢丹とかのデパートが好きだ。レコードなどを買って財布には2千円くらいしか入っていないので、この建物内で買い物できる場所とすればデパ地下のジェラート屋さんくらいなのだが、そんなのお構いなしにウィンドウショッピングをして、手前でけっこう疲れているので、彼女がトイレに行っているのを待っている男のような顔をして階段付近の椅子に座ってHPを回復させる。あの無意味な時間が好きだ。

今週末はボーッとダラダラして過ごそう。予約して取り置きしているレコードを取りに行かねばならないが。

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