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冗談じゃない旅 助走


いらっしゃいませ

まず、お断りを…

※旅記録には、映画『冗談じゃないよ』のエンディングを含むネタバレと感想が含まれています。既に映画ご覧いただいた方の閲覧を推奨します。別に気にしないよって人はグイグイ読み進めて下さって結構です。

ただ、映画感想「本編」までの助走が異常に長いので、映画が始まるまで、買い物とか銭湯とか散歩とか徒然なるままに付き合ってもらうことになります。「冗談じゃないよ!」と言う方は、次回以降の「感想」からどうぞ。

感想といっても、半分は詳しい内容の羅列に近く、こちらもボリュームがバグっているため何回かに分けるつもりです。助走と比べると10倍くらいかな、、ボリューム。

それから、登場する全ての人は敬称略とさせていただいております。改めて書くと嘘臭いんですが、皆さんのこと、ちゃんと尊敬してます。安心して。信じて。

私の思いは、明確です。純粋に映画『冗談じゃないよ』を観ていただきたい。劇場で、ぜひスクリーンで、その熱量をお楽しみいただきたい。この旅の記録が、劇場までの道標になれば幸いです。

長くなりました。では、出発しましょうか




2024/5/24 9時40分
名古屋太閤通口 バス亭

名古屋からは安定の高速バス


バスタ新宿


東京来訪は、今年に入って二度目
年始に、ふるさと茨城からの帰り道
黒谷ギューンと叶芽フウカのライブのため
高円寺に立ち寄って以来となる

今回は映画を見に行く 名古屋から東京
片道、400キロないくらい
大した距離ではない
月よりは近い

昼間の高速バスは 定刻にバスタ新宿へ
時刻は15時15分 映画開始は20時40分
予定は特に何も考えていない
そんな日があっても良い


だが、何はともあれ「何か」はしないと…
ただボーッとしていては
魂の無駄遣いだと叱られてしまう
時間もあることだし
谷中辺りで買い物をしよう

山手線で日暮里を目指す


20分ほど電車にゆられると
丘の狭間にある駅 日暮里へ着く


猫をモチーフにした駅名の表示 かわいい


谷中ぎんざ

寺社史跡が多く、猫推しの町『谷中』は
日暮里駅の南西改札を出て
正面の通りをまっすぐ登ると 眼下に現れる

インバウンドの観光客も多い

この街に来るのも 2度目だ
ひとつ上の兄に連れられ
数年前に来訪して以来

坂を下る
商店街の入り口には
エスニックなお店『ザクロ』がある

ひととおり商店街を見歩いた後
また『ザクロ』へ戻る
トルコランプ煌めく店内
いつか家族と来店したく思う
店長のアリさんには会えなかったが
ファンキーな彼の価格設定のおかげで
絨毯、ランプ、クッションなど
破格の値段で売られている

そんな店でマウスパッドを購入
2枚で1100円、トルコ絨毯風である

土日に入り浸っている 盆栽屋で使おう
盆栽屋は半分 屋外同然なので
すぐ机がジャリジャリになる
お世話になっている店長への土産と
自分で使う用で買ってみる


あかるい色調にしてみた
ゴージャスでテンション上がるわ

高速バスでグミを食べたせいか 空腹感はない
坂をまた登れば 日暮里駅に着くのだが
反対方向へ歩き出す

予定は決めてはいなかったが
銭湯には行こうと考えていた
谷中の銭湯はどこにある
食べ歩きできそうな揚げ物や
焼きたてパンの芳ばしい香りが
商店街に漂う中を歩き
一番近い湯処を目指す


好きです、銭湯


朝日湯


地下鉄千代田線千駄木駅に程近い立地
入口は 通り沿いにあったのだが
見落として敷地周りをグルリ 歩いて回る
大きすぎず、銭湯らしい銭湯の印象
カウンターのお姉さんも愛想良い
時刻は16時40分 さっそく入っていこう

