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【#18】臨床心理士からみた学びの問題

はぐくみです。お読みいただきありがとうございます。
今日は久しぶりに仕事のお話。
わたしは、キャリアの浅い時期に医療現場だけでなく学校現場での臨床活動をしていました。
正職員になったことをきっかけに、10数年学校現場からは離れていたのですが、今年からいくつかの教育領域で働くことに。

今の学校ってあの頃とはだいぶ変わってるのかなぁ…と少し不安を抱えながら始めました。
実際は変わってることもそうでないこともあったりして。

教室に入ることを遠ざけるもの



医療現場でも、知的能力(学力)の問題には直面してきたつもりでしたが、学校現場に勤めるようになって、よりその問題がリアルに感じられました。

なかなか学校に来られない子ども、来ても保健室登校していたり、教室には入れない子ども・・色々います。要因もさまざまでしょう。

その中で、何らかのきっかけで教室に入れなくなった子どもは、クラスメイトと授業を受ける機会が少なくなるわけで、それは学習の機会が減るということ。そうなると、たまに教室に入れても、授業は何をやっているのだろう…昨日の続き?ん?・・・となるわけです。
相当の勇気とエネルギーを要して教室に入っても、”授業内容”に関してのみ言うならば、あまり満たされたと思える子どもは多くないのかもしれません。

そこで達成感ややりがいを感じられなかった子どもがいた場合、また次も行きたい!と自ら思うことはできるでしょうか?

こうして次第に教室からどんどん足が遠のき、不登校になる、というケースも少なくありません。

登校できなくなることの連鎖


このような子どもたちは、だいたいが元々学校のお勉強が苦手、という子が多いように思います。
小児科で知能検査を取り、学校関係者らとケース会議をしていた際にもよくありましたが、境界知能(支援や配慮が必要なレベル)である場合が多くありました。

例えば、
小学6年生の児童、学習は苦手だけど、取り組めそうな授業やHRには参加できたり、休み時間にはお友達と過ごすことができる。
中学校に入って心機一転、頑張ろうと思っても、程なく、学力の問題が出てくるのです。小学校時代からの学習内容が積み重ねられておらず、かつ学力が支援や配慮が必要なレベルだったとしたら、中学校に入っても、次第に学校には足が向きにくくなります。

だいたいが中1の夏休み後あたりから身体症状が出始めます。理由は本人にもわからないとされる場合が多い。朝起きられなくなり、起立性調節障害と診断される生徒も多いです。

1人の心理士が感じる問題意識


学力の問題が、例えば小学校から中学校へと繋ぎの部分で、進学の大きな足枷となっている。
私が記事にしなくても、こうした学力の問題はよく言われているでしょうし、重要な問題意識として取り上げられているでしょう。

有名なのが、『ケーキの切れない非行少年たち』の作者の宮口幸治先生ですね。

今まで医療現場にいた私は、学力の問題を重要と思っていたけれども、具体的に深く考えたことはなかった。
だけど、目の前で起こっている学校の現状に対して、久しぶりに学校現場に入った私は、強く、深刻に感じたのです。

これは、どうしたらいいものか。

スクールカウンセラーにできること


勉強を教えることはカウンセリングではありませんが、別室でお勉強をしている児童のそばにいることはあります。ある児童は、お友達から借りた授業のノートをひたすらうつしていました。
(本当にこれで学習内容はわかるのだろうか・・?)
その児童は、「前から勉強は好きじゃない」そうです。

では、この問題、どうやって解決したら良いのかな。
まだまだ自分では答えは出ませんが、学校の先生方と一緒に考えることで何か取り組むことはできそうです。

そして、スクールカウンセラーとしてできることは、
そういった彼らの背景があることをしっかりと先生方に伝え、
どうにかせねばならない、ということを掲げていくことかなと思いました。

おわりに


もちろん、学力の問題が全てではありません。
授業に出た方がいいと言っているわけでもありません。
今の時代、学び方も学ぶ場所も多様になってきました。

不登校の問題も、複合的であることがほとんどです。
知的能力に問題がなくても、しばらく休めば”授業には”ついていけなくなることも当然ですし、学校の成績が芳しくない児童が全て境界知能の可能性があるわけではありません。

複合的だから、難しい。
絡まった糸を少しでも緩められるように。
その学校に毎日はいないスクールカウンセラーにできることはなんだろう。

新たな領域で、新たな問題意識に向き合えたことは、とても新鮮で刺激的でした。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
みなさまにとって、よいGWとなりますように。




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