とりとめのないプラットフォームの考察(ネタバレ)
『この世には三種類の人間がいる、上にいる者と下にいる者、そして転落す者だ』
はぐれです。まだパッと評価を言えない。
映像作品として言えば、最序盤の調理シーンから最後まで、映像と音どちらも迫力があってよかった。トリマガシとの会話劇も飽きさせないで良いね。
内容については後述だが、この手のメタ作品はどこまでストーリーを楽しめばいいのか迷う。色々粗があっても『いやメタファーが重要なんで^^;』で済まされるとモニャるので。
現時点では俺もモヤモヤしているので、次の見出しから色々考える。よかったら一緒に考えてほしい。
・”穴”ってなに?
ヒエラルキーとキリスト教的地獄を重力によって再現した空間で、メタファーとしては”この世”であり”あの世”と思われる。様々な人間がランダムな階層に配置されるのは出生の原理を模したものだろうし、下層に行けば個性が崩壊、上層では発揮される形となるのは貧富の差と取れる。
トリマガシがゴレンに告げた『お前は中階層にいるのが良い』というのは、君の思想と地位がマッチするのはそこだよ、と言った訳だ。
”穴”で決められた期間を滞在することで受け取れる”認定証”というのは、寿命による死なのかな。この辺りは怪しいか。
最終盤、主人公が幻覚で見た本の一節
『罪多き偉人は罪人でしかなく、寛大でない富者は貧者だ(後略)』
というフレーズが作中における真理となるだろう。”穴”=世界には罪人と貧者しかいない訳だ。下層では罪を犯さねば生きていけないし、生きる事自体が下の者に罪をおっ被せるという原理を意味する。
そういった観念を”穴”という装置一つで再現したのは巧いなあ、と思う。上層を目指す主人公らは、謎めいた配給装置『プラットフォーム』に乗ることになる。プラットフォームとは基盤・土台という意味があり、世界の基盤に跨って全容を覗いた訳だ。
プラットフォームの存在自体、作中世界で唯一の非現実的な装置であり、これに乗った時点でストーリーは幻想的なフェーズに入ったものと思われる。もっと言えば、主人公の持参したドン・キホーテ=幻想を帯びた老爺をなぞらえた演出だろうか。認定証=寿命と考えるなら、主人公の最後の一月は老人ということになるだろうし。
そして最終盤、主人公たちは333層にて身なりの綺麗な子供を見つけ、最後の食事を与える。キリスト教的な地獄の底で、罪を犯さずに生きている子供、というのは救世主を意味するだろう。彼女を伝言として、主人公はプラットフォームを下りる。高速浮上するプラットフォームが停止した時、彼女は恐らく死ぬであろうが、死によって神に訴求したキリストのオマージュと考えるとムベナルカナ。最後まで残酷。
また、今作のモチーフであろうダンテ『神曲』は333の詩行で綴られているらしい。いろいろ散りばめてるね(参考:外国文学論集14号.indd (teikyo-u.ac.jp))
・結局??
メタファーを三次元世界に効率よく取り込んでいて、あんまり破綻もないので偉いなと思いました。いろいろ整理した結果面白い作品と思えたので、個人的によかったです。(読書感想文)
おわりです。
(終)
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