天井が高く爽やか 気持ちいい浴室
日が延びたおかげか、夕方とはいえ
柔らかな明るさに満たされている

先客は爺様が2人ほど まだ5時前だし
これから混むのだろうか

浴槽は3つに分かれている
頭を洗い、髭を剃り、体を洗い…
見やると入口横にサウナの入り口
…おっと、別料金か
もう全裸なのでロビーへは戻れない

諦めるしかないかな…と、ガラス越し
脱衣場の壁に小さな窓を見つける
壁と同じ色の目隠し戸がされていて
カウンターへ声掛けができそうだ
これは良いものを見つけた

体をよく拭いてから脱衣所へ戻り
追加料金を払いに小窓をノックする
無論、手拭いで前は隠して

明るい声の返事がかえってくる
靴箱の鍵と引き換えに
首から下げるサウナ札と
タオル地のマットを小窓から受け取る

朝から利用できる 東京の銭湯が羨ましい

サウナに入る
室内は照明が点いていない 暗い
6人も入れば満室だろう
誰も入室していなかったが
誰かいたら ちょっと怖い暗さ

砂時計が壁に設置してある
ずいぶん縦長な砂時計
砂が落ちきるまで どうだろう
20分くらいはかかるだろうか

サウナはしっかり熱い
砂が落ちきる前 10分も座せず脱出する
水風呂はないが 水シャワーが気持ちいい
水圧強めで ガッチリ冷たい

湯船でまた温まり 5分後再びサウナへ
 … おや?
今度は照明が灯っている 明るい
暗いのも悪くないが、これなら
他に人がいても息苦しくないだろう

何度かローテーションして
水シャワーを浴びてあがる

銭湯はいい みんなも行くといい

すっかり着替えて エントランスに出る
サウナ札を返すと カウンターのお姉さんが
「最初、電気点いてなかったでしょう?」
カラカラと、笑っている
なるほど。どうやらサウナの利用に合わせて
照明を点灯してくれたようだ

ありがたい

近い将来 瓶牛乳もなくなるらしい
寂しくなる


クールダウンのため
コーヒー牛乳を飲みながら
ぼんやりとテレビで相撲中継を見る

時刻は17時30分をまわっている
結びの一番まで見ても良いが
東京の街を見て歩こうと思い立つ

テアトル新宿までは7.7キロ
2時間もかかりはしない

交通の便が良い都会暮らしで 長距離を
千駄木から新宿までを歩こうなどと
普通の感覚ならば考えないかもしれない

時間もある 体力もある 気力も充分
のんびり行こう


道程

地下鉄千駄木駅のある通りを南下
少ししたら右折、丘を登る
丘陵上り坂の途中
左手に根津神社への入口境内
右手には医科大学附属病院

丘を登りきり左折 道沿いを歩き行く
若者が多いな…と思えばそのはず
左手は大学の敷地に変わっていた

案内に『東京大学』とある

へぇ、東大 ここにあるのか…
用はないので 敷地へ入りこそしないが
この大学を目標に
人生をかける人もいるのだよなぁ
そう思うと、なんとなしに感慨深い

大学を通りすぎ、道を斜め右に入る
緩やかな下り坂が南西へと続いている

人生は行ったことない場所ばかり

古い町並みは取り壊され
新しいビルへ変わっていく
赤と白のクレーンを見ていると
都市は新陳代謝が早いと思わせる

100年前の思い出など誰が覚えていようか

都営大江戸線春日駅の入口前をすぎ
大通りを左へ曲がる

サイズのバグったホタテ貝、もとい
東京ドームが現れた
ははぁ…こういう位置関係なのね…
ひとり漠然と感心する

東京で暮らしたことはない
来たことない土地や場所、道は
発見しかない だから面白い
前もって何かで見聞きして
「そこ」を知ったつもりでも
場所の匂いや 街のざわめきや
地面の温度までは知れない

知る喜びは 自分で求めてこそ
人生の時間は有限だから
大気の濃さや 土地と土地との距離感
坂の勾配のひとつさえ
楽しみ また楽しめるよう
ただただ ひたすらに生きていく

よく歩く理由は そんなところだ

東京ドームは間近まで行かず
手前を右折してまた坂を登る

日が暮れてきた 東京ドームの向こう側は
神田とか皇居になるのかぁ…

地図をたまに確認しつつ進む
おや?少し北に道をそれてしまった
中央大学が坂の上に鎮座している
大学の敷地沿いに左折して路地を行く

東京は坂が多い


飯田橋方面から牛込神楽坂へ
道なりに新宿を目指す

夕暮れはどこも美しい

19時になったら夕飯にしよう
心に決め、歩みと時間を進める


牛込柳町の交差点 サイゼリヤが見える
「ミラノ風ドリアでも喰いなァ」
懐かしいコントが脳内で流れる
ちょうど19時。時間である

昼と夜の境界線

2階に店舗がある様子 階段を見上げる
順番待ちの家族だろうか
待合の椅子に並んで 腰かけている
「(ウーン、待ちたくはないなぁ…)」

自分に嘘を吐くわけじゃあないが
まだ腹もそこまで空いていない
ここで喰わねばならぬ道理もない

映画館まで行っちゃっても いいかな…?
あと30分も歩けば着けそうな距離だ
ミラノ風は、また今度にしようね

新宿駅で馴染み深い建物 ビルの谷間に

団子坂、文化センター通りを過ぎ
新宿へと辿り着く 時刻は19時30分

夜だと言うのに 新宿はパカッと明るい
それは神社も同じらしい

神賑わう お祭り騒ぎ 花園神社

花園神社

境内には出店がたくさんでている
昔ながらの祭りの様相だ
はしゃぐ霊魂たちを他所に 
映画の成功をお祈りしに行こう

参拝

境内の広い階段は人で溢れていた
階段の大部分が人々のベンチと化していた
ここは大事な大事な参道なんだがなァ…

身なりを整え そっと本殿へ参拝
映画の成功と発展を祈念した
完成おめでとう ありがとう これからも…


それにしても…振り返る
階段を目にする 掃除も大変だろうに
なにかを買う気力もなくなるほど
たくさんの人が階段の地べたに座っている

境内管理してくださる皆様、ご苦労様です…

さて、映画館へ向かおう 今日の目的地だ


花園神社から歩いて数秒でした

テアトル新宿

明るい地下への階段を下る
受付カウンターで、まずはパンフレット
Tシャツとポスター購入

初日だから劇場は時間と共に
人が増えることだろう
早い方が都合いい

さて、続いては小腹を満たそう
ホットドッグとジンジャーエールを

ペロリでした

ロビーでは上映する映画の予告が流れている
『冗談じゃないよ』の予告編を観ながら
ゆっくり食べる

グッナイ小形の歌声が薄く流れている

他の映画と並んで告知が流れる

映画『冗談じゃないよ』を観るのは
今回でもう 4回目である
東京での完成披露試写会
名古屋での先行上映が3月と4月に
そして今日の一般公開初日
で、確かに4回目だ

グッナイ小形を追い続け 彼繋がりで
クラウドファンディングを知り
俳優、海老沢七海の代表作を作ると聞き
映画を作る情熱の力になれたらと
微力ながら支援と言う形で参加した

エンドロールに名前があるはずだが
3回見ていても、未だに見つけられていない
毎回エンディングの『千年』を聴くと
泣いちゃうせいだ 今回は大丈夫だろうか

食事を終えてトレーを戻す

台本

エントランス通路には映画のポスター
フライヤーで敷き詰められたコーナーには
使い倒された1冊の本が展示してある

本物だ 本物の映画の台本だ

見た瞬間、全身の毛が逆立つような
血が沸騰していくような感覚

えぇ…これぇ…、誰の…?本物…?
というか、触れてもいいものなの?

「展示品に触るな」とは書かれていない
そっと手に取ってみる

台本の表面をしばし観察する
きっと1度バラバラになったのだろう
補強のテープがいくつもされている

紙はカスカスに擦れていて
触れていたら崩れてしまいそうな危うさ
裏面を見る 縦書きで名前が書かれている

「日下玉巳」

ワァ…これ 監督の台本か…
いいの?こんな無防備に置いといて
少し心配になりつつも 中身を開いてみる

場面の注意点や、役への指示か
いくつもの走り書きが加えられている
制作初期に書かれたものだろうか
巻末の広い余白に
映画にかける思いが記されている

人の日記を読むような
なんだか悪いことしてる気持ちが
じんわり頭をかすめた

だが、すぐに こう考えを改めた

たくさんのキャストやスタッフの手にもあろう
この台本に導かれ、映画は完成した

ここにある台本が、監督の道標

長編映画をここまで導いてくれた
最も重要なものに違いない

ここに台本があるということは
監督は全てをさらけ出してくれたのだ

感謝しかない

ひとりひとりが いてくれたからこそ

こんなにも、出し惜しみなく、赤裸々に
作品を隅々まで 映画を楽しんで欲しいと
きっと監督は純粋に 願っているから…
あぁダメだ ダメだ ホロリしちゃう

全60ページの言葉と行間には
映画への愛情と熱意が満ちている

そっと元の位置へ戻す


ロビーに人も増えてきた
初日は盛況になるに違いない



まもなく開場 映画がはじまる




つづく




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